19

 ギルド長室に足を踏み入れた奏は、違和感を感じた。部屋の模様が変わっているわけでもない。何かから外側から体を押さえつけられるような圧迫感。という感じの違和感だ。前来たときはこんな感じはしなかった。

 奏は注意深く部屋を見回した。

 正面の木でできた机にはカイザルさんが座っている。その前に客人用の長い机1つとソファーが2つ。その1つにはルイが座っていた。その隣に、赤い髪の男が1人。向かいには、金髪の男と水色の髪の女性の2人。年齢はルイとあまり変わらいぐらい。3人とも森で見た人たちだ。

 

 これは何かある。カナデの中で警報が鳴った。


「おっ! やっと来たかカナデ、カイル。待ちくたびれたぞ!」

 奏とカイルに気づいたカイザルさんが声をかけた。


「すみません。ギルドには数分前にはついてたんですが、ついさっきミレーナに聞いて飛んできました。お邪魔でしたか?」


 奏はカイザルさんに謝罪した後、ルイ達4人を見ながら返した。

「いや。こいつらも俺が呼んだんだ。この前の件でな。まぁ気にすんな。」

 

 気にするなって・・・・・。無理がありますカイザルさん!

 この前の件・・・・。あぁ、愛し子のやつか。すっかり忘れてた。

『カナデ忘れていたであろう。』

 カイルがため息交じりに言った。

 テヘ☆


 私の反応にカイルはジト―――――とした目をして、あからさまに(私だけが気づくように)ため息をついた。カイルにあきれた目で見られたうえに、ため息までつかれてしまった・・・。



「立ち話もなんだ、そこに座れ。ルイとアランは向こうに移れ。」

 奏の思考を断ち切るかのように、カイザルが声をかけた。カイザルの言葉に、ルイと赤髪の男は頷いて向かい側のソファーに移動した。


 なるほど。赤髪の男はアランというのか。それにしても、なんか今日のこの部屋は少し息苦しいな。


 奏は、カイザルに勧められたソファーに向かいながら息苦しさに眉寄せた。


『カイル、この部屋なんか変な感じがするけど、カイルは何か感じる?』

『ああ。魔力を封じられたようだ。恐らく、我らが感じる違和感はそのせいだろう。我らは常人よりも魔力がかなり多い。そのせいで魔力が外にうまく放出されずらくなっているようだ。』


 なるほどね。ようするに、流れている水を板とかで水を止めようとしたときの感覚ということだ。でもなぜ今日に限って? それに魔力を封じられたら私‥‥

『ということは私の変装も元に戻っちゃうってこと。』

『戻るというか、もうすでに戻っていると思うぞ?』


 !!! え、嘘でしょ! 今戻ったら何かの拍子でフードが取れた時私の正体ばれちゃうじゃん! そしたらもう誤魔化せないよ!

『カイルどうしよう!』

『落ち着けカナデ。さっきも言ったとおり、我らの魔力はとても多い。魔力が封じられている中でも会話が成立しているのが証拠だ。恐らくどこかに魔力を封じている物(魔道具)があるはずだ。魔力を薄く伸ばせ。魔力を封じているならば、それに魔力が触れれば吸い込まれるか弾かれるような感覚があるはずだ。』


 今の状態でも魔法は何とか使えるけど、保険のために現況も叩いとくってことか。魔力を伸ばす、か・・・・。やったことはないけどやるしかないね。ばれないようにしないと。故障に見えるようにすればいいかな?


『わかった。一応やってみるけど、危なくなったらフォローよろしく!』

『承った。』


 なんかカイルがいつもの何割かましでかっこよく見える。


 奏は、変なところに感心しながらカイザルに勧められた席に座った。カイルは奏の足元に寝そべった。


 さぁ、ここからが正念場だ!


 奏は気合を入れ、カイル以外に感づかれないように部屋全体に自分の魔力を薄く広げていった。

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