復活の龍と作戦会議
「Gyaaaaaaa!」
洞窟を揺るがす邪悪な咆哮。肉体をなくし骨だけとなった龍が顕現した。
と同時に『緊急クエスト 魔龍王ジークブルムノヴェムの討伐 難易度:10』と画面に表示された。
〈QuantumWorld〉では通常クエストのほかに緊急クエストが存在する。放っておけばこの世界を脅かすモンスターが出現した時に現れるものだ。
プレイヤーは強制的に参加させられ、そのモンスターを討伐するまで消えることはない。
そして今〈QuantumWorld〉を破壊へと誘う危機がミナトたちの前に出現したのだ。
「難易度:10ってことはこの前のエントマのつがいよりもはるかに強いってことか」
「見れば分かるだろ。その通りだ、バカミナト。あれはかつて英雄が倒したジークブブルムその怨念が集結したものだ」
「まさかこんな事態になるとはね、ごめん二人ともそれとギーク」
「かまわないよ。それよりもあれをどうするかが先の問題だろう。君たちの意見を聞かせてくれるかい」
「私としては、出来ればあいつを倒したいのよね。そうね、まずは……」
その場にいるだけで敵の強さが肌で感じている身なのにリーシャは恐れることなくジークブルムを倒す算段を考えていた。
「俺もできれば何とかしたいな。魔龍王のアニマを手に入れるにはあいつを倒さないといけないようだし」
敵は強い。けれど立ち向かわなければ何も変えられない。そのことをミナトは先刻体験したばかりだ。だからこそ、戦いたい。強敵に挑む、それこそがこの世界の醍醐味だ。
「そんなうかうかしてんなよ。俺は呼ぶぞ、応援を」
冷静な三人に対してミクリヤだけが取り乱し応援を呼んだ。
応援を呼ぶことによって外の掲示板に緊急クエストの張り紙が即座に張り出される仕組みだ。それを見た他のプレイヤーがクエストを受注し駆けつけてくれる。自分よりも強い相手に出くわしたときの対処法で主にハイレベルのモンスター相手に使うことが多い。
ハイレベルのモンスターは貴重なアイテムをドロップするので皆それ狙いで餌に群がる魚のようによってくる。
「応援を呼んだぞ。相手はジークブルム、上位ランカーや強豪ギルドが駆けつけてくれる。俺たちは彼らが来るまで身を隠し耐えるだけだ」
意気揚々とミクリヤが話しているところフィールドの出入り口の方から死者のうめき声が聞こえてきた。
「ミクリヤどうやら応援を待っている暇はなさそうだぜ」
「ミナト君の言うとおりだ。さっきの咆哮で洞窟にいる全てのアンデッドたちがこの場所に呼び寄せられている」
「それに応援を呼んだとしてもここは洞窟の最奥、来るまでに時間がかかるわ。それと、ジークブルムに到達する前にこの場所に呼び寄せられているアンデッドを蹴散らしていかなければならないわ」
「そんな……」
三人の意見にミクリヤの顔が絶望の色へと変わる。
「じゃあ、どうすりゃあいいんだよ」
ミクリヤは狼狽える。だが、もう二人の答えは決まっている。
「考えても無駄ね。助けがきて魔龍王のアニマが奪われたらたまったものじゃないわ」
「そうだな、リーシャ。この世界に入ってピンチばかりだけどやるしかないよな」
杖を握り、銃を手に取る。
「「あいつを倒す」」
二人の声が重なりジークブルムに武器が向けられた。
「私も二人の意見に賛成だ。助力ながら力をかそう」
「ありがとうございますギークさん」
「そんな無茶だ。確実にやられる。エントマのつがいの時とは話が違う。なぁ、ミナトこんな無謀な事はやめて応援を待とう」
「ミクリヤお前らしくねぇぞ、普段のお前ならどんな敵であっても攻略法を見つけて戦うじゃねえか」
「お前も先刻のことがあったから知っているだろ。この世界はゲームであってゲームじゃない現実なんだ。俺は現実主義なんだ。勝てない相手とは戦わない。死んでこの世界から消えるのは嫌なんだよ」
モンスターに食べられて死ぬという無様な死がミクリヤの戦意を喪失させていた。また同じように死ぬのかと思うと嫌になるのだ。
「確かに死ぬのは怖いしこの世界から消えるのは俺も嫌だ。だけど、戦わなきゃこの世界で生きているとは言えない」
「あなた、ミナトより先に始めた割にこの世界のこと何もわかってないのね。今のあなたは死んでいるのと同じよ」
冷酷にリーシャはミクリヤを見下した。生きることに対しての執念みたいなものがリーシャからは感じられる。絶体絶命の極限状態の時のリーシャほど頼もしいものはない。
ミクリヤは言い返すことが出来ずに消沈した。
「これ以上の話し合いは無意味のようだね。ミクリヤ君は死なないようにおとなしくしていればいい。私は二人に加勢する」
ミナト、リーシャ、ギークの三人は龍王の亡霊に立ち向かっていった。
クォンタムワールド 御巫歪 @mikanagiyugami
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