エピローグ
『私――――一等賞ッ!!』
自分の大声に跳ね起きた。寝苦しいタオルケットはベッドから滑り落ちており、寝巻き用のユニフォームは汗で濡れてぴっちりと張り付いていた。
「うげえー⋯⋯」
夢の中で相当エキサイトしてしまったようだ。フルマラソンを走り抜けたような疲労感。ユニフォームを脱ぎ捨てて、下着姿のまま脱衣所に向かう。
朝のシャワーは一日の活力を与えてくれる。
「あっ、インハイ⋯⋯はないんだった」
尻すぼみの青春にげんなりする。得体の知れない謎のウイルスが憎らしい。シャワーを浴びて出ると、着替えを持ってくるのを忘れたことに気付く。
廊下に顔を出して、父親がいないことを確認。濡れたバスタオルで身体を隠し、自室に走る。
しかし、見つかった。はしたないと叱られた。服も着ずにベッドにジャンピング。気分が落ち込むスパイラル。
(すごい夢を見たような気がするけど⋯⋯どんなだったっけなあ)
とにかくすごい夢だったのは覚えている。しかし、具体的な夢の内容だけがぼんやりと霞がかっていた。
一体この三年間でトラックを何周走っただろうか。千は超えているはずだ。やるせなさに心が沈む。
「中止、なんて…………嘘だ、うぅ……ぅぅぅ――――」
陸上部。
汗と涙を流した青春の日々は、しかし新型ウイルスの蔓延によって幕を閉じた。華の舞台、インターハイの中止が決定されたのだ。
この青春の三年間は一体なんだったのだろうか。失意に沈む彼女の元に、一通の招待状が届く。
『by Ideal Heven(※神聖世界より)』
「あい……えい、ち…………インターハイの招待状! やっぱり中止なんて嘘だったんだ! よぅし、頑張るぞ!!」
果たして、彼女は世界を何周走ることになるのか。
それは女神のみぞ知ることである。
Never end――――青春は走り続ける。
陸上部(JK) ビト @bito
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