おねショタ重力圏

澄岡京樹

おねショタ重力圏

 ある晴れた夏の日のことです。公園でカブトムシを探していたヒロシくんは、木陰からヌッと現れた近所のお姉さんにこう提案されました。


「ねえ、あっちで面白いことしない?」


 面白いことって一体何なんだろう。そう思ったヒロシくんは、カブトムシ探しとお姉さんからの提案とを天秤にかけて数秒考えました。

 ……二秒後、ぶっちゃけカブトムシ探しには飽きていたヒロシくんは提案に乗ることにしました。


「うふふ、お姉ちゃんうれしいなぁ〜〜」

 お姉さんのやや紅潮した笑顔に不思議とドキドキするヒロシくんでした。



「……で、これがその面白い案件なんだけど」


 お姉さんがヒロシくんを連れてきたところは商店街の路地裏でした。そこはまだ午前中だというのに陽の光すら当たらない真っ暗闇でした。

 ですが日差しが全くささないことはこれまであり得ませんでした。……なんとそこにはブラックホールが発生していたのです。


「路地裏に射し込んだ陽光のみを吸い込むブラックホールか。こりゃまたひねくれた物体だな」

 ヒロシくんはクールに分析しました。ヒロシくんはショタですが非日常を冒険しすぎた結果ちょっとだけやさぐれてしまったのです。


「ヒロシくん、どう思う?」

 お姉さんが訊ねるとヒロシくんは、

「これは天体のなれ果てじゃなくてストレスのなれ果てだな。誰かが溜め込んだストレスを吐き出したんだろう。それがあんまりにも重すぎて陽の気だけ吸い込むジメジメした重力圏を作り上げちまったんだと思うよ」

 などと少し不思議な回答をしました。


「へー、じゃあこれどうすれば消えるのかなぁ」

 お姉さんは、しゃがみ込みヒロシくんと目線を合わせながら言いました。ヒロシくんはまたもやドキドキしてしまいました。ヒロシくんは本案件をめんどうゆえに放置したかったのですが、お姉さんにドキドキしてしまい断るタイミングを逃してしまいました。


「う……そうだな。見た感じ陽光を吸い込み続け速度は遅そうだ。強力な存在になる前に対処すればいい。例えば、陽の気を一気に送り込んだら処理速度が追いつかなくなって消滅すると思————」

「教えてくれてありがとっ」

 ヒロシくんが言い終わる前にお姉さんがヒロシくんのほっぺにチューしました。ヒロシくんは顔が真っ赤になりました。ストレスブラックホールは一瞬で消滅しました。


 せみがみんみん鳴く夏の日。超常現象案件は人知れず解決されたのでした。

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おねショタ重力圏 澄岡京樹 @TapiokanotC

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