第19話 暗中死闘

 風なき楼の内にありながら風のない屋内にいるはずなのににはかに風あたりの高まりにおどろきたる急激に風圧が高くなるのに気づいた桃太郎かぐや姫が刹那とっさゴロリと床に身を転がすや前回り受け身の要領で避けると先ほどさっきまで桃太郎かぐや姫のおりしがいた頭上をゴウといふ音とものスゲー轟音をともに立てながら何か凄まじき何かがとんでもない勢ひで通り抜けき勢いで通り過ぎました。わづかにもちょっとでも避くる避けるの遅ければ遅かったら無事にはヤヴァイことに済まざりけむなっていたでしょう


「い、いやああああああっ!!」


 下男の男がののしりつつ叫びながら刀を抜きたる音の聞へける抜く音が聞こえました


「お、お、鬼め!

 こっ、こっ、こっ、怖くねえぞ!?

 お、おれは、強いんだぞ!?」


 暗く暗くて何も見えねど見えませんが、カタカタと刀を震はせつつ震わせながら、下男のわめ声の聞ゆ声が聞こえます

 桃太郎かぐや姫息潜め息を殺しみそかにこっそり鉈をば抜きて鉈を抜いて身構へける身構えました


「お、お、おれはな、わたっ、渡辺わたなべのつなだぞ!?

 強いんだぞ!?」


 下男宣ひけるや下男がハッタリをかますと誰かの誰かが聞きつることも無からむ今まで聞いたことも無いようなおどろおどろしき声におどろおどろしい声で訊き返しけり訊き返しました


渡辺綱わたなべのつなぁ~~?」


『誰!?  この声の主は何者!?

 さっきまで役立たずのナンパ男と御婆さんしかいなかったのに……

 はっ!  そういえば御婆さんはどうなったの!?』


 戸惑ふワケワカメな桃太郎かぐや姫を余所に、下男はののしりきハッタリをかましました


「そうだ!

 おれは、渡辺綱わたなべのつなだぞ!

 鬼なんか、ぶっ殺してやる!

 死にたくなけりゃかかって来い!!」


『何言ってんのよ、あのバカ……』


 桃太郎かぐや姫気色を殺しし気配を殺したままやをらゆっくり立ち上がり、身低くせるまま身構へき低い姿勢で身構えました


『本当に鬼なんかいたら、アンタなんか敵うわけないでしょ!?

 ホントに役立たずのビビりなんだから!』


 桃太郎かぐや姫鉈をば鉈を構へしまま構えたまま目をさしたりて閉じて先ほどさっき襲ひ掛かりこし襲い掛かってきた敵の気色をとぶらへる気配を探していると、またかのさっきほおどろおどろしき声のおどろおどろしい声が響き渡りける渡りました


「うわぁーっはっはっはっはぁーっ!!

 渡辺綱わたなべのつなぁーっ! そこを動くなぁーーっ!!!」


 暗闇の彼方よりむこうから声轟きき声がした思ひきや思ったら何人かが何者かがドカドカとけたたましき大きな足音足音を響かせひびかせて駆け来たり走ってきました


「!!」


 桃太郎かぐや姫ころ見計らひタイミングを計って床に身を転がしつつ前回り受け身の要領で体を躱しながらすれ違ひちがいざまに鉈を振り、敵をば切りつけけり敵に切りつけました

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