見てはいけない者 ※その第一怪

ふぁーぷる

第1話 見てはいけない者 ※その第一怪

気を付けろ!油断したら理不尽は訪れる。


〜○〜


 1ヶ月に一回の事務所出勤日。


 デザイン部門のチームミーティングも午前中に終わったけど、

 久し振りに会う皆んなと近寄らずなコミュニケーションで気分

 も晴れやか。


 話も尽きないし。


 当然、皆んな着飾っている。


 自宅で一人ファッションショーをやっても物足りない。


 本来誰かに見て貰うことで悦を得る訳だから〜。


 皆んな気合い入っている。


 気がつくともうこんな時間、終電近い時間。


 あ〜また華やかな小鳥たちは暗い鳥籠に帰宅するのね。


 事務所からバス経由で博多駅まで行き、鹿児島本線で上り、

 香椎駅で支線に乗り換え二駅目の鳥籠に帰る。


 コロナだけど月初なので人は多い。


 まだ梅雨明けしないじっとり空気の中、夏マスクして博多駅。


 しろ屋の練乳パンをふと思い出し、頑張る女子のご褒美に

 どうしても食べたくなって駅コンコースに立ち寄る。


 あー並んでる行列…。


 明日から鳥籠。


 間隔開けて行列に加わる。


 これじゃ本当に終電コース。


 頑張る女子のご褒美、褒美これも仕方なし〜。


 3個入り1セット、2セット購入。


 薄いプラスティック容器に3個並んでる。


 カワイイ!


 ビニール袋に入れてもらって<カサカサ>鳴らせながら

 駅ホームへと急ぐ。


 香椎駅での支線乗り換えは最終電車確定。


 少し走ったから息が苦しい。


 お洒落のヒールで足も痛い。


 夏マスクの内はじっとり。


 空気もじっとり。


 鹿児島本線の悶々とする電車の中、我慢我慢で香椎駅に到着。


 香椎駅では40分待ち合わせ。


 ホームは改札から一番遠い4番線ホーム。


 痛い!ヒールの足に豆出来てる。


 まだ40分あるけど4番ホームのベンチで待とう。


 終電だから誰も居ない。


 連絡通路歩いて階段降りてベンチを探す。


 あ〜、コロナでベンチも減らされてる。


 ホームの一番先に二つ並んで設置されてる。


 痛いけどあそこまで歩こう。


 やはり誰も居ない。


 どかっと座ってヒール脱いで足を楽にする。


 街灯が少ないのか少し薄暗い。


 風もなくてじっとり空気が纏わり付く。


 <チカチカ、チカ>街灯の蛍光灯が音を出す。


 階段側を向くと、煌々と明るい。


 光を見つめてベンチに目を移すと尚更暗さが増す。


 お洒落のワンピーも汗でぴったり張り付いた感じ。


 スマホでだから時計してないから、バッグからスマホ出して

 時間を確認する。


 まだ5分しか経っていない…。


 久しぶりの歩きで疲れた…。


 少し眠たくなる。


 のを自覚するする…。



 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロ>


 <コロコロ コロ>


 あ〜、そうもう秋なんだ。


 コオロギ?


 虫の音色で暑さが和らぐな〜。


 と、目が覚める。


 いけない睡魔に意識を連れて行かれてた。


 えーと、梅雨明けまだだよね。


 何で、何で、虫の音色…。


 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロチュ>


 <コロコロ コロチチチ>


 ベンチの横から虫の音。


 いやこれは虫の音色じゃない!


 <ばっ!>っと横を見る。


 うああ〜あ〜


 …



「ほらー! おっさん!」


 そこには半分白目をヒクヒクさせながら


 <コロコロ コロ>


 <コロコロ   コロチュ>


 <コロコロ コロチチチ>


 と口を尖らせて虫の擬音に勤しむおっさんがいた。


 しかも<チチチ>って鳥も入ってるし!

 いい加減はやめて!

 しかも白目半開きでヒクヒク痙攣してるし。

 何なのよ、もう!

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