第5話:伏線を投げる
俺はそろそろヒロインに頼った演出を変えようと考えていた。
現在まで二回ヒロインを出してみたがイマイチこの世界の観測量は増えていない。
俺たち観測されることによって存在する物にとってはそれは非常に不味いことだ。
だが、現在は西暦二十一世紀の地球、ファンタジー要素はない、というわけで魔王は作れない。
ご都合主義で魔王を生み出しても整合性に矛盾が生じるし、世界的な存在を出すと世界の詳細な作り込みが必要なので却下とする。
異世界転生……ねぇ……
超めんどくせえ……
異世界を作るのはとんでもない労力がかかるから却下。
「妹欲しいなあ……」
妹が欲しい。
だが妹を作ると今は最小限で済んでいる世界の構築と破棄の手間が増える。
定常枠を作るとその人物の周囲の世界の整合性を合わせて常に保持する必要がある。
今の世界は俺の周囲のみしか存在していないので大体自動で世界は回っている。
ここに家族を入れると毎日作り出すか、破棄せず存在を続ける必要がある。
どちらにせよ手間が増えるのでやめておこう。
俺はネットを眺めながら考える。
「この先に人が居るかなんて分かんないんだよなあ……」
俺が今読んでいるテキストを書いたのが実在の人物なのか俺が生成した存在なのかは不明だ。
出来ることなら俺のように特異点を越えた人間が書いた物であって欲しいと考える。
退屈な世界をドキドキハラハラさせるアイデア……欲しいなあ。
愚痴ろうが現在世界を操作できるのが自分一人しか居ない以上、誰かに頼ろうにも、その『誰か』を作り出すことになるので自分以上のアイデアは出さない、つまりは自分で考えるしかない。
話を動かすには『冒頭で死体を転がせ』という言葉があるが、困ったことにこの世界を披露してからそれなりに時間は経ってしまった、死体を転がすには少々手遅れだ。
何か重大な伏線っぽい物を放り投げておこう!
回収しなくても問題ないしな!
「クリエイション」
俺が新しい存在を作り出す。
…………
「あなたには世界を救う力があります……戦いなさい、選ばれし者よ……」
窓の外から声が聞こえた、何か白いものがすりガラスの向こうを横切った気がした。
…………
↑伏線
よし! 伏線も用意したし、これで続きが気になる観測者の増加待ったなしだ!
いつも通り外世界からの少ない視線を感じながら眠りについた。
第四の壁を越えた俺は好き勝手に生きることにしました(カクヨム先行掲載) スカイレイク @Clarkdale
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