隣国との戦争のさなか、別荘で療養するひとりの少女と、診察するためだけに日曜日に通い続けた青年の物語。
青年は、少女が元気になるのなら……との思いから、診察を終えた後、彼女に話を聞きたがった。
「今週は、何か楽しいことはあったかい?」
青年からの問いに、少女は、最近読んだ本のことだったり、父親が会いに来てくれるのが嬉しいと思ったことなどを打ち明けます。
そんな時間をすごすうち、青年の心にある想いの火が灯るのです。しかし、やはり戦争は、そんなふたりの関係を断裂させるほどに残酷で、ふたりの関係にせつなささえ漂ってきます。
その理由を、読み取っていただけたら……。
そして、診察のために、その後も青年は館を訪れ続けるのですが……。
病弱で屋敷から出られない少女カタリナと彼女を毎週診察に来る医師シモンの心温まる交流、のはずなのですが、シモンの愛国心が、カタリナの父のカタリナへの親子愛が、そして誰よりカタリナの無邪気な笑顔が平和を叩き壊していく──
けれど物語は続いていく。
終わらない。
歴史はけして終わらずに続いていくのです。
その輪の中に囚われたシモン医師はアイザックの言うとおりきっと永遠に輪の中をぐるぐると回り続けるのでしょう。これほど滑稽な悲劇があるでしょうか。
カタリナもまた物語の最後を知らないままだったかもしれません。それは果たして幸福なことだったのか、それとも……