第23話 美少女からのご招待!
少しずつ投稿していけそう、と言って約一年投稿しない人がいるらしい。
……申し訳ありませんでした! お久しぶりです!
最後にお知らせがあるので、読んでいただけると幸いです!
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今日暇だったらうちに来ない?
そんな素敵台詞を愛する人から告げられてテンションの上がらない男はいないだろう。もれなく俺のテンションも急上昇。
ルンルン気分で電車に飛び乗り胡桃さん宅へとたどり着く。
インターホンを押すと胡桃さんはすぐに現れた。
「早かったわね」
「胡桃さんに呼ばれたらたとえ火の中水の中、中国の秘境だろうと駆けつけるよ」
「そ、そこまでする必要はないんだけど……とりあえず上がって」
お邪魔します、と言って中に入る。
すると、リビングにはスーツケースがドンと置かれていた。
周囲にはお洋服が散乱している。修学旅行に持っていくものだろう。
二泊三日の修学旅行であるが、初日以外は私服での行動となっていた。
つまり、胡桃さんと私服で旅行ということ。
「新婚旅行の準備は順調?」
「し、新婚旅行じゃないから!」
「ちなみにどこに行きたい?」
「どこって……ハワイとか?」
ぼそっと呟きちらりとガラステーブルに置かれている雑誌に目を向ける胡桃さん。
なんだろうと近づいてみると、旅行雑誌であった。しかもハワイ。
「こ、これはっ」
慌てた様子で雑誌をひったくり、背中に隠してしまう胡桃さん。
「それは?」
「な、何でもないから」
「何でもないの?」
「……」
「そういえば行き先を聞いたとき、やけにすんなり答えていたような……」
名探偵を気取って顎に手を当てチラッと様子をうかがう。
眼鏡をかけていたらキラッと輝いていただろう。
「……っうぐ……わ、悪い!? ち、ちょっと考えてみただけだから! 別に深い意味とかはないから!」
「胡桃さん……っ!」
「だから深い意味はないって言ってるでしょ!?」
「そんな照れなくても……全部分かってるから」
「……っ、ば、ばか!」
告げると胡桃さんは、顔を真っ赤にして踵を返しキッチンの方へと引っ込んで行ってしまった。
☆
かちゃかちゃとキッチンから音が聞こえてくる。
おそらく飲み物を用意してくれているのだろう。
馬鹿と罵倒しつつ用意してくれるところに愛を感じて仕方が無い。
感極まりつつも、ふと、俺は部屋を見渡して気付いた。
以前にここを訪れた時よりも、物が増えている。
前までは殺風景で、生活感のない——それこそ生活する気のない部屋に思えるような物寂しい雰囲気を醸し出していたが、今は違う。
窓際には観葉植物が飾られ、テーブルの隅にもかわいらしい小物類が並んでいる。大型テレビの横には、以前俺の家で霞と一緒にプレイした『マリモカート』が鎮座していた。
ハマったのだろうか、それとも次に向けて練習してくれているのだろうか。
……どっちにしろ、無性に嬉しく感じた。
そんなわけで、以前訪れた際はモダンでお洒落と感じたが、本日は何というか、女子の家という感じがして緊張も一入だ。
そう言えば、胡桃さんは何の用があったのだろうか。
話があるんだけど、と呼び出されたがいまだにその話を聞いていない。
新婚旅行に関するあれこれならこれ以上嬉しいことはないだろうが、きっと違うだろうし。
何て考えていると胡桃さんが戻って来る。
「はい」
「どうも」
テーブルにコーヒーとココアを置くと、隣に座る胡桃さん。
さっきはぷんすかとキッチンに向かっていたのに、距離はかなり近かった。
室内は暖房が点けられおり、暖かい。そのためだろうか、本日の胡桃さんの格好はいつにもましてラフな物である。
サイズの大きなシャツを一枚着て、下は黒のスキニー。一見して色気とかオシャレとかそう言うのはあまり感じられない服装である。が、しかしそうではない。
「……おいし」
胡桃さんはココアをちびっと飲んで、マグカップをテーブルに置く。
その際、僅かに前傾姿勢となりサイズが大きいゆえにたるんだ首元から、見てはいけないものが見えそうになる。
これは誘っているのか、と顔を見てみる。
「な、なに?」
「……」
「な、何か顔についてる?」
ぺたぺたと触ったり、スマホのカメラ機能を使って確認する胡桃さん。可愛い。
しかし、どうやらこれは素のようだ。
「胡桃さん」
「なによ、さっきから」
「絶対に俺の前以外では、その恰好をしないで」
「えっと……?」
「約束して欲しい」
いつになく真剣にお伝えすると、胡桃さんは「近い」と呟いて少し離れる。
おっとこれは失礼。熱心になりすぎたあまり、顔を近づけすぎていた。
「その、なんでしないで欲しいのかはよくわかんないけど……別に、あんたの前以外じゃこんな格好しないし……ていうか、こんなに気は抜かないし……」
「そ、それってつまり、俺は胡桃さんにとって安心できる存在になれてるってこと!?」
それは俺にとって、ある意味『好き』や『結婚しよ?』や『子供が欲しいな』なんて言われるより嬉しい言葉なわけで。
胡桃さんは一瞬キョトンとしてから、少し困惑した様子でこくりと頷いた。
「ま、まぁ、そうだけど」
「……そ、そっか」
なんだか安心して、——気付く。胡桃さんの顔が目と鼻の先にあるということに。
どうやら興奮のあまりソファーに胡桃さんを押し倒す形になっていたようである。
勢いでシャツがめくれ、可愛いへそがチラリズム。
目線を上げると、こちらを見つめる胡桃さんと目が合った。
「へ、変態」
「い、いや、だって見ちゃうって、これは」
「……」
「……」
沈黙が場を支配する。
胡桃さんは唇を震わせながら俺を見つめてくる。
若干汗ばんだ首筋、乱れた髪、赤らんだ頬、潤んだ瞳。
彼女からもたらされる情報という情報がどうしようもなく俺の理性を刺激してきて。
彼女を傷つけないように、思わず襲いたくなりそうになる衝動を必死に抑えて起き上がろうとして——。
「……ん」
腕の下の胡桃さんが瞳をきゅっと閉じて、顎を上げた。
頬は変わらず真っ赤で、緊張か恥ずかしさか、あるいはその両方か。瞑られた眼の端からは涙が出ている。
「いい?」
聞くも返事はない。代わりに胡桃さんは僅かに首肯。
それを見届けた瞬間、彼女の唇を奪う。
以前は酔っぱらっている時だった。
キスはそれ以来——というか、思い返してみれば素面の時にキスをすることは初めてである。柔らかい感触は、脳を溶かしそうなほどに心地よく、いつまでもこうしていたいと思ってしまうほどだ。
手を胡桃さんの肩に置くと、僅かに震えた。
しかし嫌がるそぶりはなく、むしろ胡桃さんから唇を押し付けてきた。
「んっ……ふぅ、んっ」
甘い声が聞こえる。
そして、胡桃さんの舌が入ってきて——ピー! ピー! ピー!
「「……っ!?」」
けたたましい音がキッチンから鳴り響いた。
驚いてキスを止め、胡桃さんは「ご、ごめん」と口元を隠しながら告げて、キッチンへと向かう。
俺もバクバクと激しい鼓動を刻む心臓を落ち着けてからキッチンへ。果たして、この激しい鼓動は興奮なのか緊張なのか……たぶんアラームに対するびっくりだろうな。
「どうしたの?」
「いや、その……なんていうか」
キッチンに到着すると、そこにはオーブンレンジから鉄板を取り出している胡桃さんの姿が。鉄板の上には若干焦げたクッキーが載っている。
もしかして本日の要件とはこれの事だったのだろうか。
だとすれば非常に嬉しいが一つ疑問が。
「その、今日来てもらったのはこれを食べてもらいたくって……」
「それはすごく嬉しい提案なんだけど……明後日から修学旅行だよ?」
なかなか旅行を目前にクッキーを焼いて彼氏を呼ぶ人は少ないのではないだろうか。なんて思っていると、胡桃さんはバツが悪そうに頬を掻いた。
「その、テスト前って、掃除が楽しくなったりしない?」
「なるね」
「そう、その、そんな感じで、修学旅行の準備で服どれにしよう、って考えてたら、何だか料理したくなって」
「……なるほど」
案外胡桃さんは面倒なことを後に後にしてしまうタイプなのかもしれない。特に自分の事となればなおさら。胡桃さんの意外な一面を知ってしまった。
「って、焦げちゃったね。ごめん」
「いいよ、食べよう」
「べ、別に無理しなくてもいいんだけど?」
「無理じゃないよ」
俺はクッキーを皿に移して、テーブルの方へと持っていく。そしてテレビの横にあったゲーム機を起動しつつ、遅れてやってきた胡桃さんに告げた。
「ただ、クッキー食べて胡桃さんとゲームがしたいって、心の底から思ってるだけ」
「……ばか」
結局その後はそういう雰囲気になることもなく、普通にゲームをして過ごした。
☆
そうして、翌日の日曜日。
荷物の最終チェックを終えた俺は、寝坊しないように早めにベッドに入る。
霞に「小学生じゃないんだから」と馬鹿にされたが仕方がない。だって胡桃さんとの旅行である。
正直、小学生の頃の遠足よりわくわくしている自信がある。
何はともあれ明日から修学旅行。
大いに楽しみたいものである。
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実はこの度、本作の書籍化が決定いたしました。
詳しくは、近況ノートにまとめていますので、ご一読いただけると幸いです!
それと書籍化に伴いWEB版のタイトルが変更となります。
【自殺しようとしている美少女に『セックスしよう!』と提案してみた。】
↓
【飛び降りる直前の同級生に『セックスしよう!』と提案してみた。】
書籍ではさらに『セックス』が『×××』と伏字となっております。
混乱を招いて申し訳ありません。詳しくは近況ノートにて。
飛び降りる直前の同級生に『×××しよう!』と提案してみた。 赤月ヤモリ @kuropen
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