武蔵野文学賞の実態

竹槍

武蔵野文学賞の実態

 少し前、私は角川武蔵野文学賞なるコンテストが開催されている事を知った。


 応募要項を読んでみると、武蔵野にゆかりのある小説を募集するものらしい。



 武蔵野生まれ武蔵野育ちの私は、それを見て幾ばくかの愛郷心と相当量の自己顕示欲を刺激され、何か一本書いて応募してみようと思い立った。


 応募要項によれば字数制限は800字から4000字とのことで、この程度の長さであれば遅筆な私でも応募終了までに執筆を終える事が出来るだろうと思った。


 そして作品の構想を組みながら、ライバル達の作品を見ておこうと応募作品一覧を覗いてみた。

 数秒とせずに、私の目は皿のようになった。



 なぜ異世界ファンタジーが散見されるのだろうか?


 どうやら私の知らない間に武蔵野は異世界になったらしい。



 よくよく見てみると異世界ファンタジーでなくとも数十話も連載が続いている作品もあった。


 私は最低でも一話千字程度は書かなければ話がぶつ切りになって読みにくくなると思っているのだが、それは私の的外れな私見に過ぎないのだろうか?



 試しに、執筆当時の応募作品642作品の中を800字から4000字という条件で絞り込んだ結果、表示されたのは399作品だった。


 かくして、応募作品の3分の1以上が応募要項の字数制限すら満たしていないという衝撃の事実が明らかとなった。


 念の為言っておくが、ジャンルによる制限は一切かけていない。全作品を読んでいない以上、武蔵野がきちんと出てくる異世界ファンタジーがないとは言い切れない為だ。よって、応募要項を遵守しているかどうかが一目でわかる字数制限のみをかけたのだ。



 弾かれた作品の作者は応募要項を読んでいないのだろうか? それとも読んだ上で参加しているのだろうか? だとしたら何の為に?



 彼らの意図は私には知る由もないが、随所で語られているネット小説界隈の闇を垣間見た、そんな気がした。



 願わくば健全なコンテストの実施が成されん事を。

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