第5話 最終話

 あれから、10年が過ぎた。


 家の庭で、ロキと共に手を合わせる。

——リナの墓だ。


 気弱なリナは、ストレスに弱かった。

 魔都に最期まで、馴染めなかったようだ。


 それでも、最期に彼女は「それなりに、幸せでした」と微笑んだ。


 俺も彼女達と過ごして、忘れていた人間らしさを、少しは思い出せた気がする。


 それは魔族では、弱さと捉えられる思いやりであったり……。


 俺の横で、手を合わすロキを見る。

 この盲目の少女は、見えないハンデを克服する程、空間の認識に優れるようになった。


 今では大人になった彼女に、剣と魔法を叩き込むのが日課であり、楽しみだ。


 そして、俺は相変わらず魔王城の門番をしていた。

 魔族だからだろうか、外見は特に変わらず、寿命も人間より長い気がする。


——そういえば、ハーデスのロクでもない実験が役に立ちそうだ。

 人間の目を移植する事で、視覚を取り戻せるらしい。


「何百と試しましたから、絶対に成功しますよ」


 やつに失敗したら、殺すと脅した答えだ。


 光を取り戻したロキは、それでも俺を人間と呼んでくれるだろうか?


「ロキ、目が見えるようになったら、何がしたい?」

「世界を見てみたい……」


 リナが、冒険譚を聞かせていた影響だろう。


 魔王を倒すと言ったら、玉座まで案内してやろうか。

 その前に俺が魔王城の門番として、彼女に挑まれるのかな?


 それとも、彼女の横で世界を旅するのか。


——まあ、どちらでも良いさ。

 そろそろ、退屈してきた頃なんだ。


「さあ、ロキ。 ハーデスの所に行くぞ」

「本当に、大丈夫なの?」


 ロキは、心配そうに呟く。


「失敗したら、魔王城ごと吹き飛ばしてやると脅してやるさ」


 そう言って俺は、彼女の手を取った。


 俺は魔族なのか、人間なのか。

 それは姿形なのか、在り方の違いなのか。


——その答えを、ロキは教えてくれる気がした。



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追放された冒険者~パーティどころか国から追放されましたが、魔王城で最強の門番をしています~ 少尉 @siina12345of

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