紅 べに

雨世界

1 ……ずっと、君(あなた)のことが大好きでした。

 紅 べに


 登場人物


 青 ぼんやりとした高校生 透明な色をしている。


 紅 ポニーテールの高校生 ずっと片思いをしている。


 プロローグ


 さようなら。……ばいばい。

 

 本編


 ……ずっと、君(あなた)のことが大好きでした。


 紅がずっと好きだった幼馴染の少年、青に恋の告白をしようと決心をしたのは、紅が高校二年生になった年の夏の日のことだった。

 ずっと自分の本当の気持ちを、思いを伝える決心ができないままでいた紅がそう決心をしたのには、もちろん、理由がある。


 それは自分の友達である同じ教室のクラスメート、緑子が紅の片思いの相手である青のことを自分も好きだと、「私、実はずっと前から青のこと、好きなんだ」とこっそりと紅に言ってきたからだった。

 紅はその友達の言葉を聞いて、告白を決心した。(それはきっと、宣戦布告なのだと思った)


 私はもう十年も、青のことを思ってるだぞ、(小学生のころからだぞ)と紅は思った。向こうが青とあったのは、たったの一年前。(高校に入学してからだった)緑子と私とでは、青に対する、好きという思いの強さと年月の長さが全然違うのだ。


 紅は、ちょっとだけ怒りながら、いつものポニーテールの髪を左右に小さく揺らしながら、(そのポニーテールの髪を紅は自分と同じ名前の紅色の髪留めで止めていた)学校の廊下を一人で歩いている。


 紅が向かっている先は、高校の屋上だった。

 そこには、青がいるはずだ。(なぜなら紅が青を放課後に屋上に呼び出したからだった)


 紅は屋上に続くドアを開ける前に、「……ふぅー」と一度、深呼吸をした。(私は今、とても緊張している、と紅は思った)


 ドアを開け、屋上に移動すると、……そこには約束の通りに青がいた。


 青は、じっと、屋上の緑色の大地の上に立って、そこから(その名前と同じ)青色の夏の空を見つめていた。

 両耳にはコードのないイヤフォンをつけている。片方の手はポケットの中にしまわれている。

 どうやら青は、そこでお気に入りの音楽を聞きながら、ほかに誰もいないとても静かな屋上で、気持ちのいい夏の風を感じながら、空の風景を見ているようだった。


 そんな青の後ろ姿を見て、紅はどきっとする。


 その後ろ姿は、……紅が憧れた、好きになったあの、子供のころの青の姿に(背はすごく大きくなったけど)今も、そっくりだったから、だった。

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