瓶詰めの何か

 いろいろ行き詰まったり後悔したりと、なんだか大変な毎日を過ごす人の独白。
 いや独白というよりはほとんど愚痴というか、もっと直接的な何かです。メタというのか、文章を書いている主体が直接読み手に問いかけてくるようなところがあって(紹介文からも明らかですけど)、つまりなかなか風変わりな形式の作品ではないかと思います。捻っているというか搦手っぽいというか。
 内容はもう、だいぶどろっとしてます。ひたすら後ろ向きでただただ鬱々としていて、読んでいてじわじわ胃に来る威力があるのに、書きっぷりがいいおかげでぐいぐい読まされてしまう。おかげさまでだいぶダメージが来たというか、ギブアップさせてくれないという意味ではとても意地悪な作品だと思います。
 瓶がゆらゆらと確かに流れていったところが好きです。そこまでの文章は言ってみれば回想、これまでの来し方を振り返ったものに過ぎなくて、だからようやく時制が今に辿り着いた上での、要はやっと前に進んだ最初の一歩。といっても主人公の踏み出した歩みではなく、また勝手に流れて視界から消えただけなんですけど、それでも。どぶのくせにずいぶんスムーズに流れていくところも好きです。やるじゃんどぶ。
 読みやすく、また節回しの美しい文章が光る作品でした。