パイデラスティアーについて:
従来、「古代ギリシアのパイデラスティアーは、通常、仕手役の年長者エラステースと受け手役の若者エローメノスとの性愛関係を指す言葉で、『少年愛』『稚児愛』と訳されることが多い」(p.64)とあるように、年長者と少年との関係を指すかのように考えられてきた。
だが、その際に例として挙げられるのは、古典期ギリシャではなく、ヘレニズム=ローマ時代のもの(例えば、ストラトンの詩、メレアグロスの詩)であり、20世紀後半からなされてきた古代ギリシャ研究によると、「相手の年令に係りなく、パイデラスティアーという言葉が、男性愛(androphilia)すなわち『男色=男性の男性に対する愛慾』を指す一般用語として使われたと考えられているようだ」(p.85)という。さらに、この説を補強するものとして、奴隷や召使いなどが年齢にかかわりなく、「パイス pais」(少年)であることが挙げられている。
実際に、成人同士の関係を描いた黒絵式陶器などが多数存在していることから見ても、古代ギリシャでは、パイデラスティアーは一部の上流市民のみの風習だったわけではなく、きわめて一般的なものだったようだ(例えば、ソロンが奴隷に衆道を禁じたのは、それがあまりにも一般的だったからだ(p.96))。
それに対し、古代ローマにおける性愛関係こそが、いわゆるパイデラスティアー的なものではないかと考えることができる。古代ローマ社会において、自由市民が受け手側に回ることは恥ずべきこととされた。古代ローマ的な性愛関係とは、いわば支配と服従の関係であった(p.160~)。
古代ローマの師弟関係について:
「古代において師弟関係は常に愛する者と愛される者との関係にあるのが通例であった。ローマ時代に入ると、すべての哲学者が男色家だと思われるようになったため、逆に衆道愛好家が哲人を装うという風潮さえ生じたという」(p.117)
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『千夜一夜物語』(264)
マムルーク:白人系の少年奴隷たち(269)
アルテミドロス『夢判断の書』→フェラチオは凶兆であることが多い。自己フェラチオのみは瑞兆(314)。
「福建で男色婚がかくも盛んになったのは、通例、彼らの営む海賊稼業や密貿易などの水上活動に原因があるとされている。(…)
さらに福建では、男色をつかさどる神も随所に祀られていた」(354)
「『同性愛嫌悪症的なゲイ』の先駆として近年の研究者の槍玉にあげられているのが、キリスト教の使徒パウロである」(392-393)
モンテーニュ『友情について』:ラ・ボエシとの友情について書き表したもの。
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