第7話 バスケット

 まさか、卒業式の日に入院するとは思うまい。

いくら私が食い意地を張っていたところで、予想できない未来だ。

カキはうまかった。だけど晴れの舞台の思い出を犠牲にするほどのものではない。

目が覚めると病院で、卒業式の時間はもう終盤に差し掛かっている時間だった。今から準備したところで間に合わないし、着いたら着いたで教室は涙の卒業授与の途中で割り込むことになってしまう。

正直私はそういうことに感動するタチじゃないし、だからこそ彼等の感動を邪魔するつもりは無かった。

ただ、最後にもう一度だけ卒業式にかこつけて、と思っていただけで。

だけど、それも叶わない。きっと神様が告げることを許してはいないのだろうと今度こそ本当に諦めた。使いたくは無い言葉だが、運命と言うやつだ。

そんなことを思っていると、テンションは思いのほか下がり、下がりついでに寝た。


「おい、起きろよ。カキ中毒女」

目が覚めると目の前に色鮮やかな花束。ぱちぱちと瞬きすると、状況を把握できてきた。

「お前の後輩から。卒業おめでとうございますだって。見舞いもかねてわたしといてくれってさ。あ、卒業証書は自分で取りに行けよ」

 笑いながら言っていたのが想像出来る。それが驚くほどうれしくて、素直にありがとうと言えた。

「……それと、これは俺から」

 言い出しにくそうに、ずいと目の前に出された木の籠。

 中には見舞いの品には似合わない、なっちゃんオレンジ、チロルチョコ、カロリーメイト、レモンキャンディ、ポテトチップス、カントリーマァム、その他にも見たことあるものばかりだ。共通点は、

 はっとして私が思わず見ると、恵介の顔が真っ赤になっていた。


 このあとキャンディのつつみに第二ボタンが入っていることが分かるのだが、今の私はまだ知らない。

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かけら あつめて つめこんで 詩楽葉癒麻 @shuma

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