第20話 鬼の目にも涙

 ドタドタとあららかなる激しい足音立て足音を立てて駆け抜くるぬける鬼を髪の毛ほどの間合ひにギリギリでかわつつながら桃太郎かぐや姫はつかなるかすかな手応へてごたえ得き感じました


かわされた!?

 いえ、確かに斬った筈……浅かったってこと!?』


 桃太郎かぐや姫は受け身をとりつつとりながらまた再びおどろき上がり起き上がり身構へき身構えました

 桃太郎かぐや姫身構へし身構えたドカッと何かがあららかに激しくぶつかる音の鳴りてがして、突然板戸押し破られき板戸が押し破られました


「ぐはっ!?

 ‥‥‥ああ~~~~~~~~~~っ!!」


 押し破られし破られた板戸の向かふに向こうで、下男が悲鳴をあげつつあげながら下へ落ちゆく落ちていくの見ゆ見える

 はたどうやら下男は敵に板戸の向かふ向こうまで突き飛ばされきめりたようです

夕日に照らされし照らされた楼内にはお婆さん桃太郎かぐや姫ばかりだけが残されたりき残されていました


『あれ、敵は!?

 襲ってきた敵はどこへ行ったの???』


 桃太郎は敵をとぶらへど探しましたが捨てられし捨てられた死体お婆さんの他以外は何もあらず居ません


「ああぁ~~~~……

 手がぁ、アタシの手がぁ~~~~~」


 お婆さんかこつ嘆く声に桃太郎かぐや姫我に返りけるハッとしました


「お婆さん、どうしたの!?

 大丈夫!?」


「痛い、痛いぃ~~~~っ

 血が、血がぁ~~~~~っ」


 さても何ということでしょうお婆さん片腕切り落とされたりき切り落とされていました。傷口よりから血とめどなくあふれいでたり血がドクドクと吹きだしています


「まぁ! 大変!!」


 桃太郎かぐや姫は鉈をば仕舞ひてしまってお婆さんに駆け寄りてよると、近くに落ちたる落ちていた襤褸布ボロ布まうけ拾って傷口の近くを縛りそめき縛り始めました


「おのれぇ~~、よくもっ、よくもぉ~~~っ!

 ああ~~~~痛いぃ~~~~……」


「酷いわあの男、こんなお婆さんの腕を切り落とすなんて……」


 お婆さん正体こそ鬼なりて正体が実は鬼でその腕その腕を切り落としし切り落としたのおのれとはおどろきたらぬ自分自身だとは気づいていない桃太郎かぐや姫は、下男がお婆さん腕切り落としけり腕を切り落としたのだ思ひ紛へり勘違いしました


「男が、あの男がぁ~~~~?」


 鬼はお婆さんなれどでしたがお婆さん目悪しければ目が悪かったので己の自分が襲ひ掛かりて襲い掛かって返り討ちにされし返り討ちにしてくれた仇の相手が誰なりしかは誰だったかよく分からねばよく分かってなかったので腕切り落とししは腕を切り落としたのは下男なりといふ下男だという桃太郎かぐや姫語りしを信じけり言ったことを信じてしまいました


「そうよ、ほんとに酷い男だわ。」


「おのれぇ~~、つなめ~~~、渡辺綱わたなべのつなめぇ~~~~」


 お婆さん涙を流して泣きてボロボロと大粒の涙をこぼしながら口惜しからむとし悔しそうに恨みごと繰り返しける恨みごとをくりかえします

 桃太郎かぐや姫かの下男は渡辺綱ならざらむと知りたれどあの男は渡辺綱なんかじゃないだろうと知っていましたが、下男のことを知れるよしにもあらず知っているわけでもありませんでしたしむつかしければなんか面倒くさそうだったのでわざといひけちもせざりきあえて否定もしませんでした


「はいコレ、お婆さんの腕よ。

 返されたからってどうにもならないかもだけど……」


 桃太郎のかぐや姫が落ちたりし腕拾い上げ落ちていた腕を拾い上げお婆さん返しければ返してあげると嫗のお婆さんは泣きつつ泣きながら御礼をば言ひけるお礼を言いました


「あうぅ~~~、ありがとう娘さん、ありがとう……アンタ、優しい子だねぇ~~」


「いいのよお婆さん、それよりおウチはどこ?

 帰れる?」


「ありがとう。アタシはここでいいから。ありがとう、ありがとう。」


「本当?  本当に大丈夫?  じゃあアタシ行くわね?」


 優しき子優しい子言はれ言われてあからさまに気よくせるちょっと気をよくした桃太郎かぐや姫なれどでしたが内心には本音ではむつかしな面倒くさいな思ひたれば思っていたのでなほく素直にその場を後にせり後にしました



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竹桃取太物郎語 乙枯 @NURU_osan

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