文章の基本ルール&間違えやすい表現集

雨里

第1話

 この文章は、小説を書き始めたばかりの方、これから書こうと思っている初心者の方を念頭に書かれています。

 誤字脱字や内容の整合性などを除き、これだけ守っていれば、形式上ほぼほぼ問題ないと思われることを記しています。逆にいうとこれすらできていない原稿は、書くこと自体に慣れていないというか、(失礼ながら)素人さんなんだな、と思うようなことをまとめています。小説を書く際の基本ルールですので、縦書きを前提としています。

 これを書いている当人は少しばかり創作の経験もありますが、本業は校正者です。校正の仕事をする中で気づいたこと、よく見る間違いをまとめた、いわば備忘録のようなものです。

 冒頭に「小説」と書きましたが、もちろん小説に限るものではなく散文全般を対象としています。わざわざ断る必要もないとは思いますが、念のため注記しておきます。

 ちなみに、「念のため」という文言は、校正の時に本当によく使うんですよ。このあたりもエッセイやブログなどの形で、おいおいまとめられたらいいなと思っています。

 前置きが少々長くなりましたので、では早速。



●段落冒頭は1字下げる

 あまりにも基本すぎるルールでありながら、意外とできていない原稿を見かけますのであらためて。特に、ダーシや3点リーダーが行頭に来る場合に天ツキとなっていることが多いのでご注意ください。


※全角アキは(□)で表記しています。


【例】

□その日は踏んだり蹴ったりの一日だった。思い出すだけでもうんざりだというのに、よりにもよって、最後にやってきたのがあの男とはついていない。

□――不満が顔に出ていたのだろうか。 

□やれやれ、と彼は肩をすくめた。

□顔を合わせるなり、いったいなんだ。 

□……はあ。

□ついため息がもれそうになる。つくづくこいつとは反りが合わない。




●ダーシ、3点リーダーは2の倍数で表記(最大でも6倍くらいまでに留める)


・1倍や3倍は使わない

【×】よくもまあそんなことが言えたものだな…。

【○】よくもまあそんなことが言えたものだな……。

 

・中黒で代用しない

【×】それって本当のことなのかな・・・。 

【○】それって本当のことなのかな……。




●文末を除き、感嘆符・疑問符の後は一字空ける

【×】いったい何が起きたんだ?こんなのありえない!そんな叫びが聞こえるような気がした。

【○】いったい何が起きたんだ?□こんなのありえない!□そんな叫びが聞こえるような気がした。


・二重感嘆符・疑問符(!!、!?、??など)は半角で表記し、全角1マス内におさめる(縦中横)

【×】「絶対に諦めない!!」

【○】「絶対に諦めない!!」




●数字表記は基本的に洋数字か漢数字に統一

 

・漢数字の場合は、単位語の有無をそろえる。ただし概念によって使い分けも可能


【例】

 ずいぶん背が高い。一八〇センチは軽く超えているだろう。

 十九世紀の画家に興味がある。

 二百人くらいは収容できそうな広さがある。

 一九七〇年代、この町の人口は二三万人ほどだったという。



・洋数字の場合は、2桁の数字は半角で表記し全角1マス内におさめる(縦中横)

 1桁、3桁以上は全角で表記する


【例】

 明日は、Sの18歳の誕生日だ。5歳の頃から知っているので、ひどく感慨深い。




●傍点は縦書きの場合はゴマ点を使用する(ウェブだと難しいかもしれませんが、電子書籍や同人誌など書籍にする際にご注意ください。上記の縦中横も同様)


【×】重要なのはそこ・・じゃない

【○】重要なのはそこ、、じゃない




●漢字の閉じ開きについて

 漢字の閉じ開きは、結局のところ文体の違いでしかないので、どちらの表記を選んでも間違いではありません。ひらがなを使うか漢字にするかは好みの問題です。

 とはいえ、助詞や補助動詞など、なるべく開いたほうがいいと思われるものをまとめてみました。

 個人的にはこういったものまで漢字になっている原稿を見ると、書きなれてないのかなあ、と思ってしまいます。昔の文豪の作品では普通に漢字表記ばかりだったりしますが、最近の作家さんは開いている方が多い印象です。漢字ばかり続いてしまうと実際読みづらいですしね。

 そういう意味では、漢字表記のほうに統一していても、読みづらくなりそうなところのみ開くというのもありです。

 一番よくないのは、表記統一などへの配慮がまったくなく、バラついているケースでしょうか。特に、近いところで揺れている(不統一)のは収まりが悪いというか、美しくないので、なるべくどちらかに統一しましょう。

 要は、それが自分のスタイルであるとの主張を持って、いずれかに統一していただきたいということです。変換候補に出てきたものをその時の気分で選んだだけとしか思えない原稿を見かけることがありますが、そういうのは正直ご勘弁という感じです……。

 文体への意識や配慮のあるなしに書き手の経験値が表れているように思います。



×出来る

○できる


×~の為、~する為

○~のため、~するため


×うまく行く

○うまくいく


×と言う

○という


×~する所

○~するところ


×~の様に、~の様な

○~のように、~のような


×~する事

○~すること


×~する程

○~するほど


×~位

○~くらい


×~して居る

○~している


×~では無い

○~ではない


 

●よく見かける誤表現(※随時更新)


×にも関わらず

○にもかかわらず(にも拘わらず)


×例え~でも 

○たとえ~でも(仮令・縦令)


×散りばめる

○ちりばめる(鏤める)


×足元を掬う

○足を掬う


×間髪(かんぱつ)入れず

○間髪(かんはつ)を容れず


×絡め取る

○搦め捕る


×臍を噛む

○臍を噬む


×折り込み済み

○織り込み済み


×極めつけ

○極めつき


×底を尽く

◯底を突く


×手を着く、膝を着く

○手を突く、膝を突く














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