ほんぺ1-1

@kakuriyuki

第1部

シナリオ=レクイエム



.1

『私を読んで』


 死というものが理解できていなかった。

 目の前には死骸がたくさん転がっているけれど、自分では体験したことがなかった。


 女神様に「一緒に死のうね」と言われたのは三度目だったか、二度目で私は発狂したようだ。

 迷宮みたいに複雑な灯台を駆け上がっている。三度目を聞く前に飛び降りようとしていた。

 灯台は、三十階建てで階高は八メートル。つまりは地上から二百四十メートルくらいだろうか、屋上にも階段と光を投射するための高台があるので正確ではない。二百五十メートルより少し高い。

 いやしかしそんな些細な、数メートルの違いはどうでもいい。どうでもいいのだけれど考えているうちに時間が過ぎていく。

 息を継ぎながら階段をがり、一階上がるたびに円筒の反対側に変わる階段のために部屋を突っ切って。こんな面倒な設計にしたのは誰だろうか、図面を書いたのは私だが、作ったやつのせいだろう。

 

 屋上に到達した。そういや後付けでエレベーター作ったんだっけっていうのを思い出したのは、階段を上がりきった横目で、この円筒から飛び出すウィングに設置された、昇降機を見た時だった。

 この世界で初めての死者は、この灯台の建設中に落ちて死んだやつらしい。もちろん嘘だけど。落ちたら死ねる。

 屋上から更に階段を上ったここが最上階。灯台の火口がある。

火口?

 灯台の火口とは地下にまで続く巨大な穴、大きさはこの灯台を円とするとその四分円に等しい、灯台は全階吹き抜けに――ではなく、円筒を火口に見立ててその周囲に円筒がある形、上から見ると二重のまる

 地下から熱のエネルギーが吹き上がり、そのエネルギーを光に変換する――らしい、あまり知らないことを書きたくないけれど。

 昔一人火口に飛び込んだやつがいるらしいし、外に飛び出すよりは確実だろう。

 私はその火口に向けて足を踏み出すのだが――恥ずかしいことになる。

 腕を掴まれていた、首をめぐらすと女神様が悲しそうに腕を掴んでいる。自殺を止められることほど恥ずかしいことはない、いや止められていない。引っ張れば一緒に落ちることになってしまう。

 仕方がない子だなって思った。もっと足を踏ん張ってくれないかな。

 彼女の胸のなかに飛び込むことにする。

「ぴぎっ」とか言いながら押し倒されて尻餅をついて、痛そうに涙を流しながら顔をゆがめるのと、胸に擦りつかれてぁぅって甘い声を漏らすのが、すごく可愛い。ここ究極の萌えポイントですよ、点数をつけるなら百点掛ける百点で…二百億点くらいですね。やってるとき時が一番いいんですけどね?可愛がってる時がね。ちょっと早いって?何が?

 女神様は肩を出した肩紐ないけどどうやって着てるのか――胸か?胸で落ちないのか?――よくわからない女神っぽいエロい服を着ている。誘ってるよね。まぁその服も擦りつかれて胸を露出しながらめちゃくちゃになってるんだけどね、ナイスだよね私。あぁ巨乳だよ。それと私は普通の地味なワンピースだ、気にしなくていい。女神様と比べたらどうでもよくなる。

 いやそんな服で三十階駆け上がったのかとかそんなことは気にしなくていいんだって。確かに半脱ぎはエロいし重要な情報ではあるけど私はいつもミニのワンピな感じでいつもどおりだから特筆すべきところは何もないのだから。

 上に乗りながら彼女の乳首に舌を這わせる。

「んぁあぅだぁめぇ…」とか言いながらか体を反らして胸を押し付けてくるのが愛おしい。

 女神様は私の彼女、彼女は私のもの。

 この世界は神代かみよ、世界は彼女のもの。

 つまりこの世界は私の――。

.2

 女神様といちゃついていると日が暮れ始めた。もう陽が沈んでいるのを気が付いた彼女が無理やり戻したのだが。神様っぽい。

「雰囲気って、大事だからね」服を直しながら女神様が呟く。

「また世界はおかしくなっちゃうね?」伸ばされた時間を演算して一日ごとの修正案を世界に放り投げながら私は呟く。

「ごめん…」彼女は謝るけどそれはいい、彼女のわがままで狂った部分を治すのは好き。彼女と遊んでいる気分になれるし――治せなくても私のせいじゃないし。

「また人間で遊ぶ?戦争も終わっちゃったもんね」謝罪には応えずに軽い調子で提案した。

 戦争は、簡単に言えばゲーム。二手に分かれて人間に信仰させて、国を使って戦う代理戦闘ゲーム、人間達は信仰が違えば勝手に戦争をするから、オートマチック。たまには戦場に出て英雄になってもいい。特にこれといったルールは存在しない。

「もう限界なの」彼女は何かを我慢しているような表情。そして続けて言い放った言葉が。

「一緒に逝こう?」

 誘ってるよね。

 彼女の履きなおしたばかりのパンツの中に手を突っ込む、乱雑に指を膣内へ。

「だ…めっ」言葉で抵抗しながらも積極的にキスをしてくる、躾けた通り。

 彼女が積極的に私を求めないと負けた時に領民の前で、男達に凌辱されるのを繰り返していると期待した通りに。おしとやかな彼女が自分から求めてくるようになった。

「これっ違うの――」舌を巻き付ける深いキスをして、息を継ぎ、顔が離れると息を荒げながら首を振っている。

「じゃあ貝合わせしようか」わかってるよっていう顔をしつつ肩紐を落として自分も脱ぐ。

 彼女の膣液にまみれた指を――抜く前に奥まで突き入れて悦ばせつつ、引き抜く。

 彼女のずぶ濡れな秘所と重ね合わせていると私も濡れていた、愛液を膣内で交換し合いながら腰を擦りつけると彼女は簡単に絶頂に達したらしい。腰を震わせて悦びの声を上げた。

「ほら、一緒に逝くんじゃなかったの?」

 彼女が絶頂して尚も擦りつけ続けて責めていた、彼女が腰を震わせるたびに愛液が流れ込んできて。あぁこれで妊娠したいなと思いつつ彼女の愛液を膣内に受け入れていた。

 彼女は絶頂して気を逸らしたらしい、灯台の火口に視線を見遣みやっている。時間を稼ごうか。

「ね?もう一回逝ってからにしましょう?」

 その提案に彼女は陶酔とうすいしきった表情で頷く。だが…

「だめなのっ――ユキが一番いいのに男に凌辱されるの思い出すの。またなぶられたいって思っちゃうのっ」自分から腰を振りながら――まるで男とやってる時のような振り方――また絶頂していた。

 落ちようか。

 既に陽はなく夜の暗闇に包まれていた、彼女のいう情緒だとかはない。夜よりも暗い火口に身を投じる。

 彼女と愛し合いながらキスをしていた。

 二百四十メートルくらいから自由落下で何秒かかるだろうか、演算をしてくれないからわからない。『死ぬならば後はご自由に』

 落下中は一秒が引き延ばされて永遠のように感じるから意味はないのだろうか。

 私を下に、そのまま下に落下していく、彼女越しに夜空が見える、こういうのが情緒というのだろうか?

一秒目、思いつく。死ぬのはいいけど、キスしたまま落ちたら彼女の歯が砕けないだろうか?

二秒目、彼女の口元から離れるが舌が絡み合ったまま離れようとしない。いいか。

三秒目、ただ抱き合ったまま意識を失った。

.3

『最後まで読んでくれてありがとう!』


 いやこれで終わりじゃないですけどね?読者様方。

「うん、エロだった。貴女の人生全部そうだったんじゃない?」取り敢えずの感想。

「いや、全部じゃないよ?二分の一足す……二分の一くらいだよ?」そんなに面白くない冗談で返される。

「全部じゃない」

「ていうか、歴史に残ってる戦争全部貴女達が起こしてたんだ…」「全部って言われると語弊があるな、戦争狂は他にいたし。私たちは遊びだったから、一割も関係ないよ」「一割か…」

私は頭の中でのユキとの会話から気を逸らすとぱたりと読み終わった本を閉じた。

「読み終わったかい?」本屋の店主のお爺ちゃんが声をかけてくれる。

「あ、うん」本と話していたのを聞かれていないだろうかと気を揉みながらの答え。

「今までの本よりすごい集中力だったじゃないか、そんなに面白かったかい?途中で声をかけたんだが――あぁそうそう、もう遅い時間だよ、もうお帰りなさい」優しい声で言ってくれるお爺ちゃんに頷いて頭を下げる、実際本を買わずに読んで済ましているのを迷惑がらずに置いてくれている優しい人だ。

「コーヒー淹れてるけど飲むかい?」「いえ…」

 断ってからうまい言い訳を探す、言葉がつかえて出てこなくなる。「もう寝る時間なので――でどう?」

「もう寝る時間なので」「うん、そうだねぇ。暗いから気を付けてお帰り」

 ああ、うまく人間と会話できた!もしかしてこの調子なら教会でも友達ができたりするんじゃないだろうか。

「失礼します…あの、この本」また彼女と会話したいし、買おうと思ったがはたして手持ちで足りるだろうか。

「あぁ構わないよ、あげよう、大切にしてくれるなら本も喜ぶだろう」

 もう一度深くお辞儀をして、お店を辞去じきょする、辞去なんて言葉を使ってしまうのは難しい本の読み過ぎだろうか?

