初春の章(2019)
竹山の
麓に隠れし
大木の
花咲き乱れ
姿現す
解説)竹が生い茂る丘の麓に、それまで竹林で隠れていて目立たなかったが、桜の花が咲き乱れたことでその大きな姿が現れた
夜も
古き思ひに
誘われて
君に幸あれ
いざ、桜坂
解説)夜も更けて、かつての思い出が蘇ってきて、ここに来ました。今は君の幸せを祈っています。失恋の悲しい思い出は捨てて、いい思い出だけを思い出し、桜坂を登って行こう
平成を
偲んで匂う
散り桜
神代の継ぎを
讃え
解説)平成の世が終わってしまう今年に、桜はそれを偲んで咲茂り、見事な散り際を見せようとしている。しかし、それは新たなる天皇の即位を喜ぶために咲き誇っているのだ。
帰り路は
回りて戻り
いと悔し
常道行けば
心安らぐ
今回はお遊びです。歌詞を短歌にしてみました。元ネタは敢えて書きません。ヒントは私の好きな「坂系」です。
汗ばみて
光る君
苦言受けども
厭おしきけれ
解説)いつも汗を流すほど一生懸命仕事をして、仕事もできて美しい顔は女の子達の憧れになっているが、私に対してはいつもキツイことを言う。そんな貴方が嫌いだけど、愛おしい。
花宴
騒ぎ乱れる
都園
影に忍は
寒椿かな
解説)桜が咲き誇る公園では花見が行われ、桜を愛でるのも忘れて人々は騒ぎ立てているが、その傍らでひっそり咲いている寒椿の方が美しく思える。
紫雲立ち
暮を彩る
茜富士
足元見れば
可愛し菫
紫色に色づく雲の下に夕日に染まった真っ赤な富士山が綺麗な彩りと壮大な光景を見せていて、うっとりしたが、ふと足元を見てみると、可憐な紫色の菫が咲いていた。
秀つ輝く
見つつ覚えば
はや、あさぼらけ
解説)夜が明けて、白みつつある東の空に金星が一際目立って輝いていた。その輝きに見惚れていたら、何時の間にか東の空が白く明るくなっていた。
夜桜に
息まだ白き
卯の花見
空から去りぬ
天狼故か
解説)春だというのにまだ寒く、息が白くなるくらいで、四月の花見は辛いくらいだが、それは空にまだ残って見える(冬の星である)シリウスがまだ見えるせいなのか?
道行けば
桜目立たぬ
公園に
心地よく降る
連雀の声(字余り説あり)
解説)道を歩いていると、桜が目立たない公園に来ると、頭上から雀の群れがさえずる声が降り注いできて、これも又、春の兆しなのだなぁ、と思った
桜散り
森にせせらぐ
丸子川
忍び流れば
解説)丸子川とは以前詠んだ歌にある「等々力渓谷」を流れる小川で、かつては大田区の六郷の水田に水を供給する用水路だったようです。
現在は六郷までは流れず、途中で多摩川に合流しています。
古くからある歴史的な川ですが、「丸子橋」、「新丸子」、「下丸子」等、名前は残っていますが、その名のもとになっている丸子川を見たことがある人は少ないと思います。現在、丸子川沿いにある森と呼べるものは等々力渓谷だけです。それを念頭にして下さい。
寝待ちても
春風未だ
桜吹雪も
願うは日方
解説)長いこと待っても、春風はまだ肌寒いばかりだ。桜も散る季節になり、桜もせめて風だけでも西南からの暖かい風が吹いて欲しいと望んでいるようだ。
吊るされ黙す
花衣(はなごろも)
軒垂る雫
春の雨かな
解説)ハンガーに掛かったままで着られることもない春用の服は屋根から滴る春の雨が滴っているようだ。
春の雪
春来るまじと
思へども
知らず伸びゆく
新緑の木々
解説)晩春に雪が降り、もう春は来ないのかと思えるが、この寒さに気づかないように新緑の枝葉が伸びている。
山上の
白壁光る
春の朝
輝く黄金に
白藍の空
解説)山(丘)の上の家の壁に朝日が黄金色に輝き、水色の空と美しいコントラストをなしている。
野に咲き誇る
菫色
天こそ呼ぶぞ
解説)ある晴れた穏やかな春の午後、野には菫が咲き誇っていた。その野原の上から、春の一時期だけに鳴く雲雀が美しい声で鳴いていた
ひさかたの
天つ広がる
流れ雲
豊かなるかや
侘びしなるかや
解説)晴れた空には地平線のこちらからあちらまで、雲が速く流れているが、この雲は豊穣の天となるのか、それとも侘びしい雨になるのか。
窓の外
忍び静かに
降る雨は
天つ住む汝
情けの雨か
私は物心付く前から、空と話していたそうです。空は今でも私の親友です。
千早振る
青空隠す
深き杜
騒ぐ木々の葉
解説)青空を隠すほど高い木々が生い茂る神社がある丘を登っていると、高い木々に遮られて暗闇と静寂に包まれているが、そのはるか遠くに木々の高みを風が揺すっている音が遠く聞こえる。
今日の一句は、短歌ではありません。
和歌の部類に入るのでしょうか?
試験的な試みです。
窓柵に
歩み寄り
隣りに座る
我が君の
心の如く
白く麗し
解説)窓枠の柵にもたれて夜空を見上げると、月が春の空気に反射して白く朧げな光輪を纏っていて美しかった。丁度その時、大好きな彼女が近づいてきて、自分の隣に座り、自分と同じように月を見たが、その姿が朧月のように白く美しかった。
天高く
青に流るる
白き雲
神も色へぬ
広き国かな
解説)青空が高く広ろがり、青い空に真っ白な雲が流れていて美しい。この美しい色は神でも作れないだろう(神自身が住む国だから)。
重き
遥か彼方に
疾き雲
地を這い惑い
誰が為に泣く
湿気の多い南風が吹いていて、遥か彼方の地上近くに雨雲が速く流れていく。地を這うようにそそくさと流れる雨雲よ。君は誰のために泣いているのか?
欄干に
滴り落ちる
春の雨
涙の訳を
我に教えよ
解説)春になったのにどんよりした雲が広がり、しとしとと雨が降っている。(自宅や会社、橋等の)欄干にその春の雨が降りかかり、涙のような雫を落としている。空よ、どうして泣いているのか、私に教えてくれませんか?
雲を掃き
天つ
つくよみ登り
春空おかし
解説)春雨を降らす灰色の雲が空を覆っていたが、空がその雲を吹き払い、水色の空(甕覗)が広がった。更に月が天空に登り、その光景は興味深い。
筍を
求めて分け入る
藪の中
我があなぐは
若芽か君か
思い出しました。
解説)筍を採ろうとして、藪の中に分け入ったが、枯れ葉や土にまみれてなかなか見つからない。筍を探して必死になっている自分は、果たして筍を探しているのだろうか、それともいなくなった君だろうか?
見空集 相生薫 @kaz19
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。見空集の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
徒然頭/相生薫
★17 エッセイ・ノンフィクション 連載中 33話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます