受け皿 短編・詩集
篠原 鈴音
ほうじ茶(短編)
勢いが殺されぬまま急須へと飛び込んだ熱湯は、くるりくるりと黒い茶葉を踊らせた。蓋を被せれば湯は徐々に透き通った、鮮やかな茶色へと染まっていく。
濃いめの麦茶ほどに色づいたあたりで、それを湯のみへと静かに注いだ。ふわり、炒られた茶葉が、湯気とともに香ばしい匂いを立ち昇らせる。
そうして、ひとくち。
緑茶は渋味をも楽しむものだが、ほうじ茶…焙じた茶葉は渋味が飛ぶのだ。
口の中に癖のない甘みが広がる。例えるなら麦茶にある仄かな甘さ、あれを抽出したような自然な甘みだった。
ごくりごくりと喉を鳴らし、湯のみを置く。注がれたほうじ茶は空になっていた。
「ふう、ごちそうさま」
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