第6話 触手
「普通に想像できる……お前は喋っていいキャラクターじゃないのよ」
健康的な白い歯を見せ、唾を飛ばし喋ってくる細長い触手。
エロゲですら、この類――うねうねとしたピンクは口数を自粛し、仕事を全うするのに。目の前の奴は粘膜を吐き散らかし、地面をまさぐるように十本以上のピンクは砂埃を発生させている。
……うん、普通に気持ち悪い。
「お主……もしかして、ツンデレという奴か?」
……うん、なぜこうなる。
「いや、違います。あの……」
「お主……匂いがするぞ。ワシの好きなニオイじゃ……のぉ」
粘膜か、唾液か、分からないけれど透明な液体が奴の口から地面にしたたり落ちて来て。
……まるで、ライオンの捕食シーンだな。
この展開は異世界へ来た時から懸念していた事象で、もちろん注意深く動いていたいし、頭の隅に置いていた。だけど人間、いざ最悪が発生すると頭が真っ白になる生き物で。
「ふぃげぇて!」
「思い出したのぉ……童貞のニオイ……」
「アッ……」
カーマの叫びも虚しく、俺は頭から暗闇とヌルヌルの触手に呑み込まれたが。
しかし――
「賢者タイム賢者タイム。数分後にバッテリー切れによりスリープモードへ移行します。なお、充電の際には製子を注入してください」
――完全に触手の動きは止まりかけていた。
「あちゃ~充電切れ~。せっかく童貞を捕食できるチャンスだったのに……あーあ、またショタの製子を集めないとなー。でも面倒くさいし」
「何が……起こって……」
中が真っ暗でヌルヌルなせいか、外部の状況が分からない。
……口を開けば。
触手の口を両手で掴み、そのまま上に。
外界に降り注ぐ太陽が見え、視界がクリアになれば。
目の前には――
「あーそうだ、君……お願いなんだけどさ、触手ロボの起動に必要なエネルギー。ショタの製子……一緒に集めてくれないかな?」
――少女が立っていた。
真っ白な白衣に身を包み、ツインテールかつ緑髪の少女がコチラを覗いていた。
黄金の瞳がコチラを見つめていた。
下ネタで異世界を攻略して何が悪い! 佐藤夜空 @michi78945
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