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一人になって暫くしてから最初に出会った少女が料理を持って部屋にやってきた。
「調子はどうですか?」心配そうな目で尋ねられる。「まだ優れませんか?」
「いや」。俺は答えた。「お陰様でかなり良くなったよ。ありがとう」
少女は安心した様子を見せる。
「そういえば名乗ってなかったな」彼女に笑顔で伝える。「シリウス。元々は医者だった」
「シャーリーです!」可愛らしい笑顔返される。「私は十三歳でこの孤児院では一番年上なんです」
シャーリーの口調が砕ける。思えば彼女に笑顔を向けたのは初めてだった。あまり愛想が良くなかったので、緊張させてしまったのかもしれない。
「改めてよろしく。シャーリー」
「うん。よろしくね、シリウス」
シャーリーは手に持っていた料理を俺が寝ているベッドに備え付けられている机に置き、俺に孤児院について話した。
「あのね、この孤児院はボイレン騎士教会の中にあるの。それでね、私が水汲みに行っている時にシリウスを見つけたの。覚えてる?」
「あぁ、覚えてるよ、シャーリー。あの時はありがとう。」
なるべく愛想よく話してみる。
「そんな愛想よく話そうなんてしなくていいですよ。ただ心配で口調が固くなっちゃっただけだから。さっきの話、此処は教会の中にあるって言ったよね? それでね、この教会で一番偉い人が体調が良くなったら会いたいって言ってたの。だから、行けそうだったら私に言ってね。私と先生が面倒見るように言われているんだ、助けたんだから最後まで面倒見なさいって。」
彼女は楽しげに話をする、もしかしたら孤児院の関係者以外とはあまり顔を合わせる機会がないのかもしれない。
「わかった」ふと、気になったことを聞いてみた。「ところで、先生っていうのは誰なんだ?」
「先生っていうのはね、トルスコムのことだよ。私や孤児院のみんなに料理を教えてくれるから先生って呼んでるんだ。ちなみに、今シリウスが食べてる料理も先生が作ったんだよ」
「なるほど」あの男、胡散臭い喋り方だったがいいところもあるらしい。「それじゃあ、その一番偉いっていう人に会いに行こう」
そう言うと俺は最後のパンを口に入れ飲み込んだ。料理は教会ということもあり、質素なものだったが、シンプルで優しい味付けだったので美味しくいただくことができた。
「ご馳走さまでした」
―――
シャーリーの案内で【隊長室】と書かれた部屋の前にやってきた。道中シャーリーから孤児院と教会の中についても案内された。その御蔭で大体の構造が把握できた。しかし、気になったのは騎士教会というだけあって教会ですれ違ったのは教会付きと名乗ってきた男がほとんどだった。
「それじゃあねシリウス、私はもう床に就かなきゃいけないから。また明日」
「あぁ、また明日」
シャーリーは返事を聞くと手をヒラヒラとさせながら来た道を戻っていった。
‥‥扉に向き直る。一体どんな人物がこの先にいるのだろうか。そんな事を考えながら俺は扉をノックし、扉を開けた。
そこには四十~五十代程の男が椅子に腰掛けていた。そして、その隣にはトルスコムが座っていた。
男はゆっくりと顔をこちらに向け口を開ける。
「始めましてシリウス君……一応、トルスコムから話は聞いている。君も彼と同じ境遇の人間だとね。おっと、座ってもらって結構だよ」そう言って着席を促される。「私の名はグレウチャーヌ。グレウチャーヌ・ボイレンだ。グレウチャーヌ卿と呼んでくれ給え」
そう言って握手を求めてくる。
「お初にお目にかかります。グレウチャーヌ卿。シリウスと申します」そう言って握手を返した。「質問をしてもよろしいでしょうか?」
「もちろんだともシリウス君。そのために君を呼んだのだ、何でも聞いてくれ」彼はカイゼル髭を撫でながら微笑んだ。
「では‥‥一体何が起きて私は此処にいるのでしょうか」
「フム」彼は穏やかに答える。「はっきり言って解らない。すべてが謎なのだ。トルスコムが来てから三年間、様々な調査をしたが何も手がかりも掴めてはおらん。力になれなくてすまないね」
「いえ、大丈夫です」水を煽って切り替える。「それではこの教会について詳しく教えていただきたいです」
「そうだな、教会というよりもこの国についても話したほうが良さそうだな」グレウチャーヌはペンを取り出し話し始めた。「まず今我々がいるのはリビィエール王国、その西端に位置する街で更に西には広大な森が広がっている。この森は【黒い森】や【悪魔の実験場】と呼ばれていて様々な怪奇現象が起きている、先程の君たちに何が起きたか解らないと言ったが原因はこの森にある可能性が高いと考え調査を続けている」
それから俺達のは様々な事を話した。国、社会、この世界の一般常識、それ以外にも魔法などといったもとに世界にはなかった物についても話した。
かなりの時間が経ち、グレウチャーヌが懐中時計を確認し言った。
「もう三、四時間も話し込んでしまいましたな。明日に備え休んだほうが良いでしょう。またいつかこの続きを話しましょう」
「えぇ、グレウチャーヌ卿、それではまたいつか」
「うむ。楽しみにしている」
そう言って俺たちは自分の部屋に戻ったのだった。
colors ユティエ @Malebolge
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