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「メーターは有るけど機械式……だとすると、これが作られたのは、液晶表示の実用化以前って事ですか……」

 佐藤正一は、そう言った。

「でも、これが作られたのが、もし……矢野さんの推測通り『平行世界』だとすると、その『平行世界』は我々の世界と似た歴史を辿った保証は有るんでしょうか?」

「少なくとも……メーターに使われているのはアラビア数字ですから……近代科学が生まれた辺りまでは似た歴史だったんじゃないかと……。ん〜、でも、液晶を使った技術は実用化されてないけど、他の点では進んでいる世界は……有り得ますかねぇ……?」

 一同が『立入禁止』区域のほぼ中心に有る建物の中で見付けたのは……「機械部品を出鱈目に組合せて作った何か」だった。

 「門」を模した「現代美術」だと言えば、美術館に飾られていても違和感は無い。

 ただし、その「門」は中型トラック一台が余裕で通れるほどの大きさだったが……。

 「門」に見えない事もない機械は、外に有る羽根ファンレス型の風力発電機と、建物の周囲や屋根に有る太陽電池から電力を供給されてるようだった。

「動かすな、とは言われたけど……そう簡単に動かせそうにないわね……」

 矢野は、その門を見ながら、そう言った。

「あいつらは……我々に何をさせたいんですかね?」

「考えられるのは2つかな?」

「と言うと……」

「1つは……偉そうな事を言ってるあいつらも、我々と同じ程度にしか、今起きてる事について知らない。もし、そうなら、我々もあいつらが推測してる『何か』を推測出来るだけの情報は持ってる可能性は有る……けど、その情報から『何か』を推測する『能力ちから』『発想』『視点』……そう言った最後の一手がが足りないだけ」

「なるほど……」

「もう1つは……あいつらの倫理観とか何かの理由で……あくまで『お節介な部外者』の立場で有り続けたいのかも……」

「えっ?」

「この世界に、我々の想像を超える事が起きてるのなら……どうやら、この世界の者じゃないらしいあいつらは……それにどう対応するかは……この世界の人間に決めさせようとしてるのかも知れないわね」

「でも……なら……我々じゃ力不足なんじゃ……?」

「メンバーを増やすしか無いわね……。もっと色んな分野の人間を、どんどんスカウトするしか……」

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