(5)
「どうします? あのドローン、撃ち落しますか?」
鬼類災害特務隊の地元部隊の指揮官は、顧問達にそう聞いた。
「まずは、様子を見て……」
「でも、あのドローンを操ってる相手に、我々を攻撃する意図が有るとしたら……?」
「ここに居る人間で対処可能かによる。もし、ここに居る人間を一瞬で殲滅出来る戦力が有るとするなら……あれを撃ち落しても大した意味は無い。逆に、ここに居る人間で対処可能な『敵』なら、やっぱり撃ち落しても、どれほど戦局を左右するかは……」
「ま……まぁ……そうですが……」
「待って……アレは……」
その時、もの凄い勢いで向かって来るモノが有った。
それは、一瞬だけ、こちら側のドローンに映っていた……。
「あ……えっと……」
「あの……あいつらにとっても、あれは友好の意味なんですかね?」
「さ……さぁ……」
一同の前に現われた金属製のヴェロキラプトル型のロボットは、一端、立ち止まると呑気そうに挨拶でもするかのように手を振っていた。
「えっと……言葉が通じるとは思えないけど……」
「『君達のリーダーに会わせてくれ』がファースト・コンタクトものの定番だったかな?」
ヴェロキラプトル型ロボットから聞こえてきたのは、日本語ネイテイブの二〜三十代の女性と思われる人間の声だった。
「だ……誰?」
「『誰』の意味にも依るが……端的に言えば、この子を遠隔操作している者だ」
「『この子』って、そのロボット?」
「そうだが……で、聞きたい事が有る」
「いや、聞きたい事が有るのは、こっちだ‼」
そう叫んだのは、密教僧の隆賢。
「気持ちは判るが……我々にとっても、この世界は謎だらけだ……。情報を提供してもらえるとありがたい」
「謎?」
「そうだ……。君達は……君達が戦っている『モノ』を『鬼』と呼んでいるらしいが……ならば、この世界の『鬼』達は、どこへ消えた?」
「え……?」
「いや……だって……」
「まさか……その……」
「この世界では、『鬼』その他の超常の存在が長い間現われなかったからこそ……超常の存在に対処する為の技術や知識が形骸化し失なわれていったのでは無いのか?」
「ま……まぁ……」
「確かに、言われてみりゃ、かつて有ったと言われてる秘伝・秘法の多くが失伝しちまってるしなぁ……」
「ええ、ウチもです」
密教僧の隆賢と、陰陽師の佐藤は、顔を見合せてそう言った。
「この世界の『鬼』達は、完全に消えたか、消えたに等しいほど数を減らしたか……それとも、この後に及んで表に出て来れない理由でも有るのか?」
「ちょっと待って、まるで……その……」
「そうだ。他所者の『鬼』が、この世界に入り込んで好き勝手やっているのに、この世界に本来居た筈の『鬼』はどこで何をやってる? 消えたのなら、いつ、どんな理由で消えた?」
「あの……何か世界がいくつも有るような言い方ですが……それはともかく、ラノベに出て来るような『異世界』やSFやアメコミに出て来るような『パラレルワールド』が有って、我々が現実だと思ってるこの世界は無数に存在する『世界』の1つに過ぎないのなら、たまたま、ここが最初から『鬼の居ない世界』だった可能性も有るんじゃないんですか?」
そう聞いたのはソンだった。
「それでも説明出来ない点が有る。なら、何故、この世界には……形骸化しているとは言え、『鬼』その他の超常の存在に対処する為の技術や知識が生まれたのだ?」
「我々も貴方達も、貴方の言う『この世界の鬼』が存在し、既に動き出してる事を今まで知らなかった可能性は?」
「何の事だ?……ああ、ひょっとして、この近辺の鬼の死体の事か?」
「ええ、そう。我々は、あの死体が、あの鬼達同士の戦いで死んだと思ってたけど……でも、生きた『鬼』は発見出来なかった」
「なるほど。私が言った事が正しいなら、あの『鬼』達を殺したのは、この世界の原住の『鬼』の可能性が有る。そう考えた訳か」
「そう云う事」
「だが、もう1つ可能性が有るだろう?」
「何?」
「あの鬼達を殺したのは……我々だ」
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