鬼類災害特務隊──って、所でそもそも「鬼」って何だよ？──

転章

　その一軒家を除いて、周囲１㎞近くには人工物らしきものは無かった。

　しかし、その一軒家では、灯りが煌々と点っていた。電線の類は見当らないのに、何故か電気だけは使えるらしい。

「めずらしい。『鬼』ではなく『神』の力の持ち主か？」

　その家の玄関口で、長い髪の毛を束ねた迷彩模様の作務衣姿の大柄な三十前半ぐらいに見える男性は、自分を訪ねて来た小柄な二十代後半ぐらいの女性にそう言った。

「ようやく見付けた……。この世界に二〜三十人しか居ない……『神』の力の持ち主の１人を……」

「残念ながら、俺は、ハズレだ。俺も、最近になって、この世界に流れ付いた……。記憶が一部曖昧だが……俺の居た世界は消滅してしまったらしい。だから、この世界の事は良くは知らん……」

「そうか……」

「だが……あんたも薄々判ってる筈だ……。この世界から……普通の人間に無い『能力（ちから）』の持ち主達を消したのは……『神』の力の持ち主の中でも、更にとんでもない化物……『現実』そのものを自由に書き換えられるヤツだ」

「そして……今、この世界で起きてるのは、『現実』そのものが書き換えられた反動か」

「ああ、更に悪い事に、やらかしたヤツは……もう、この世界には居ない……。愚行の責任を取らせる事も……とっ捕まえてリンチにかける事すら無理だ」

「やれやれ……色んな世界を巡って来たが……ここで起きてる問題は、かなりの難問みたいだな……」