「そうねぇ、本以外に友達居ないの?」声が聞こえる……が独り言を言ったつもりはない。もしかして、ユキ?

 からかわれている、実際に友達はいないのだから、それはいいんだけど、いやよくないけど。

 本を閉じたら彼女とは話せなくなるんだろうと思っていた。ユキ?と呼びかける「なぁに?」何でいるの?「あ?嫌なら出てくけど?」

 嫌ではない――けど。

「私が作った永遠っていう魔法の答えがこれ、魔導書に私のすべてを記して読んだ人の中で生きていくの」

 なんか変な感じの本だと思ってたら魔導書だったのか…。

「ずっといるの?」聞くのがほんの少し怖いことを怯えながら聞く。

「嫌ならいいってば、ずっとよ?」うんざりしているという声音こわねを作りながら言われる。

「ずっといていいよ、いつかいなくなるんじゃないかって思っちゃったから」

「分かった、それなら契約は成立する。あなたの中に移ってずっといる」

 私にも友達ができたんだっていう嬉しさを滲ませ、スキップしながら帰り道を急ぐ。


「友達…友達だねっ」急に彼女からそう言われる、考えてることがわかるのだろうか。

「わかるよー」すごい軽くプライバシーを侵害されている。「まぁいいじゃない?」

 うん。まぁ、楽かもしれない、今までは考えてることをうまく伝えられなくって…。

 いや彼女は私の最高の友人になってくれるからいい。「あ、こら雨降ってきたぞ、私が濡れるから隠してよ。それと転ばないようにねっ、泥ついちゃうでしょ?」

 ――ちょっとわがままだけど初めての友達だから、いいか。


.4

 ただの通り雨だったらしい雨は彼女ユキを服の中に隠しながら歩いている内に止んでいた。

「さむひ…」水滴を外套からはたきながら独り言を言う。わざわざ言ってしまうのは彼女の返事を期待しているからだろうか。「本だから寒さはわかんないわねぇ」

「そう…」彼女と会話する材料を探しながら答える。

「いつから本になったの?」「死んでからよぅ」質問を思い浮かべるだけですぐに答えが返ってくる、しかし、今のは質問が悪かった、いつもそうだ。私は先ず人と話すときの最初の言葉がまずいし、本をたくさん読んでいるからと知識を頼られても偏った知識では答えが出ないこともあるし、知っていることでも説明が不十分で理解してもらえない。最低なんだ……人として。「いや、そんないきなりうつになられても困るんだけど?」「うぅ…」

