名は体を表しすぎている
- ★★★ Excellent!!!
特殊犯罪者集団と専門対策組織の対決、そして捜査の中で少しずつ核心に迫ってゆくミステリー&サスペンス要素というダークローファンの王道。
そして能力を持ち前の機知で応用したり逆に利用されたりと、異能バトルならではの駆け引きや緊張感を押さえた良作──と断じるのはいささか早いです。
魅所はやはり卓越したキャラ造形です。
主人公、橘月那は苛烈なまでに悪を許さず冷徹非常、殺害も辞さない反面その実は年齢相応の少女の顔を──などという月並みな言葉でも表現しきれません(ルナだけに……ってすみません)。
底知れぬ激情のもと己を振るうさまは紅き氷のようであり、同時に自らを律する冷静さを忘れず常に正しい選択を考え追求する姿は蒼い炎のよう。
外見に似合わぬ粗暴な言動が目立つと思えば相手をしっかり見、まずは一度受け止めてみせる度量。
無駄あるいは軟派さを嫌う堅い素振りを見せながらも時折紡がれる軽口。
ヒロインに妹を重ね合わせ護ろうとする優しさ、しかし逆に自分の方が依存してしまっているのではないか? と思わせる危うさ。
それらは、さながら伝説上の狼男(法の外にいる者)を滅する「断罪の光」にして、陽の下にいられない者をも優しく癒す「恵みの闇」にして、二面性などという言葉では数の足らない、満ち欠けで様々な顔を見せる「月」そのものでしょう。
そのあらゆる意味で歪な性質は彼女を象徴するアイテム、ココアでもあると思います。
ほろ苦いのに甘い、甘いのにほろ苦い。本来なら普通の少女として普通の人生を送り普通にそんなビターでスイートな経験をしていたはずなのに、砂糖やミルクではなくニトログリセリンを入れなければならなかった運命。
しかしそれでも、黒に近くはあるけれども黒ではない。果たしてその色は今後どう変わるのか?
一緒に見届けましょう。