第6話 決戦!!優雅なる女騎士
ダイスの目はシャルロットに向いた。
「どうやらもう勝負は決まったも同然ですわね」
周りの隔壁が徐々に並木を形作る。
シャルロットの後景は二本の石柱が聳え立ち
凱旋門を創造していく。
「さぁーッ行きますわよ!!!!」
地を蹴り突進してきたかと思えば同時にサーベルを前方に突出す。かなりのスピードだ。
あの先端を見てはいけない。
目を伏せて体感で避ける。サイドステップでかわしたいとこだが自分に逃げたと思われるのも釈だ。
初手は直線上でかわしてやる。
「おっとぅ。そんなお手本のような突きは
見切りやすいぜッ!!」
低く屈んで両手をつき、反る。
サーベルは腰元スレスレで
空を切った。
「なんて避け方、上品でなくってよ」
(!d(*´ω`🎀)避けるしかあるまいて)
ふいに何か聞こえた気がした。
《ブブーッ!!シャルロット選手!減点です。
まだ試合開始の合図をしていません》
なんとフライング。
「野蛮なのはどっちだよ。闇討ちといい、やっぱりテメェは卑怯もんだな」
「な…なんですって騎士道を愛するわたくしがそんな事するハズがありませんわ(くぅーッわたくしのバカバカバカバカ。こんな所でドジを踏むなんて。もうてっきり試合始まったと勘違いしてましたわ。セバスに笑われる。落ち着かなければ平常心ですわ、平常心)」
《両者元の位置に戻って》アナウンスが響く。
〈それでは決勝リーグ第二回戦を行いす!!両選手とも用意はいいでしょか!?〉
〈それではジェネ・バトル!!RADY!GO!!!!〉
先とは打って変わって防御の姿勢。
ありがたい、間合いをつめやすい。
足の怪我もあるからできれば勝負は
一瞬でつけてしまいたい。長引かせたくない。
(さぁココからはウチのスタイルで攻めてやる!!!!)
的を絞られないように頭を振り、近づく!!
フェンシングの典型的な型は、前進とその
後退にある。直線的なスポーツなら
高速で裏に廻り攻め入られることは苦手とするハズ。
サイドステップを刻みに行った瞬間…
《おーっと!!!!鈴麗選手!!自ら闘いを放棄するののでしょうか!?》
「へ?」
視線を地上に転ずると足元には一本のラインが縦に伸びている。
思わず爪先で突っ張る。
シャルロットがアナウンサーの語を継いで答える。
「あらあら。【ピスト】をご存知でありませんの?フェンシングのバトルフィールドですのよ。このフィールドから一歩でも外に出れば即失格。敗けになりますわ」
「聞いてねえぞ!んなもん!!ガン・トレットの時にはんなのなかったし」
「ダイスの勝者の有利な地で決戦は行われる。なるほど先の西部劇娘は拓けた場所での闘いが得意だったのでしょうね?それにバトルフィールドには選手の思想も反映されますわ」
「選手の思想?なんだそりゃ」
「まだおわかりでないの?西部娘はきっと
拓けた性格や土地開拓の国代表だったことと思いますの。わたくしの場合は曲がった事が大嫌い。まっすぐ。気高く。騎士道精神に則った闘いを好みますし、相手にも強いますわ。常に闘いとはルールの上でも精神の上でもフェアでないと一進一退のぶつかり合いこそ美学!!!!」
「ルールの上ではフェアじゃねえけどな」
「フェアですわ。この大会のルールに則っていますもの」
「く…」悔しいが返す意見を持ち得ない。
少なくとも議論では負けている。
「お馬鹿な貴女の為にもう少し優しいルールにしましょうか。ソレッ」
ラインの廻りを炎が取り囲む。
(あっちぃアチチチチッ)
「なんだコレ。この何処が優しいんだよ。
デスマッチになってるじゃねーかオイッ
炎VRじゃねーし。鼻からこの仕組み考えてやがったな」
「オーホッホ…コレで嫌でもラインの上で勝敗を決することができますわ。悪知恵を働く猿女だもの。ルールを理解された上でなおかつ棄権されてはわたくしのプライドに反しますし」
(ふんッやってやんぜ。)
「うぉぉぉりャぁぁぁあああ!!!!」
《鈴麗選手の猛ダッシュ。リーチ差を埋めるには有効な手だが果たして上手くいくのでしょーか!!!!アーッと。シャルロット選手の防御が硬い。拳をいなし、サーベルの雨で押し返される!!シャルロット選手の容赦ない攻撃が鈴麗選手の身体に痛々しい傷跡を刻んでいく勝機はあるのか》
(身体が重い。いや、身体だけじゃない心も。それに傷口にこの熱さは染みるぜ。体力が急激に削られる。どうしたらヤツに触れることができる。
どうすればッ!!)
