第4話特別を求めて
今日は夏の休日だ。
暖かい日の休日だと何が起こるかについて、ルイはよく知っていた。
そう、塔に上ってみようとする人が現れる。
いままで、塔に行こうと森に入って行った人は皆帰らぬ人になっているらしい。そんな噂を聞けば、なんだか怖くて絶対に上ろうとしない人と、興味津々で余計に上りたくてうずうずし始める人間がいる。
うずうずしてしょうがない若い男性三人は、夏の朝、リュックサックに飲み物や軽食を詰めて森に入って行った。
ルイは塔の上からそれをしっかりと見ていた。
「あぁまた来たよ、シゴトの時間だ。」とかなんとかブツブツつぶやきながら。
森は迷路のようになっているが、きちんと道にはなっているのでたどり着くのになぜそうも苦労するのだろうと若者たちは思っていた。
ルイは、ライフルを取り出し、塔へ登る階段の中間付近からしっかりともうすぐで森を抜ける若者をみて静かに引き金を引いた。ルイは猟師の気分だ。
見事に命中。三人とも無事、爽やかな銃声と共に遠い世界へ旅立ってくれた。
そう、彼の得意なことは射撃だ。銃で人を撃つのがうまい。できないことが目立つ彼でも一つや二つは得意なことがある。彼はいままで、外したことは一度しかない。
一度外したのは小さな少年だったのだが、なかなかな運動神経と小さな体のせいで打ちそびれてしまった。
その少年は森を抜け、庭園までたどり着いてしまったのだが、銃声に驚いて逃げて行ってしまった。そして彼のもう一つの失敗は、その少年に顔を見られてしまったことだ。街でバラされたら困る。
そう思った彼は、少年を街で探し始めた。この街はとても小さい、すぐに見つかる。
ルイは、何人かでわらわらと遊んでいる少年を遠くから見つけ、少年が一人になった時、優しく手招きをした。少年はたかたかと走って来て、久しぶりの再開に少しだけ間をおいて、徐々に顔を青くしていった。
ルイはしっかりと少年の肩を持ち、隣町との境界の林の中で、少年の口にはガムテープをし、頭を掴み、硬い杉の幹に少年の小さな頭をリズムよく的確に打ち付けた。
穴掘りなんて久しぶりだったため、足元はとても汚れた。
まずは拳銃で、見られたら自分の素手で、そうやってルイは塔からの景色を自分一人だけの特別なものにしていったのだ。
何人撃ったかなんてどうでも良い。こうやって自分だけの大事な特別があることで、ルイの心は落ち着くのだ。
アポヴの大きな塔 サチ @yu_me_migachi
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