(7)

「上から、何か言われますよ……絶対……」

 鬼類災害特務隊の顧問と地元隊員達は、立入禁止区域に入った。

「でも……たった1つだけ、全てを説明出来る仮説を思い付いた……。あまりに馬鹿馬鹿しい仮説だけど……」

 矢野は地元部隊の隊長にそう言った。

「じゃあ、あのコンビニに入って、置いてある新聞や雑誌を確保。もし、私の予想通りなら……あそこに有る新聞や雑誌には、我々から見て、何か変な点が有る筈よ」

 そのコンビニはドローンが撮影した場所の1つだった。この地域が「立入禁止区域」になった時には、無くなっていた筈のチェーンの店。

「助かった……。何とか残ってたか……」

 矢野は店内に残っていた。新聞や雑誌を確保する。

「見て……」

「何なんですか? この新聞の一面の『日本肺炎』って……?」

「あと……元号が変ですよ。『麗和』?」

 その新聞の一面では、数年前に流行した新型肺炎が「日本で発生したものだった」と云う見解が世界的に広まりつつある事が報じられていた。

 しかも、新型肺炎は、中国の発だと云うのが定説の筈なのに、その新聞記事では「従来は中国ので発生したとされていた」と書かれていた。

「あと、このニュース、神戸にスパコンの施設が有るみたいな事が書いてあるけど……そんな施設有ったっけ?」

「日本のスパコンって言ったら……京大の『清水きよみず』と海洋研の『地球シミュレータv4』が3位以下に大差を付けたブッチギリの1位と2位じゃなかったですか? 神戸に有るとしても『そこそこのスパコン』でしか……」

「それ以前に……『麗和』って、今の元号の候補の1つじゃなかったですか?……いや、読み方は同じだけど字が違ったかな?」

「やれやれ……予想は当ってたけど……対策は思い付かない……」

「予想? どんな予想なんですか?」

「鬼の出現は……日本で……ひょっとしたら世界中で起きつつ有る現象のほんの一部……。私達が今までやってきた事は、喩えるなら、それこそ『肺炎に罹ってたのに、熱が出ると云う症状……それも数有る症状のたった1つにしか目を向けてなかった』みたいなモノかもね」

「えっ?」

「この世界の一部が、別の世界に置き換わりつつ有る。鬼は……単に、そのせいで、元々居た世界から、この世界に連れて来られただけかも知れない」

「ええええ?」

「え……っと……つまり……」

「井上さんの故郷は……もう、この世界には無い。ここに有り……そして私達が居るのは……『井上さんの故郷の平行世界バージョン』よ。そして……井上さんと同じDNAを持つ死体も……『平行世界における井上さん』よ……」

「い……いや……確かに他に説明可能な仮説は思い付きませんが……説明出来りゃ良いってもんじゃ……」

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