(6)

「へぇ……じゃあ……貴方達に鬼退治を手伝ってもらう事は出来るの?」

 矢野は、ヴェロキラプトル型のロボット……または、それを遠隔操作している何者かにそう言った。

「無理だ。理由は2つ有る。1つは我々が……どこのものであれ、警察や軍隊や政府を信用していない事。もう1つは……我々では圧倒的に人手が足りない。我々なら、1つの地域を鎮圧する事は可能だろうが……同時に複数までは無理だ」

「ちょっと待って……今までだと『鬼』が現われるのは、せいぜい半月に1回……」

「後になるほど、発生頻度は上がっている筈だ。間もなく『同時に離れた複数の箇所に出現する』可能性を無視出来なくなるだろう」

「じゃあ、そっちも情報を提供してもらえない?」

「それも無理だ。今の君達では、我々と信頼関係を築けない」

「どうして?」

「今の君達では、我々が提供した情報の真偽を検証出来ない。その状態で、君達が我々の提供した情報を信じてくれたとしても、そんなモノは信頼関係とは言えない」

「いや、待て、こっちに一方的に質問をしておいてそれは……」

 密教僧の隆賢が抗議する。

 矢野は溜息を付いた。

「違う……そいつらが必要とした情報は……あの質問に対する我々の『回答』じゃなくて、あの質問に対する我々の『反応』よ……。多分ね……」

「えっ?」

「そいつらは……多分……既に、そいつらの言う『この世界の鬼』についての何かの仮説を立ててる。その仮説を検証するのに必要な情報を……私達が持っているかどうかを確かめたかっただけよ。ひょっとしたら、我々が、そいつらの質問に答えられるかどうかも……その仮説の検証の一環だったのかもね」

「そう云う事だ……。とは言え、我々が貴方達に敵意を抱いていない事を証明する為に……この『立入禁止』区域の中心部に有るモノを貴方達に引き渡す。一応、忠告しておくが、引き渡すモノは……移動させない方が良いし、調査も非破壊検査のみにすべきだろう」

「どう云う事?」

「あれは……貴方達必要となる可能性が高い。他の全ての対策が失敗した時の最後の『保険』になる。うかつな事をやって壊されては困る」

「で、私達に何をさせたい訳?」

「最善の策は……この世界に『鬼』が次々と現われ続けている原因を突き止め、その原因を断つ事。次善の策は……この世界に元々居たであろう『鬼』やそれに類する存在を見つけ出し協力を仰ぐ事。そして……他の全ての対策が失敗した時の最後の策は……」

「何?」

「全てを捨てて逃げろ……。この世界から……」

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