&boost AI vs HUMAN

「おいおいおい。良い具合じゃねえか」


 メットを取って絶対女王が走り寄ってくる。


「口調。どうなってんだ。走るときだけ性格が変わるのか?」


 女王。密着してくる。抱きつかれた。


「AIが見てます。そのときだけは、口調を変えています」


 呟き声。頬と頬を合わせての、なかば骨伝導のような会話。


「意味があるのか」


「私にとってAIは、まだ敵かどうか分かりません。ばかに見られたほうが得だと思って」


 端末。着信。


 彼女が離れる。連絡の内容を確認した。


「ははは」


 笑いが込み上げてくる。


「俺は良いやつに雇われたな」


 AIも、人格が付けば人と同じ。


「どうしたんだ?」


「口調を変える必要もない。俺たちは、そうか。それなら最高だ」


 端末を、女のほうに放り投げる。


地雷除去作戦マインスイープ?」


「レースは表向きだとさ」


 敷設された地雷を、速度と威力で爆破する。そのための仕組みを作るために、郊外に新サーキットまで作った。そして、自分と絶対女王を雇ったのか。


 笑いが止まらない。


「このAIは、俺たちに軍のとき以上の仕事をさせる気だ」


「そんな。私も、人のために、戦っていいのですか?」


「それを見ろよ。このAIには、倫理性がある。たぶん、人の心も。俺たちが間違ってたらしい。人対AIの構図が、そもそも、違ってたんだ」


「希望。希望をひとつ、言っていいですか?」


「なんのだ」


「作戦に使う車輛です。車種の指定をさせてください」


「聞くだけならな。どの車種だ」


「私の名前を」


「そうか。おまえ、だから絶対なのか」


「はい。絶対に乗る女王です。正確には王女ですが」


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アヴス 春嵐 @aiot3110

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