地下工場の捕虜

 ハイム軍に属する秘密の地下工場の中にいようとは気がつかなかった。しかし、なぜ私はそんな工場の中に担ぎ込まれたのか全くわからない。


 だがイリスによるとここは、どこかのトンネルの中であるらしい。ハイムはひそかに、地下工場を作ってあったのだ。また、このトンネルについてへんな噂を聞いたそうだ。なんでも、このトンネルにはある怪談があるといいふらされていた。例えばトンネルの一方から入った荷物の数ともう片方の出口から出てくる数に違いがあり確認に入ったが影も形もないのだ。トンネルの下に地下工場をつくる材料を積んで、地下へ潜り込んでいたのであろう。


「私は灯台を目指してどんどん歩いて行ったんだがねえ。」

「昨夜、町から見えていたのは、このトンネルのうえに点いていた光よ」

「なるほど、ではだれに助けられたのかね。君かね、イリス」

「あたしじゃないわ」

「じゃあ、誰?」

「ゴーグ大尉よ」

「ゴーグ大尉って、誰だい」

 そういっているところへ、うしろの扉が、ぎいーッと開いた。

「あ、ゴーグ大尉よ」


 イリスが、私の横腹をついた。私は、ゴーグ大尉の、いかめしい軍服姿に、すっかり気を奪われてしまった。


「おう、どうだ、君の傷のいたみは?」

「ええ、大して痛みません」

「そうか、痛みだしたら、またいいたまえ。注射をうってあげよう」

 ゴーグ大尉が、傷の手あてのことまで、やってくれたものらしい。

「お前は、モール博士と知り合いなのか」

「いいえ、知りませんなあ、モール博士などという人は」

身の安全のためには、博士との関係をいわない方がいいと思い嘘をついた。


「じゃ聞くが、あの黒い筒は、どうしたのか。お前の持っていた筒のことだよ」

 ゴーグ大尉は私を睨みつけながらいった。


「あの筒は、拾ったものです。なんだか、いいものが入っているように思ったので、持っていたのです」

「ふふん。まあ、そうしておいてもいいと……」


 が、ゴーグ大尉は、拳で、自分の背中をとんとんと叩きながら、

「あのアンドロイドの設計図は、モール博士の研究したものであることは確かだ。私は、あの設計図を写真にうつして本国へ報告した。その返事があってモール博士の研究であることがはっきりしたのだ。お前が、それを認めようが認めまいがどちらでもいい私達のやることに変更はない」

 と、大尉は、自信ありげにいって、気を引くように私の顔をみた。


 「ところで、この工場では、あの設計図を使いすでにアンドロイドの製造を始めているんだ。お前、見せてやろうか?」

 大尉は、突然驚くべきことをいった。

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アンドロイド 須藤 レイジ @LEIJI

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