「本になってる間には、意識はないからね…」

「読まれるまではずっと眠っていて、読んでもらったら覚醒できるの」

「だからあの時から何年たったのかさえ分からないわね……時間を観測する魔法素子でもないと……」

「そうなんだ……」過ぎていった時間に思いを馳せてみながら話を聞いている。

「着いた」「家に?」

 ううんと思いながら――実際に首も振り。

「ユキには――外が見える?」

「左目を貸してくれるなら……視えるよ」「貸すって?」「貸す――いや、ユキにあげるっておもってくれるだけでいいよ」

「うん、いいよ」あげる。少しの逡巡しゅんじゅん、でもこれが見られないのはもったいないよね。

「ありがとうね」感謝の声と同時に視界の左側が暗くなる、見えなくなった?「視えるようになった」

「そっか」ほんの少しの納得と、安堵あんど

「私ね、此処ここの景色が好きなの、星空がきれいに見える場所なの」

 草原、住んでいる村から離れて辺りには何も、遮る物のない暗い地面に腰を下ろして、空を見上げる。

「そう――別の物も見たいわ」

 左目が忙しなく動く感覚を伝えられながら、素っ気なく言われる。

「昔のほうが夜空はきれいだったって聞いたことある」

「そうね……昔のほうが、奇麗だったかも」

 なんだ、私のとっておきだったのに、でも昔はこれ以上なんてざらにあったんだろうから仕方ないか。

「ふふっ……口説きたかったの?」上品な笑い方だ、まるでユキの彼女の……。

「そっそんなことしないよ友達相手に……」

 ちょっとドキドキしながら否定する。

 ほんの数秒の間星を眺めていた。

「うーん……帰ろうか」スカートが水で濡れているのを軽くはたきながら立ち上がる。

「ユキには新しいものを見せたほうがいいかな?」

「そうね、興味あるわ」まだ笑っているような声で肯定される。「むぅ…」


.5

「ただいま……」

 恐る恐るといった様子で玄関のドアを開け帰りを告げる。

「お帰り」

 いつも通りに迎える母親の声、しかしそこで区切られて……。

「遅かったじゃない?」

 叱る準備を含んだ声、ここで対応を間違えると叱られる。

「ちょっと……本を長く読みすぎちゃってて」

「ちょっと?」

 時計を見遣みやられる、日没から三時間、明らかにちょっと、ではない。

「お母さんはね、帰りが遅いから怒ってるんじゃないのよ?」「嘘をつくから…」

「一時間も前に本屋さんに迎えに行ったけどさっき帰ったって言われたわ」

 うぅ…そうだった、母の靴には泥が付いていた、それに傘と玄関の水滴…これで気付かないのは相当に気が抜けていたのだろう。

「ごめんなさい…あの、星を見に行っていたの」

「いったん帰ってから見に行けば良かったのよ」「雨が降ってなかったら止めないから」

「ごめんなさい…」

 ただただ謝っておくしかない。

「いいわ…早く入って」

「後一分でも遅れたらごはん抜きになるところよ?」「それは酷いわね」

「ひっ」ユキ……いきなり声出さないでよ。

 びっくりして声を出して会話を始めるところだった、そうしなかったのは今まで空想でしか居ない友達と頭の中で会話することに慣れていたからだろう。

「なにがひよ……もう……」母は何事かぶつくさ言いながらもテーブルの上の料理をレンジにまとめて突っ込んでいって――スイッチを入れた。

「そういえば名前を聞いてなかったのよねぇ」

 声を出さないように意識しつつ答える「うん、そういえば自己紹介すらしてなかった」友達なのに。そういうところが抜けてるんだ。だから――「いいから」

「うん――リーラ・プロフィスだよ、趣味は読書、よろしくね」「リィラね…ユキだよ、家名とかはないよ。よろしくねぇ」神様だもんなぁ……。

「うーん、神様ではないよ、女神様は神様だけど」

「そうなの?」

「女神様に気に入られただけの人間に過ぎない…書いたと思うんだけど」

 そうだっけ……、確かに最初は人間だったけど、途中から女神様と同じような存在になってたと思うんだけど。読んでる途中からユキとの会話に夢中になり過ぎてちゃんと読めてなかったかもしれない。

「ちゃんと読めよ」

 本を読み終わって感想を言ったら作者が出てきてちゃんと読めよって言われた様な感覚。ようなじゃないけど、怖い。ちょっと泣きそう。

 レンジが温め終わったのを知らせる電子音が鳴り母が目の前に料理を並べ始める。

「ん――?」並べている途中で不意打ちのように顔を覗き込まれた。

「目、どうかしたの?」見られた。


.6

「何でもないよっ!」咄嗟に左目を庇うように手で押さえる。

 そういえば左目は彼女が使っているから、ちょっと不自然になってしまっているのかもしれない。

「あら、泣いてるの?それでなんでもないっていうのは――」言葉を切るとふぅと息をついた。

「何かあったらすぐに言ってね?教会でのことも――何とかできると思うから」

 心配されてしまった。

 友達ができないのは私のせいだから何もできることはないと思うんだけど――いじめられてると思われるのかな「虐められてるの?」

「そんなことないよ」

 否定する言葉を小声で呟いてしまう。

「そうかな……」

 この言葉に答えたのは母だった。

 母の言葉にそんなことないと答えると、母を傷つけてしまう返答になっていないだろうか?「そうなったねぇ…」と申し訳なさそうな声で謝罪された。

 肯定されたことですごくいたたまれない気分になってくる…。

「ごめんね…お母さん、私もう寝るから……」母に見つめられたままではまた泣いてしまう気がして逃げようとしていた。

「ええ……お休み、リェラ」

 背中に届いた声で私は、逃げられてないんだなって思った。


..1-6分岐END(右目)

 咄嗟に濡れている右目を押さえる。泣いてるの、見られちゃったかな?

「左目は私が使ってるから大丈夫よ」「ちょっと強く言いすぎちゃったね、ごめんよ」

「うぅ……読めてなかったのは私のせいだから……」ちゃんと読めとそう言われるのも仕方のないことだった。

「その左目……なんかおかしいわ」首を傾げながら左目を見つめられている。

「うえっ、そ、そうかな…?」

 左目は彼女が使っているので不自然な動きになってしまったのだろうか?

「――まぁ、冷めないうちに食べなさい、一回冷めてるけど」

 こういうことを言うのは毎日のことなので気にしない。

「うん、いただきます……」テーブルの上の食事に手を付けていく。

 レンジの中で斜めになっていたためか形の崩れたロールキャベツ、まとめて温められて萎びたサラダ。後は大皿で適当に並べられた数々の料理。

 ユキにはもうちょっといいのを見せたかったな、と思いつつもごはん抜きになるよりはましなのでさっさと口に運んでいく。

「母親に、虐められてるの?」

 食事を取り始めてから暫くしてユキが質問してくる。

「そんなことないよ、今はちょっと怒ってるけど優しいし……」

 母に視線を向けて、すぐに逸らす。

「ねぇリェラ?それ、止めてくれない?」

「それって?」

 食事のマナーに厳しい母だっただろうか?何かしたかなと考えつつ聞いてみる。

「左目……普通は片目だけで物を見たりしないわ、右目は食べ物を見てるのに左目はこっちを見ているの……ちょっと気持ち悪いわ」

「あら…心外ね」もし体があったら肩を竦めていそうな声でユキが呟く。

「ヴ……お母さんったら!気持ち悪いって何よ!私の初めての友達なのにっ!」食事を放り立ち上がって叫ぶ。

「リェラ?何を言っているの?」心配そうな心細い声で尋ねられた。

「うぅ…………心配ならユキにしてよ、気持ち悪いなんて、言わないでよ……」声を荒げてしまった羞恥と何も知らない母に当たってしまった恥ずかしさで語気がしりすぼみになっていく。

「リィラ、大丈夫…?」ついには友達にまで心配されてしまう。

「リェラ、もしかして――悪魔に憑かれたのね?」

「言わないでっ、違うからっ!ユキは悪魔なんかじゃないからっ!」

 そうだ、彼女は――戦争で必要以上にいたぶっての人殺しとか、女の子の捕虜に対しての凌辱とか――悪いことをしていたけど、それは無邪気に、それが悪いことだって知らずにやってしまっただけなんだから、彼女が悪いわけじゃない。絶対に。

「友達なんだから……」「……そうだよ私たちは友達」

「リェラ、あなたは騙されているの、悪魔は友達の振りをして人をそそのかすのよ、知っているでしょう?」

「私唆されてなんかいない、何も、していないんだから……」

 いやいやとするように首を振った。

「その左目は…?」

「ただ外を……星を見てほしかったから……だからあげたのっ!私の意思でっ!」

「それを唆されてるっていうのよっ!」

 叫びあっていた、母はいつの間にか手にナイフを持っていた。

「止めて…」

 私の懇願は意味を持たなかったようだ、私が一歩下がり母が一歩詰める毎に距離を縮められる。

「痛いかもしれないけど――その左目よね?」

「止めてよ…」

 狭い家の中では直ぐに背中に壁が当たる。

「怖い……?悪魔に憑かれてるのだから当然よね、それとも悪魔はこれが怖いのかしら?」

 その様子も怖い。包丁も怖い。

「それとも左目がリェラで私を見つめているのは助けてほしいから、なのかしら?」

 ずるずると壁に沿って落ちていく私にゆっくりと迫りながら、それとも?それとも?と繰り返している、気が狂ってしまったのだろうか。

「両方…ね、大丈夫よ。見えなくなっても私が…お母さんがいるからね」

 振り上げられたナイフがどちらかの目を狙っている、身をひねることも出来ない、体が竦んで動かすことも叶わない。

 目を瞑って呟いた。「助けて…」という声にいいよ…とどこかから嬉しそうな声が聞こえて来るのが私の最期だった。

  お終い?

(いつかゲーム作れるといいな。作ろう。)



.7

「やっぱりお母様に虐められてるの?」


 兎にも角にも初めての友達と話をしようと寝室まで逃げてきた。寝巻に着替えて、電気もすぐ消せるしベッドの布団の中にすぐ逃げ込める姿勢。

 話をしようと言ったのは私だけど、あれで虐められてると思うのはちょっと、人の心というのが理解できてなさすぎるんじゃないかな。

「何よっ、心配してるのにっ」

 漫画みたいにぷんぷんと雲を飛ばすイメージで怒っているのを頭の中に画像付きで伝えられる。なんか慣れてるなぁ。

「え、漫画とか知ってるの?眠ってたんだよね?」というか生きてる時の顔を初めて見た赤い眼に黒い長髪、髪の右側が趣味ではなさそうな可愛いフリル付きのシュシュでまとめているのは女神様の趣味だろうか、そして意志の強そうなその表情……。総じて我の強そうな子だなって感想を持った。勿論可愛い。けどそれがコミカルに雲を飛ばしているのだから。

 耽美系漫画みたいに美化されているのかもしれないけど。

「ん?あの時代から普通にあったよ?」えへへそれよりーかーわーいーいー?もっと言ってー♪とか言いながらくるくる回ってるのが分かる。見た目と全然合わないな…、あんまり頭の中で暴れられると、頭痛がしてきそうだ…。

「漫画の歴史ってすごいなぁ……そういうことも書いておいてよ……」

 神代の時代って千年以上は昔じゃなかったっけ。

「まぁ考えとくよ。んー千年かー、そんなに寝てたか」

 実際に千年寝てたらしいし感慨も深そうだ。千年竜とかいる!?とか聞いてくる。知らないよ……。

 ぱらぱらと一度読んだ彼女を読み返す。

「この本についてのことが一切書いてないけど、何て呼べばいいの?」

 タイトルもない魔導書をぽんぽんと叩く。

「私は永遠魔導書――エターナルって呼んでるけど」

「ふぅん……、絶対種…エターナルと同じ呼び方なんだ」

 すぐに質問が来る「絶対種って?」

「ん?昔からいる絶対に死なない生き物のこと……神代の時代から生きてるらしいけど知らないの?」

「知らないわ、そんなの。死なない生き物なんていなかったし。女神様だって死ぬのに……」

 神妙そうだ、何かを考えているらしい。

「ていうか私はユキの考えてることわかんないのに不平等じゃない?」

「私はリェラの妄想上の存在だし、分かろうとすれば分かるんじゃない?」っていうかリェラ?リィラ?と聞いてくる。

「どっちでもないからどっちでもいいよ、リーラだってば、お母さんはお父さんと再婚した産みの母親じゃないから、リーラって呼んでくれないけどさ」

「国によってスペルでの発音に違いがあるんだよね、リェラって呼ぶ人もいればリィラもいる、その人たちの母国語を否定するつもりはないから別にいいんだよ」ていうか私の妄想だったのか、ユキって。

「優しいのね、うん、頑張ってリーラって呼ぼう、確かにちょっと難しい」

 リーラって呼ばれるのは本当のお母様以来で少し嬉しい…と思ってしまうのは今のお母さんに悪いだろうか。

「私のことを言わなきゃばれないし、それくらいいいんじゃない?」

 母性全開と言った声だ、わがままだった最初の印象から一転、優しい。

「ユキのこともっと悪い人だと思ってたよ、躊躇ためらいなく人に酷いことするし」

 溜まっていた息を吐きだして枕にもたれかかる。

「別に自分が良いか悪いかを判断したことなんてなかったわね、やらなきゃやられるって時代だったし」「うん…」やっぱり寝ていたなんて嘘だったんじゃないだろうか?時代が変わったのを理解できるなんて…。

「疑ってる?」その声にううんと答える。

「ほんとにあったことでも創作でもどっちでも……、私の友達だと思ってる……。こういう回答じゃ駄目かな?」

「だめねぇ、だから友達居ないのよ」ぐぅ…。


.8

「それでやっぱり意地悪されてるの?」


ユキとは長い時間話していた。今まで読んだ本だったり、教会でのことは――そんなに話すことがなかったのでやっぱり本の話題しかなかった。

 話していてわかったことはユキもとてつもない量の本を読む読書家だっていうことだ、偉そうに昔の本を語ってちょっと恥ずかしくなった。あの本にも何千冊も本を読んでるとか書いておいてほしかった。

「その本を読んでないと没入感を得にくいからね、意図的に本の話題は省いたの」

 永遠魔導書のことも書かないのは徹底し過ぎだと思うけど。

 しかし何時間も話していて分かり合えたと思っていたけれど、全然その話題に関しては分かり合えていなかった。

「なんで意地悪されてるって思うの?優しい人だってば」

「だってごはん抜きとかいうしさ――」

 ユキはかなり食い意地が張っている。自分が食べる為に材料の値段を無料にして経済を破綻させたり……それで食べてる人もいるんだからね?

「いろんな人に怒られたから止めたじゃない…」拗ねているという感情が流れ込んでくるようだ。何でもできるなぁこの子…。

 あの本屋のお爺ちゃんからもらった古めかしいアナログの壁時計は零時を回っている、そんなに信用できないけど。

「エロいことばっかりだよねユキの人生って」枕元に読み返していた永遠魔導書を置きながら呟く。

 女神様と愛し合うためのゲームだとか…、気持ちよくなるために、男にわざと襲われるとか…。

 虜囚に対する性的な拷問、愛し合う夫婦を夫の前で、妻を輪姦する見世物にしたこともあった…。

「酷いなぁ…」電気を消してベッドの中へ。

 酷いとは思いつつも性的な快楽を受けている彼女達はとても官能的に――目を瞑ると情景が思い描かれるまでにリアルだった。

「んっ…ぅ」恐る恐る秘所に触れるとやっぱり――「一人遊び、するの?」

 やっぱりばれるよね、すごく恥ずかしいんだけど。

「邪魔なら先に寝てるけど――私が、しようか……?」

 一応は遠慮がちに提案されるが彼女はそういうやつだ……エロいやつだ。

「左手…貸してくれるだけでもいいんだよ?」どう?と聞いてくる。

 そう、ユキは左利きだ、それは本を読んで明言はされていないけれど、食事の時の食器の置き方や使い方から推測できる。

「あたりぃ♪だよー」

 ピコピコッとかいう電子音も共に聞こえる、昔の流行りだろうか?「゙お?」

 私は右利きだから左腕は…、うーん意思と反して動くのは不便かもしれない。

 「片腕でも不自由ない人もいたわよ?」

 ……うん、大丈夫だろう、無くなるわけではないし。それに見られても、一人で遊んでいるようにしか見えないよね……、いや見られたら恥ずかしいけど。

 それに、彼女の性技というのだろうかそれには、かなり興味は、ある。

 左目に、左手か、次は左足かな?体の半分を乗っ取られちゃうんだろうか。

「いや、片足だけは歩きづら過ぎるよ」まぁそっか。

「満足させてあげるね…」彼女の吐息が聞こえるようでドキドキする……。

「うん、いいよ、あげる。左腕」宣言すると同時に彼女になった左腕が襲い掛かってきた。


.9

「すごい、気持ちよかった」

 呟いてまで褒めるくらいには気持ちよかった、二階の寝室からキッチンにまで降りる階段の途中で、股がこすれるだけで思い出してよろけるくらいには。

「耽美っ♪耽美っ♪」

 ユキには耽美系の小説でオナニーしてることまで知られてしまった、更には男の人がどういうので気持ちよくなるかという知識まで植え付けられた。

「気持ちよかったんび?」

 なんだか盛大に馬鹿にされている気分、面白がってるだけなのは友達としてわかってるけれど……。

「もう、あんまり笑わないでよぅ」

「えへへっごめんねー♪」

 可愛いなぁ……。顔を見た時から彼女を可愛いって思う機会が増えた。「惚れた?」

 自分の声で聞こえるからドキドキする、疑問形じゃなければ、自分でもそう思っているのかと誘導されるところだった。「参考にしとこう……」

「あ、あんまり人がいるところでは出てこないでね?変に思われちゃう」

 恥部に伸びる左手を何度か払いながら声に出さずに言った。人前でこれはかなりまずい。


.10

 うんうんと適当な答えに不安になりつつもキッチンへ、甘い香りがした。

 おなかが結構空いてる、そんなに食べるほうじゃないんだけどな。

「昨日何も食べてなかったよ?」

「そうだっけ?」「そうだよー」

 いや確かに食べた記憶が……ないな。

「やーいおばーちゃんりーらだーやーい♪」

 いつも通り高いテンションは今の自分とは真逆だ、元気ね……。

「おはようリェラ」

「おはようございます」

 若干寝ぼけているので、何も考えずに丁寧に返した。お母さんだった。

「あ、お母さん……」

「なぁに?リェラ――今クッキー焼いてるの、食べるでしょ?」

「うん……食べる」

 テーブルの上のお皿には山盛りのクッキーがあった、こんなに焼くのは珍しい。来客の予定でもあるのだろうか。こんなにいっぱいなら数枚は良いだろうと手に取る。

「今日は、誰か来るの?」

「いいえ――リェラのためよ?昨日何も食べてなかったじゃない」

「そうだったね……」

 レーズンクッキーだった、ユキも食べれるようにするにはどうしたらいいだろうと考えながらかじる。おいしい。

 ユキも「もぐもぐ……」と言いながら食べだした、イメージで良いんだ……。

「うまい!」よかったね。

 うん、お母さんが焼いたレーズンクッキーはレーズンが潰れずにしっかり焼けていてサクサクでおいしい。自分では絶対こういう風に焼けない。レーズンクッキーをうまく焼ける人は天才だと思う。

