機械仕掛けの神としてのゴリラ

 幼い妖狐が人間の子供に化け、幼児を亡くした老婆と共に生活するお話。
 和風ファンタジーです。童話や昔話にも似たわかりやすくもしっかりとしたストーリーを、児童文学あるいはライトノベル/ライト文芸のような個性的なキャラクターの魅力で彩り、その上で主題の部分をきっちり掘り下げてみせる、優しいライトファンタジーのお手本のような物語でした。
 そう——そうなるはず、だったんだ……。
 やけくそ感あふれる章題でもう笑いました。どうした六話目? いやどうしたのかははっきり書いてあるのですけど。そうか……どうかしてしまったんだな……可哀想に……(そっと布をかぶせる)。
 いろいろと事情があってこの形にならざるを得なかったようで、実際「side-G」ではないバリアントも同時に発表されているので、このお話の本当の姿を見たい人はそちらを読むといいと思います(自分もこれから読んできます)。
 第六話の、章題ですでに大変なことになっちゃってるのに、でも本文は普通に始まっているところが好きです。というか、震えます。「いつくるの、ねえゴリラどこからくるの」と怯えながら読み進めることの恐怖。ただの予告ではなく、予告そのものにより確約された破滅。どうやっても転げ落ちるしかない奈落の、その姿がいつまでも見えないこと。メタ構造の罠を利用した、儚くも壮絶なホラー作品でした。

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