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「実はな、お前のランクをSランクに上げようと思って呼んだんだ。」
? ランクを上げるため? それにこの人たちが必要なの?
奏の考えを見抜いたのか、カイザルが説明を始めた。
「Sランクの冒険者は、貴族や王族からの指定依頼がある。そうなると、名前がへたすりゃ世界中にとどろくこともある。そうなると、問題が起きてくるんだ。なんでかわかるか?」
有名になると出てくる問題・・・・ね。日本では自分の経歴を誤魔化したり、別人になりすまして人をだます人がいたな。まぁ、日本に限った話じゃなかったけど・・・・。カイザルさんが言いたいのはそういうことかな?
「なりすましや経歴の偽証をする人が出てきたりする人が出てくる可能性が高くなる。ということですか。」
「ああ、そうだ。よくわかったな。あとは、自分の罪を擦り付けて評判を落とそうとする輩もいる。」
奏の答えがよかったのか、カイザルは満足そうにうなずきながら補足をした。
罪を擦り付けるって・・・・・・・。あっ、そういや向こうでもあったな。それで冤罪で捕まったけど数年後、真犯人が見つかって無事に無実が証明されたっていう話。時々ドキュメント番組で流れてた。
それにしても、犯罪ってどの世界でも共通なんだね・・・・・。
「そんでだ、お前さんのようにフードで顔や性別がわからねぇ奴ほどその標的になりやすいんだ。だからもしお前がSランクになるんだったら、俺を含めてここにいる奴らだけにでも素顔を見せといたほうがいい。顔がわかんねぇとかばえるもんもかばえなくなっちまう。内容によっちゃぁ即切り殺されることもある。」
つまりSランクになるとお偉いさんからの使命依頼が来ると。そして有名になるとよからぬことに巻き込まれるのね。私は基本フードを外さないから。なりすましやすいというわけか。その時顔がわからなければ、下手をすれば即殺されることもあると。若干脅迫のように聞こえるのは私の性格が歪んでいるからかしら。
それにしても見つからない。魔力を封じている物(魔道具)はどこに隠してあるの?
奏は内心焦っていた。どんなに探してもそれらしきものが見つからないのだ。試しに、ギルド内すべてに魔力をいきわたらせてみても、見つからない。それどころか、この部屋の外ではみんな普通に魔法を使っているようだった。
『カイル、どこにも見つからないけど何か手掛かりとかはない?』
『カナデが手間取っているようだったから我も一応探ってはいるが、どこにもない。』
カイルは不可解そうに顔をわずかにゆがめた。
『ギルドの外にあるのかな?』
『いや、それはあり得ぬ。こういう特殊な道具は影響を及ぼす範囲は狭いと聞く。あるとすればこの部屋のどこか。もしくはこの部屋のドアのすぐ外ぐらいだ。』
『大きさとかってわかる?』
『ウーーム。大きさはそれぞれだが、置物に見えるように作られていたり、持ち運びやすいようにとても小さいものならよく見かけるな。』
置物はなさそうだな。残るは持ち運びしやすいもの・・・。アクセサリーとかかな? 探し出すためにも、話を少しでも長引かせなきゃ。
奏はどうやって話を長引かせるかを考えながら、今度はカイザルやルイも含めて5人が身に着けている物に魔力を集中させた。
そんな奏をルイはジッと見ていた。ルイは奏が部屋に入ってきたときから、不自然ではない程度にずっと見つめていた。
今の所はカナデに怪しい動きはない。叔父上もうまく誘導している。ここまでは作戦通りだ。この部屋は今魔力が封じられている。魔法で変装することは不可能だ。このままいけばフードの下の素顔が見れる。そうすれば、きっとカナデの正体もわかるはずだ!
ルイは根拠はないが、確信があった。「カナデ」は魔の森であった「少女」であり、「神の愛し子」であるという。
ルイは、自分のひそかな興奮を抑えるように自分の左腕をつかんだ。
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