 冷蔵庫からパンに塗る用に切り分けられた、バター切れを取り出した。カロリーは昨日食べてないならちょうどいいくらいだろう。

「好きねぇ、その食べ方……おいしいの?」

 バターを細かくちぎって、クッキーに載せているとお母さんが声を掛けてくる。

「クッキーを焼くのにもバターは使っているんだから……あら、美味しいわね」

 食べてからすぐの心変わりにクスクスと笑っていた。ユキは「うま…うぐっいいい!おいちいよぅ……おいちいょぅ」と悶絶していた。

 うんすごく美味しい。

 今日は一緒にお出かけしたいな、お母さんは教会に通うのも勉強もそんなに熱心じゃないから、一日くらいは自由に歩き回っても大丈夫だろうし。

 けどしかし。この村は貧乏というほど寂れてはいないけれど、建物は一軒ごとに一軒の隙間があるほどにはまばらだし、活気はそれほどにはない。ド田舎だ。

 本を読んでよく知っている。誇れるところは都会と比べるとそんなにはない。防音の機構が無い家は虫の声ですごい煩いらしいし。

「そんなでも嫌いじゃないけどね…虫は嫌いだけど」

 いつの間にかユキはクッキーを食べ終わったのか、紅茶を飲んでいる。人の頭の中でくつろぎ過ぎじゃない?とは思ったけどいいや。ゆっくりしていってね。

 でも都会の町まで行くにはほぼ一日がかりで馬車に乗らなければならない。遠い。

「ねえ、お母さん。町まで行きたいんだけど」

 機嫌はいいかな?と伺いながら言う。

「町に?本が欲しいのかしら、明日お父さんの武器を売りに行くから、明日ならいいわよ」

「分かった!明日ね!」

 お父さんは鍛冶屋さんで、打った武器を町まで売りに行って生活費を得ているんだよ。

「なのね~」

 ユキが返してくれるおかげで、独り言、もとい一人想いも寂しくない。ユキのためなら何でもするからね。

「すごく美味しかったからお母さんに感謝したいなー」

 むぅ、それは難しい。面と向かって感謝するのは、ユキの言葉でも私が言わなきゃいけないんだし。恥ずかしい。

 でも言わないといけないのもわかる。今のうちに伝えるべきなんだろう。お母さんの子供が生まれたら私は本当の子供じゃないんだから……。

「あの……お母さん?」

「なぁにリェラ?」

 お母さんは、余ったクッキーを袋に詰めているところだった。後ろから抱きつく。

「お母さん…………いつもありがとう」

 照れくさくてそれだけしか言えなかった、お母さんが向き直って抱きしめてくる。

「リェラが大好きだからいいのよ……」

「ん……うん、大好き」

 ぎゅぅっと抱きしめると幸せになれた気がした。奇麗で可愛いお母さんはいつも私の為に……。

「あっ……んぅリェラぁ」

 お母さんがやらしく甘い息を吐いていた。

 まさかと思って左手を見ると紛れもなく胸を揉みしだいている、こいつは……。

 ちょっと距離を置いていた自覚はある。お母さんはやっと義理の娘が心を開いてくれたと思った矢先にこれは突き放すに突き放せない。心中察するに余りある。

「ちょっとユキ……」

 さすがに叱らないとダメかと思ったが指が離れた、お母さんの股間に手が伸びる。

 どんなに力を入れて引き戻そうとしても自分の意思では動かない。指で軽く撫でた後ぐちゅっと音をさせて、指が入り込むまで見ていた。

「あっリェラぁ…これ気持ちいいっ」

 お母さんは流されないよね……と思って顔を見るが、その蕩けきった表情は完全に流されることを決めたようだった。奇麗で可愛かったお母さんの顔が快楽で歪んでいる。

「お母さん……娘の指で気持ちよくなっちゃダメでしょ?」

 諭すように言うが喘ぎが大きくなるだけだった。「言葉責めうまいね…」そんなつもりなかった。

 お母さんの恥部からはぼたぼたと間断なく液が流れ落ちていた。指が完全に奥まで入り込む。

「いっくっ!リェラぁいくのぉっ」

 びしゃっと愛液が噴き出た、絶頂。

 余韻に震えた体で抱きしめられる、仕方ないなぁ……。

「お母さん…いっちゃったんだ……」

 しているのは自分なんだからダメとは言えない、ユキも……ちょっと常識が違うだけでこれは感謝だから、感謝するなとは言えない。とはいえこれからお母さんにもユキにもどう接したらいいのか……。




予定

路地裏へ

幼女を襲う 幼女の長い髪に顔埋めながらレイプしたいです。

町 ふたなり巨根の狐っ子親子にレイプされる。最高のエロだぜ。

帰ってきたとき 山賊に輪姦される。これぞふぁんたじーって感じだな。


Requiem後

歌姫(すぐ死ぬヤンデレ)

私は音楽が大っ嫌いだ!憎んでいる!音楽で平和になるなんて絶対に叶わない幻想を見せて人を争いに駆り立てる!お前は悪だ!これは絶対と言える!お前は死ななきゃいけないほどの大罪人だ! 

お前ほんとに主人公か?早くこのセリフ吐かせたいです。

まだレイプシーンに到達してないのでエロがない。

早く他のこまごまとしたストーリー進行を書いてくれ。エロしか書きたくねえ。

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ほんぺ1-1 @kakuriyuki

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