天と地の間で

挿花

第1話

??:「お前はこれでいいんだな?」

そんな言葉がふと浮かんだ。

そして目の前が真っ白になり、現実に引き戻された。


モブA:「おーいどこいくんだよー?」

??:「寄り道して買い物だよー」


そんなたわいもないどこにでもあるような日を送る、普通の高校生…智樹。

この日も友人の誘いを断り、晩御飯の材料を買いに、スーパーに行くのだった。


智樹:「今日は妹の好きなカレーライスにするか。」


智樹の妹は一貫の学校の中学生で足が悪く、歩くことができないでいるため朝と夕方に送り迎えをしている。

カレーの材料を迷わずに選んで買いそろえていく。


智樹:「そうそう、うどんとかも切らしていたな…買わないと。」


親も最近他界し、今は親切にしてくれる親の叔父と叔母の下で暮らしているが

実質は、二人で暮らしているのと大差ない。


智樹:「そろそろ妹の迎えの時間か、行かないとな。」


買い物を手早くすまし、レジを通りスーパーを後にした。


妹を迎えに行く途中にある道路から見える大きく空いた穴

まるで何かを引き込もうとしているかのように黒いその中身はぶきみでしょうがなかった。

そう…ここで親を亡くしたのである…正確には事故…?超常現象かなにかにあったのである。

なぜ助かって…親が犠牲になったのかも定かではない。

だがその時から妹の足が動かなくなり…僕自身もけがをした。

彼はそれを見るたびに、口を閉ざし無言で数十秒眺めた後、その場所を後にした。


??:「お兄ちゃん、いつもありがとうね!」


そう毎日日課のように言ってくる妹、表面的には元気に見えるが、内面的にはかなりきついだろう…

智樹:「あぁ、お兄ちゃんに任せておけって!」

それに気が付いているのを悟られないように、表面を繕うのも日課となってしまった。

そんなこんなで僕と妹は家の岐路につく、夕日に染まった街を見…ぽかっと空いた穴を視界に入れながら


??:「今日の晩御飯何ー?」

智樹:「今日はゆずはの大好きなカレーだぞー!」

ゆずは:「ほんと!?やったー!ありがとうおにいちゃん!」

ほほえましいくらい喜んでくれて、家に帰りつくと妹もカレーの支度を手伝ってくれた。


「いただきます!」

お互いに声を掛け合い食べ始めた。


そんな風に毎日、寂しさと悲しさに負けないようにお互いを支えあい、生きていた。


次の日も…またその次の日も…

同じように日常を過ごしていく。

何も変わらない…変わってほしくない…これ以上…そんな毎日を…

何かを失うことを恐れて…。


智樹:「このまま静かな毎日が遅れたらいいんだ…神様同化このまま…ってなにいってんだろうな…僕は…ははは」

淡い願いを窓から見える夜空に向かってなるべく小さな声で、

妹にこんなことを聞かれたら妹まで気が滅入ってしまう…

せっかく嘘でも強く生きようとしている妹を気遣って。


そんなことを考えていると、眠れなくてすっかりと朝になってしまっていた。

最近こんなことが続き、寝不足なのである。


学校への通学路、いつものように登校していると

いつものように、いい眺めの中にぽっかりと空いた穴が見えていた。

しかしその穴はいつもとは違ってまがまがしいくらい赤く…歪んで見えていた。

気のせいだと思い気にせず学校に向かった。


その日の、放課後にクラスの女子に体育館裏に呼び出されて

告白された…悪い気はしなかったが…自分にはそんな時間はないことが分かっていたので断ることにした。


智樹:「あまり…その…時間がないんだ…ごめんなさい…けど嬉しかったよ。」

モブB:「そうですか…大変なんですね…いろいろと…」


こんな風なことがあったのは初めてで少々あたふたしたが…決まった言葉を言うだけだったので苦労はしなかった。

そのあと少し体育館の裏から見える夕日を見ながら話していた。


モブB:「夕日が綺麗ですね…」

智樹:「そうですね…綺麗ですね…ん?」

オウム返しでもしているかのようなぎこちない会話をして

夕日を見ているとちょうどあの穴が目に入った。

朝よりはっきりと歪み赤くなっていることがわかり…目を凝らしてみていると

だんだんと穴が近づいてくるような感覚に陥った。


智樹:「な、なんだ!?」

近づいてくる穴の暗さに驚きながら腰を抜かしてしまった。


そう…その時、周りの時間が止まったかのように世界が静止し、いつの間にか彼女の声も聞こえなくなっていた。

何が起こっているのかわからない…困惑した智樹はいつの間にか、

体育館裏に倒れていた、そこにはさっきまでいた彼女の姿はなく…まったく状況が把握できないでいた。


智樹:「ここは体育館裏か?寝不足で倒れたのか?置いてけぼりとは悲しいな…」