「さぁ!!一気にカタをつけてしまいますわ。わたくしの目指す目標はセバスのみ」
サーベルの薙ぎ払いが加えられる。
傷口が増えていく。
ラインの上じゃどうあっても動きに制限がかかる。足も、重くなってきやがった。このままじゃ敗けてしまう。なにか突破口がないか考えろ考えろ考えろ考えろ。
だめだ。考えつかねえ!!
ふと、師匠の言葉が頭に浮かぶ。
ココが試練の時!めげないマン!d(*´ω`🎀)
あのジジィ何がめげないマンだよ、、、
このままじゃ身も心も燃え尽きちまう…ん??
「悪あがきはよした方が身の為ですわよ。コレで終わりにしますわ!!!!えッ!?」
《これは一体どーゆーことなのでしょーか!?鈴麗選手。シャドウボクシングとでもいわんばかりに左右フックを繰り出す。
気でも狂ってしまわれたのか!!!!
そんな距離では当たらない。
シャルロット選手も呆然と立ち尽くす。
会場のお客は抱腹絶倒。ですがなおも滑稽な踊りを止めようとはしません》
「ふんっふんっふんっふんっふんっ」
顔も熱がもってきた。苦しい、苦しい。
「オーホッホ。見苦しいですわ。まさしく猿ですわね…え、」
シャルロットの目がスカートへとうつる。
そうだ。拳が届かなければ拳意外を届かせればいい。ラインの上で闘わなければならなくても、何もストレートだけが攻撃の手段じゃあない。届かせるんだ拳を使って。
!!!!風圧を!!熱を!!!炎を!!!!
「きゃあぁぁぁ!!!!熱い!!!熱っアッつぃですわぁ」
《シャルロット選手がテンパっている。火を振り払うことに精一杯。サーベルを下ろしてしまっていいのか?いいのかぁ?場内の笑いも炎と共にシャルロット選手の奇抜な動き移る!!
》
「届けーッ」
ウチの拳が顎を捉える!!十分な手応え。
《シャルロット選手ダウーン。起き上がれるかワーン!ツー!!スリー…立てそうにありません。どうやらこれ以上の試合続行は不可能でしょう。》
《鈴麗選手の勝利です!!!!》
会場がどよめく。
「シャルロット。お前は文字通りの騎士だったよ。その証拠にウチの足は一回も狙わなかった。狙おうと思えばいくらでもその機会はあったハズ。ただ…相手にフェアを強いるのは間違ってるぜ。ウチはちょっと育ちが悪くてね。何が何でも勝たなきゃならないんだ。そんな奴らはごまんといるんだ。
」
「いいえ。わたくしの油断が生んだ敗けですわ。騎士であり、紳士であり続けるべきでした。それに汚い勝ち方ではなくってよ。フィールドを逆手に利用した貴女の勝ちですわ」
「ほっ、ほら!立てよ」手を差し伸ばす。
「え?」
「シャルロット…誤解して悪かったな。お前は試合前に闇討ちを狙うような卑怯者じゃねえ。闘いを通じてその一進一退の直上精神、フェアに則ることの大切さ伝わったぜ」
シャルロットの目に大粒の涙が溢れ出る。
「ありがとう。わたくしこそ、貴女を軽んじてしまっていたわ。わたくしの分まで勝ち残ってほしい」
「ああ…」ふと、ロンの事が頭をよぎった。
また嫌われるな、、、それでもウチは勝たなきゃならないんだ。小麗を救うためにも。
―鈴麗GALsBOUT―第二部 【完】
鈴麗GALsBOUT―RGB ラウンド2 天球儀ナグルファル!d(*´ω`🎀) @ZERO0312
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます