太陽の照らす、どこまでも
はじめ
第1話 離
昔、球、一つ。
世界はその球に集約していた。
集約しているといえ、ただ概念に近い何かがあるのみ。
しかし、幾ばくかの時を経て、二つの自我が生まれた。
一方は、善の神アクーナ・マズダ
片方は、悪の神アーキマン
自我を持つことで、二つは次第に対立していった。
二つの存在のみでせめぎ合っていても埒が開かないと感じたアクーナ・マズダは、万物を作り上げた。
自らに似た清き心を吹き込みつつ、数多の命を生んだ。
動物に限らず、植物までも生み出した。
アクーナ・マズダの生み出した全ては、形こそアクーナ・マズダに似つかないものの、それに倣って清い心を持っていたと言う。
劣勢に陥ったアーキマンは、アクーナ・マズダの生み出したものを模倣した。
が、欠陥品であった。
確かに、それらの姿形は、アクーナ・マズダの生み出したものと等しいものの、アーキマンと同じような邪悪な心を持ったものであった。
しかし、善なるものが憎く、滅ぼしてしまいたい、と言う点ではアーキマンと、アーキマンの作り出したものは、利害が一致していた。
よって、善の神と悪の神との間で最終決戦が発生した。
次第に善の神が優勢となってきたが。
しかし、戦争の過負荷に耐えるには、球は小さすぎた。
やがて。
球に亀裂が走り、爆発した。
咄嗟に、善の神はその爆発から守るように悪の神を爆発から遮った。
「……何してんだ、お前。俺を守ってどうする。そんなことに、俺は感化されたりしないが」
この頃には、善の神も悪の神も言葉を獲得していた。
「生きとし生きるものには全て、我の庇護あり。元を同じくするならば、貴様にも清き心の一片でもあろう」
「はっ、大層なこった。まあ━━━━━」
「━━━━見逃さないけどな」
そうして、こちらに向いているアクーナ・マズダの背を刺した。
「ギャハハハハハハ!致命傷だなあ!」
「………ぐっ、貴様………!」
こうなってしまっては後の祭り。
爆発の余韻もついにはおさまった。
とはいえ、形勢逆転である。
「長いこと戦ってきたんだ、お前のことは手に取るようにわかるぜ?いかに神といえど、そろそろ限界だろ!?」
「残念だなあ!お前とはもっと長く戦えると思ってたが、ここらで退場とはなあ!」
「安心しろ、これからの世界は俺がしっかり面倒見てやるからよお!」
「好きには………させん………!」
「………まだ喋れるとはな。驚いたぜ。………だが、限界だろ」
「…………私は、死なん!全てが善の心を持つまでは!」
「その消えかかった体でどうすんだよ。お前が消えても、俺は残るぜ?なんてったって、神だからな、俺は。永遠に等しい命がある。」
「………私が消えるのなら、私の子孫を残そう。たとえ私が消えようと、私の意思は消えん!」
「ははっ!なら、俺は永遠にこの世界に君臨してやるけどなあ!」
「………そうは、させるか━━━━━━」
そこまで言って、善の神は最後の力を振り絞り悪の神を攻撃した。
そして、それは悪の神に命中した。
「なっ、ん、ええ!?なにしやがった、こんの死に損ないがああああああああ!!!!!」
善の神の放った黄金の炎は、瞬く間に悪の神を滅却するように燃え盛っていく。
「くそが!くそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそがくそが、くっそがああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!」
「道連れなんてさせるかよ…………!俺は永遠だぞ!?俺は善の神とは違う!俺は生きるんだ!永遠にーーーーー!!!!!!」
そこまで言うと、アーキマンは自らを爆発、四散させた。
「ははは、どうよ。この世界に俺を拡散してやったぜ。その老い先短い命で、俺を完全に滅ぼすなんて無理だろ。…………俺の勝ちだな」
「…………それはどうかな」
声を知覚したアーキマンは、先ほどまでアクーナ・マズダがいた場所を見た。
が、そこにはなにもいなかった。
(残念ながら、私の命は燃え尽きたようだ。しかし、お前の手が届かない地域を作らせてもらった。いかにお前といえど、そのボロボロの状態では手出しできまい。そして、私の子孫がいつか、お前を打ち倒すであろう。その時まで待っているが良い、アーキマン)
「はっ!………あばよ、お人好し」
そうして、アクーナ・マズダは思念体となり実体は消えていった。
第一次正邪闘争の終幕である。
太陽の照らす、どこまでも はじめ @abab
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