メテオラ 星の祈り

雨世界

1 ……ねえ、奇跡って、信じている? 私は信じているんだ、奇跡。(耳元で、秘密を囁くような小さな声で)

 メテオラ 星の祈り


 登場人物


 メテオラ 魔法使いの男の子


 マギ 魔法使いの女の子 星読み 星を見ることが好き


 ライム 輝く星の子 男の子 双子


 メルー 輝く星の子 女の子 双子


 プロローグ


 ……ねえ、奇跡って、信じている? 私は信じているんだ、奇跡。(耳元で、秘密を囁くような小さな声で)


 魔法使いという種族について


 その一、魔法使いは空を飛んで一生を終える種族である。

 その二、魔法使いの魔法とは空を自由に飛ぶことである。

 その三、魔法使いはその生涯をかけて自身の魔法使いの研究をする。

 その四、魔法使いは森とともに生き、森とともに死する種族である。

 その五、魔法使いが死ぬと、その魂は根元の海と呼ばれる場所に還っていく。

 その六、魔法使いは魔法樹という大樹を信仰する。

 その七、魔法使いは他種族と交流を持ってはならない。


 満天の星空のしたで、……両手を大きく広げて。


 魔法使いたちは歌を歌う。

 魔法の歌を。

 世界の調和を、夢見て。願って。


 根元の海(やがて、すべての魔法使いたちが帰る場所)からの使者。


 空に、一つの星が輝いている。

 とても巨大な流れ星。

 輝く彗星。箒(ほうき)星。


 それは数日の間、消えることなく、昼の時間も、夜の時間も、地上からずっと観測することができた。


 そんな不思議な星の流れる、星空の見える最後の夜。


 一人の男の子と一人の女の子が、空から地上に(まるで流れ星が落ちるように)降ってきた。


 その男の子と女の子が地上に落ちたことに、気がついた人は、一人を除いて、誰もいない。


 その男の子と女の子は、この世界の運命を決めるとても大切な使命を持った、……遠い星(あるいは、遠い場所)からやってきた男の子と女の子だった。(……もっとも、本人たちは落下の衝撃で記憶を失ってしまっているのだけど……)


 本編


 世界は、……(きっと)愛で満たされている。


 天文学者と天体観測


 不思議な流れ星の流れている最後の夜


 その日、マギが夜空の星をいつものように眺めていると、あるいは、観測していると、(昼の間も見える、不思議な流れ星の見える夜など関係なく、星が大好きなマギは毎日、星空を観測しているのだ)そこにはいつもと本当にちょっとだけ違った星空があった。

 その変化にマギが気がつくことができたのは、(ほかの魔法使いたちなら、星読みであるマギのようには、星の変化に気がつくことができなかっただろう)マギが『星読み』と呼ばれている星を観察し、その結果、季節や日時を知ったり、方角を割り出したり、この先に起こる未来を観測したりすることを生涯の魔法使いの研究に選んだ、魔法使いの一人、だったからだった。


「あれ? 今日の星空はなんだか少し変ですね。どうしてでしょう?」

 うーん、と小さな頭をちょっとだけ斜めにしながら、そんなことをマギは言った。


「あそこに星があるはずないんですけど……。うーん、(何度確かめても)やっぱりある。おかしいですね。……どうしてでしょう?」

 マギは今度は逆の方向に頭をちょっとだけ斜めにして言う。


 そうやって、大きな手作りの天体望遠鏡を眺めていると、「あれ?」とマギは言った。

 その瞬間、夜空の星空から、『二人の星』が地上に向かって、つまり、マギたちが暮らしている魔法の森に向かって、落っこちていく風景を見つけたからだった。


「近い。……いや、これは森に落ちる?」

 マギは言う。


 そのマギの言葉の通りに、二人の星は魔法の森の中に確かに落っこちた。


 その様子を天体望遠鏡でずっと観測していたマギは、星が落下したのと同時に、ずっとくっつけぱなしだった天体望遠鏡からその目を離して、すぐに夜の森の中に外出する準備を始めた。

(……今夜は星が輝いていて、とても明るい夜です。たぶん、夜の時間の森の中でも、迷子にはならないでしょう。星の光が、星読みの魔法使いである私のことを守ってくれるはずです。

 いそいそと外出の準備をしながら、そんなことをマギは思った)


 マギが突然、外出しようと思った理由。

 それはもちろん、森の中に落っこちた二つの星の正体を確かめるためだった。


 大きなリュックサックを背負い、外出の準備を終えたマギは、ばたん、と大急ぎで家のドアを開けると、明るい星の輝く夜の魔法の森の中に(本当に飛び出すようにして)駆け出して行った。

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