一目惚れからノータイムでストーカー化する純情少年の軌跡

 ある日クラスメイトの女子に一目惚れしてしまった男子高校生が、一瞬でストーカー化した挙げ句どんどんエスカレートして大変なことになっていくお話。
 ジャンルは恋愛となっていますが(そして確かに恋愛以外の何物でもないので大変説得力があるのですが)、でも普通にホラーでもなんの問題もないんじゃないかってくらいものすごいです。迫力が。いや実際序盤はまだそんなでもないというか、やってることは明らかにストーカーなんですがでも当人の思考が妙に冷静というか、暴走しているのは行動だけで意識はしっかりしているような、その感覚がなんとも奇妙で癖になります。
 この主人公、直接アプローチしないのは「自分が彼女の人生に関わることで彼女の価値を下げたくない」という理由で、つまり自己評価がものすごく低いように見えるのですけど、でも同時にいらんところでポジティブなのが面白いです。
 というのもこの彼、友人の軽口により自分がストーカーであると自覚した瞬間、一切の迷いなく「だからなんだ」と受け入れてしまうんです。それ以降は自分でもそのつもりでストーキングしているというか、もうほとんど居直り強盗みたいな状態。そも片思いって苦しいものだと思うんですけど、でも彼にはまるでそんなそぶりがありません。ただ己の道を突き進むのみ。すごい。これが愛の力なのか、いやどう考えてもアウトなんですけど、でもこの前向きさは一周回って清々しいです。なんだか応援したくなるというか(感覚が麻痺しつつある)。
 とまあ、その辺もいろいろ諸々含めて、すべてが収束する物語の幕引き。一体どういう結末が待ち受けているのかは、ぜひその目で直接確認してみてください。
 淡々とした語り口の冷静さと、やっていることの暴走具合のギャップが楽しい、勢いのある青春恋愛犯罪劇でした。