作者様は言っています。「自分なりの優しい世界観を表現したい」と。
しかし、それは例えば、
『普段はパッとしないけど霊能者としての実力は超一流の天才! 数々の難事件を解決していくうち人間・妖怪問わず美少女たちの心を掴んでゆき、愛を向けられ困っちゃうな〜』などと、古くから今に至るまでよくあるようなみんなが幸せ、ストレスフリーな作風ではありません。
これは、そういう物語ではないのです。
時代が移ろってもなお己が欲望のため、苦しみから逃れるため、恨みを晴らすため――。
肉体は滅んでも怨念に囚われ続ける魂、あるいは長すぎる生への慰めに、あの手この手でヒトに仇なし続ける妖怪・悪霊たちの所業は確かに醜悪極まりないものだけれども、そんな運命に縛られもがき続ける姿はどこかヒトよりも人間らしく、そしてさながら親とはぐれ居場所を失った子供のように弱々しい。
一方、理不尽なる悪意や怨嗟に晒され平穏な日常を無惨に奪われながらも、あくまで自らではなく他者への思いやりを向けてやまない人間たち。この【対比】こそが本作の世界観の土台であり、そのような強き心が織り成す“優しさ”の物語なのではないでしょうか。
――第一章完、ということでまだまだ明かされていない事柄も多い中、ここまで語ったのは尚早だったかもしれませんが、舞台の再びの幕開けを楽しみにしたい作品です。