カンパニュラ

御手洗

彼女はベランダに佇んでいた。


私は固まってしまい思うように体が動かない。この後何が起こるかが手に取るようにわかるからだ。手先が震え、声はうまく出せない。それでも何か話しかけなければ。私は自分を奮い立たせ彼女に声をかける。


「ここの教室、あまり人が来ないからいいよね」


彼女は静かに振り返る。

色白な肌に凛とした漆黒の瞳、透き通るような髪の毛。宵に染まりカンパニュラの様な色になっている。

___________綺麗。

このままずっと眺めていたいと思った。でもそんなことをしている暇はない。


「そうだね。それに風もいっぱい通るし気持ちいい。」


確かに、と言いながら教室に入る。緊張して震えているのがバレないように、わざとスキップをしながら入った。私の動きはぎこちないだろうか。笑顔はひきつってないだろうか。ひやひやする。


「初めて来たけど、とてもいいね。これからも来ようかな。」


「まあこれから受験も始まるから、さすがにいつも来れる訳じゃないけどねw」


沈黙が続いた。どう話せばいいかわからなかった。そんな私に対し、彼女は窓の外の風景を楽しんでいた。



「……そろそろお別れしなきゃ。」


小さな声だけど、確かにそう呟いた。


「え?なんの話?」


途端、彼女はカンパニュラに包まれた。短い髪の毛は風にさらわれ四方に暴れだす。そんな中耳から光って見えたのは…………私が知ってるあのイヤリングだった。


なん……で……………?


そのイヤリングをつけているの?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

カンパニュラ 御手洗 @Mitarashi123

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