怪しい設計図

「どうしたの、ライト」

「大切な品物だ。私は黒い筒をもっていたんだが、イリスはそれを見なかったかね」


イリスは、にっこり笑った。

「黒い筒ならちゃんとあるわ」

「どこに?」

「ライトの寝ている藁の下にあるわ」

「えっ、ほんとうか」


 私はむりやりに起きあがった。そして藁の下に手をいれようとしたが左腕を傷ついている私には無理だった。イリスはそれをみると自分の手を入れて黒い筒を引っ張りだした。


「これでしょう?」


 正しくそれはモール博士から預かった黒い筒だった。私はそれを右手にとって筒をよく改めてみた。ところが私は筒に異変のあるのを発見して驚いた。


「あっ、開けてある。誰がこの筒を開けたのだろう」


 筒を厳重に封してあったのに開いたあとがついている。

 私は、イリスをにらんだ。


「イリス。君だね、これを開けたのは」

 イリスは、首を左右にふった

「でも、君でなければ誰がこれを開けるのだろうか」


 そういいながらも私は筒の中にどんなものが入っているか早く見たくてならなかった。だから私は筒の一方を両脚の間に挟むと、他方の端を右手にもって引張った。

 筒は苦もなく、すぽんと音がして開いた。私は胸をおどらせながら筒の中をのぞきこんだ。

 すると、筒の中には十数枚の紙が重ねられたまま巻いて入っていた。私は、早速これを引張りだして広げてみた。


こまかく描いた、機械の設計図であった。急いで一枚一枚並べていくうちに、私はその設計図が何を表しているかについて、知ることが出来た。


「おお、これはアンドロイドの設計図だ!」

 私は、おどろきのこえをあげた。

 

 モール博士がアンドロイドの研究をしていたことを今はじめて知ったのであった。私は、むさぼるようにその設計図を何度も繰り返して眺め入った。じつに巧妙をきわめた設計図である。しかも、このアンドロイドは新兵器として作られてあることが分ってきて二重に驚かせられた。


モール博士は国のためにこのような大発明を完成したのであろうがハイム軍にふみにじられた今となっては手遅れとなってしまったことを惜しんだのであった。


「ライト。もういいでしょう。その図面を早くしまったほうがいいわ」

 と、イリスが、私に催促をした。

「なぜ?」

 

図面の四隅に小さい穴があいているのを発見しイリスが図面を早くしまえといったわけが急にはっきりしたのであった。


「イリス、誰がこの図面の写真を撮ったのかおしえたまえ」


 イリスは、もう仕方がないという顔つきで、

「ライト、あまり大きいこえを出さない方がいいわ。一体ここを何処だと思っているの?」


 私は、イリスの言葉に改めて、驚きを隠せなかった。眼が覚めた時から不思議な場所だとは思ってはいたがここは一体何処なのだろうか。

「イリス。ここは、一体どこかね」


イリスは美しい眼を大きく開きぐるっとあたりを見回し、

「ここはね、ハイム軍に属する秘密の地下工場なのよ」

「ええっ!」

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