記憶が定かではないが仮設立てていった。

智樹:「彼女が帰った後少しここに残った僕は…寝不足でが祟り倒れてしまっていたのでは…ないかな…」

彼女が自分を置いて先に帰ってしまったとはあまり考えたくはないがそれもあり得るかもしれないと考えながら

家絵の岐路についた。


なんら変わりのない道、学校…家に帰る道…ただ少し赤みかかっていたそれだけだ。

夕日のせいだなと思い足早に家に帰ることにした。

智樹:「今日は叔父が車で妹を迎えに行っているはずだから妹をまつ必要もないし。」

智樹:「あれ…?穴がないぞ?」

足早に帰る道ふと穴があった方を見るとすっかりなくなっている…。

智樹:「あんな穴がすぐに埋まったり消えたりするはずがないだろ…」


何かが違う…そう感じ取った僕は妹や叔父などが心配になり家に帰るのをさらに急いだ。

その途中耳に響くような叫びと何かがゆがむ音がした。


智樹:「この通りを曲がったとこからか?一体何なんだ?」


気になりながらも、その角を恐る恐る除くとそこには恐ろしい光景が広がっていた。


智樹:「なんで…なんで人間が鉄に変えられているんだよ!!」

その先に見えたのは、何かに囲まれて、鉄らしきものに変えられてしまっている人間だった。

確かに人間だった…そう見間違えたのかもしれない…

智樹:「そうだ…これは夢だ…何かおかしい…自分はおかしくなってしまったのだろうか…」

そんな風に現実から目を背けることで自制をするしかなかった。


そんな光景から逃げようとして走り出そうとした時、運が悪く足を絡ませてしまいこけてしまった。

智樹:「しまっ…いてぇ…」

その音で得体のしれない翼の生えたものに気づかれてしまい、追いかけてきた。


智樹:「……っ」

必死に逃げる、走っているといつの間にか自分の家についていた…これが帰巣本能かなにかなのかと思いながら

急いで中に入ろうと思いドアノブに手を掛け開けようとしたが、急に扉が重くなり開かなかった。


智樹:「扉が鉄に!?」

鉄に変わった扉はびくともせず開けれなかった。

智樹:「死ぬのか…俺もあんな風に…」

と敵が迫ってくる中扉にもたれかかっていたら中から

??:「死にたくなければ、右の花壇によけろ!」

そう声が聞こえ、反射的に右の花壇に飛び込んだ瞬間、爆音が鳴り響いた。

何が起きたのかもわからない…耳がずっときーんとして聞こえない状況が続いていた。


少しして背中を軽く叩かれ

??:「……て」

??:「……、立て。」

??:「ほら、立て。」

最初は何を言っているかわからなかったが次第に聞こえるようになって立ち上がった。

幸い少し体が痛むくらいでけがはしていないようだった。


そこにいたのは背丈がじぶんより少し小さい位の女の子だった。

??:「お前…よく生きていたな、はぐれものか?」

智樹:「はぐれもの?なんだそれは!?あれはなんだ!?君は誰だ!?ここ…」

と息の上がるくらいいろいろな言葉がのどをついて出て状況を把握するのに必死だった。

??:「落ち着け…まずはここをを離れて安全な場所に行こう、ここは危ない。」

その子に諭されるように落ち着きを取り戻し、深呼吸をして

智樹:「わかった…とりあえず安全な場所まで案内を頼む。」


??:「この近くにシェルターがあるからそこまでとりあえず行こうか。」

シェルターまでの道のりはそう長くなく、声を発することなく静かについていった。

その道中では、この世界で起きていることは現実ではない…そう逃避していた。


??:「着いたぞ…中に入れ。」

その言葉で一瞬にして現実に引き戻される。

恐る恐るシェルターの一室に入ると、そこには殺風景でいかにもシェルターという面構えな空間があった。


そしていきなり

??:「これを飲め…これを飲まないとろくに外を歩けない」

となにやら青い飲み物を手渡されてた。

智樹:「なんだこのいかにもっていう飲み物は…?」

??:「今はそんなことはいい…とりあえず飲め。」

そう強い口調で言われ…仕方なく飲むことにした。

そしてそれを一気に流し込む…。

智樹:「んっ…なにも味がしないぞ?…しかし体が…おも…なん」

それを飲み干したら体が徐々に動かなくなっていき…地面に倒れこんだ。


??:「最初はそんなものだろう…おとなしく寝ていろ。」

その言葉がかすかに聞こえた後、僕は意識を失った。

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天と地の間で 挿花 @yuzuha0123

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