NemesissCodeサイドストーリー短編集

@Dr10311621

マフィアとパンケーキ

「〜♪嫌いなタレントのポスターの♪〜」

どこか懐かしく感じる歌が厨房から聞こえてくる。

それと一緒に甘いいい匂いがする。

そうカルマが3時のおやつのパンケーキを焼いている。

「〜♪小市民〜♪」

そう歌いながらパンケーキを焼いていると。

「なんだ?その歌は?」

そう背後から聞こえてきて思わず驚いた。

「うぉっ!!」

そう驚いて叫んだ拍子にパンケーキが宙に舞う。

それをすかさず声の主が皿でキャッチする。

「お見事!!って急に後ろから声かけないでくれよ。来儀君。」

そう声の主である来儀に言う。

「まったく、隙がないのか隙だらけなのか分からないな貴様は。」

少し呆れ気味に来儀は言い返した。

「まぁわざわざ閉店してる店の厨房に入ってくるって事はアレの日だからだよね。」

そう尋ねると

「その通りだ。ほら早く。」

そう催促してくる。

「まぁあんたん所のボスには世話になってるし他の極道もんとは比べ物にならないくらい良心的な値段でやってもらってるからな。」

そう言って封筒を差し出す。

差し出した封筒を受け取った来儀が早速中身を確かめる。

「よし、確かに貰ったからな。」

確認が終わったようでその封筒を懐にしまうのが見えた。

「所で来儀君、金額もだけど帳簿確認しなくていいの?ほら、俺がちょろまかしてる可能性だってあるだろ?」

そう尋ねると

「ふん、黙っていればいいのにわざわざウチのボスまで手土産持って挨拶に来て了承を得ようとする人間がそんな事する事ないと信用してるさ。」

そう来儀は言い返した。

「はは、随分と信用されてるこった。ちょうどいい来儀君も食べていきな。ウチのパンケーキだ。」

そう言って来儀の分を皿に入れて渡すと来儀は不思議そうな顔をした。

「おい、パンケーキってこうもっとフワフワしててバターとシロップかけて食べるやつじゃないのか?」

そう尋ねてきた。

「はは、確かにあれもパンケーキと言われるけどパンケーキのパンってのは食パンとかのパンから来てるのじゃなくて※生地をパン(鍋)で平たく丸く焼いたものって所から来てるらしいからな。だからこれもパンケーキって訳だ。」

そう説明すると

「ほぉ、バカっぽく思えたが結構物知りなんだな。」

と感心していた。

「お、本人前にバカとか言っちゃう?んな事言ってると枚数減らすよ。」

そう言うと

「あぁ、すまない。」

そう平謝りで返してきた。

子供達に配りそして食べ出す。

「…美味しい。」

そう来儀は言った。

「でしょ?ウチの父さんのパンケーキって美味しいんだよね。」

そう来儀に嬉しそうにアゲハが話しかける。

「よかった。よかった。来儀君いい物ばっかり食べてそうだから口に合って良かったよ。」

そう安心しながら言った。

そして子供達も食べ終わり皿洗いをしていると。

「なぁ、あのパンケーキの作り方教えて欲しいんだが。」

と来儀が言ってきた。

「あぁ、構わないぞ。ボスにも食べさせてやりたいってところだろ?」

そう言うと図星だった様で黙ってしまった。

「自分で作った出来たてを食べさせてやりたいって気持ちはわかるからな。ただ皿洗いが終わるまで待ってくれよ。」

「わかった。僕も手伝おうか?」

と尋ねてきた来儀に

「いや、まぁ客人なんだから座って待っててくれ。」

そう来儀に言って。

急いで皿洗いを終わらせた。


そして、

「まず材料からだ。小麦粉に卵に牛乳これで生地を作る。」

そう来儀に説明すると

「膨らんだりとかはしないんだな?」

そう来儀が尋ねてきたから

「膨らむ…あぁ大丈夫だベーキングパウダーを入れてないからあのパンケーキの様に膨らんだりしない。」

そう言い返した。

「それじゃまず卵を割ろうか。」

そう言って来儀に卵を渡す

「どうやって割るんだ?」

そう来儀が聞いてきた。

「え?卵割ったことないのか?」

そう驚くと

「悪いか?いつも調理は部下がしてるからな。僕がするのは毒味とボスに運ぶことだ。」

そう来儀は少し怒りながら返してきた。

「はは、やった事が無いこともあるんだな。よし、見ておけよ。」

そう言って器用に片手で卵を割って来儀に見せる。

「慣れればこうやってできるけど、初めてならこうやって割った方がいいかな。」

そう言って両手で卵を割って来儀に見せる。

「こうか?」

そう言って慣れない手つきで来儀は卵を割って容器に入れた。

「少し力を入れすぎだ。カラが入っちまってるな。」

そう言うと

「初めてなんだから仕方が無いだろ?」

そう来儀は返してきた。

「まぁこれは慣れだしな。卵ならまだあるからもう少し練習するか?」

そう来儀に言うと

「あぁ頼む。ボスに食べさせるのに完璧なものを作りたいからな。」

「その意気だ。だけど少し肩に力を入れすぎだ。リラックスしな。」

そう言って肩に力の入りすぎている来儀にリラックスするように促した。

「難しいものだな。貴様は簡単にやっているが…」

「はは、やっていけば慣れてくさ。来儀君飲み込み早いし。」

そう言いながら苦戦する来儀を見守る。

「…できた!!」

そう嬉しそうに来儀が言う。

「よし、その卵と牛乳と小麦粉を混ぜ合わせて…」

そう言うと来儀は丁寧に生地を混ぜ合わせて行く。

「あ、来儀君ちょうどいい。この板チョコわってくんない?」

そう言って来儀君に向かってクーベルチュールチョコレートを渡す。

「それなら簡単だ。」

そう言うと来儀は素手で均等にチョコレートを割った。

「なんだカット用の包丁を出そうと思ったんだが…すごいな手刀でこれだけ均等に切れるなんて。」

そう感心していると

「これくらいは普通にできるけど?」

と何事も無かったかのように言ってきた。

「よし、とりあえずこのチョコレートは湯煎してと…っておい!!湯煎ってのはチョコレートの中にお湯を入れるんじゃないぞ!!」

そうお湯をチョコレートの入った耐熱容器に入れようとする来儀に言う。

「そうなのか?湯煎って言うからお湯を直接入れるかと思ってた。」

そう返してきた。

「まぁ、初めは間違えるわな。俺も間違えかけたしな。」

そう言いながらチョコレートを湯煎してチョコソースを作っていく。

「よし、いよいよ生地を焼いていくか。」

そう言ってフライパンを取り出しコンロの上に置いた。

「焼くのは見てたがコツは?」

そう来儀が尋ねてくる

「うーん、慣れ!!」

そう来儀に言って生地を焼くように促した。

「まずはレードルに生地の元を入れてフライパンに流し込んで焼けるのを待って焼けてきたら張り付かなくなるからひっくり返して裏面を焼いて完成。」

そう慣れた手つきで作っていく。

それに習って来儀も焼こうとするが

「ええっとまずは焼く分の生地をとってってうわっ!!入れすぎた!!あれ?離れない…うわっ!!焦げた!!」

そう聞こえて来たのでフライパンを覗くと炭のようになったパンケーキが見えた。

来儀の顔を見るとかなり悔しそうな顔をしている。

「始めの量は俺が先ず入れてやるからその感覚を覚えたらいい。焼き方のコツって訳ではないけどそうだな…食べてもらいたい人が美味しく食べてくれてる顔を想像しな。そうするだけで結構変わるから。」

そう言うと

「気持ちで料理ってのは変わるものなのか?でも、ボスに喜んでもらいたいとは思うしやってみよう。」

と来儀は初めて焼いた時よりも真剣な顔で焼き始めた。

「おっ、今回は結構上手く…あ、生地が破けた!!」

そう残念そうに来儀は言った。

「惜しいな。あと少しだ。2回目でここまでできるとはかなり飲み込みがいいな。 次は生地を注ぐ所からやってみな。感覚は掴めただろ?」

そう言ってレードルを渡しまた見守る。

「よし、量はOK。焼いて…今だ!!」

そう来儀がフライパンを振り上げると生地は綺麗に空中で半回転して裏返った。

「お見事!!俺でも今のは出来ないな。流石だ。」

そう来儀を褒めると少し照れながら

「あぁ、ありがとう。」

と礼を言ってきた。

「よし、裏面も上手く焼けたしこれで生地が出来た!!」

そう嬉しそうに来儀は言った。

「さぁて次はトッピングだ。」

そう言ってカットした果物とチョコレートソースとカスタードソースとホイップクリームを出した。

「んじゃ食べて欲しい人の好みのものを入れて巻いてみな。」

そう言って来儀の前でさっき作った生地におかわりを欲しそうにしていたアゲハのためにカスタードクリームにキウイフルーツとイチゴを入れたものにチョコレートソースをかけて巻いていく。

「随分とあの娘にはあまいのだな。」

そう来儀に言われる。

「いや、一応贔屓とかはしたりはしないようにはしているぞ。ただあの子は俺の腕を見てくれたりもしてくれてるし、前の戦闘でも相当怖かったみたいだが前線での銃座の設置とかも頑張ってたしな。」

そう言いながらアゲハを呼び出す。

「何?お父さん、コンロの修理?」

そう尋ねてきたアゲハに

「ほら、さっきもう1つ欲しそうにしてただろ?他の子達に分けてるのも見てたしな。」

そう言ってアゲハにパンケーキを渡すと

「あ、ありがとう。所でそっちのやつって…えっ?来儀さんが作ったの?美味しそう食べてみたい…」

そう言ってアゲハは来儀の作ったパンケーキを美味しそうに見ている。

「おい、アゲハそんなに見てやるなよ。来儀君困ってるぞ。」

そうアゲハを叱ると

「食べてみてくれないか?」

とアゲハに向かって来儀が言った。

「えっ?いいの?ありがとう来儀さん。それじゃ私のと交換しよ。」

そう言って来儀にアゲハは自分の持っていたパンケーキを渡して来儀の作ったパンケーキを受け取った。

「うん、美味しいよ!!これなら食べてもらいたいって思う人も喜ぶと思うよ。」

そう来儀に向かって笑顔でアゲハは言った。

「そうか、ありがとう。この組み合わせも美味しいな。」

そう言ってアゲハから渡されたパンケーキを来儀が食べながら言った。

「ご馳走様!!」

そう2人が言ってお互いのトッピングの組み合わせについて話をしていた。

「よし、来儀君後はカスタードクリームとホイップクリームの作り方を教えておこう。この2つは簡単だしな。」

そう言って来儀にトッピングで使うホイップクリーム等の作り方を教えていった。


「ありがとう。カルマさん。」

そう来儀が珍しく名前を呼んで礼を言ってきた。

「おっ、めずらしいな名前を呼んでくれるなんてな。」

そう言うと

「ふん、普段なら貴様の名前など呼ばないが教えてもらったからには礼儀というもんだ。」

そう来儀は照れ臭そうに言ってきた。

「そういう所はやっぱりきっちりしてるよな来儀君は…」

そう来儀に返した。

「僕もそろそろ帰るとするよ。さすがに遅くなるとボスに怒られるからさ。」

と来儀は言って席を立った。

「あぁ、また来な。またボスが食べた時のリアクションとか教えてくれよ。」

そう来儀に言うと

「それは僕だけの秘密だ!!」

と返された。

「それは残念だがまぁいいか。来儀君の実力なら大丈夫だと思うが気をつけて帰れよ。」

そう来儀に言った。

「あぁ、ありがとう。また来させてもらう。」

そう言った瞬間そこにいたはずの来儀の姿が見えなくなった。

「ははっ、初対面の時の事を思うと随分と打ち解けられたな。」

そう笑いながら来儀がいた場所から背を向け教会へと向かった。


※には諸説あります

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