16◆宣戦布告
俺は異空間を解除すると、実世界へと帰還する。
部屋にもどると、桃色の看護着に身を包んだ木茂がいた。
異空間が発生したときの衝撃を聞きつけ、あわてて部屋を確認に入ったらしい。
「あの、いったいなにが起こったんです? 日神様は?」
「兄貴は遠くにいったよ」
散らかった部屋を見て混乱する木茂に告げる。
「木茂、おまえ、この世界を好きっていってくれたよな」
「えっ、ああ、はい」
「ありがとう。俺たち勇者が魂をかけてが守ったものを好きと言ってくれて」
俺の言葉に曖昧に頷く木茂に伝える。
「でも、ごめん。やっぱり俺はこの世界を壊すことにした」
「それってどういうことですか?」
彼女は目をぱちくりとさせている。
「この世界はやっぱりおかしなことが多い。
でもそいつを直すためには、ひとつふたつを時間をかけて直しくんじゃダメなんだ。それらを直しているうちに、新たな問題が発生していく」
故に俺は決断をする。
「世界を正しい形にしたいなら、いちどまっさらにもどさないと無理だ。
それを嫌がる奴もいるだろうけど関係ない。いまあるものを潰さなければいつまでも人は幸せを手にいれることができない。いや、それどころかどんどん悪くなる」
「えっとあの、日輪さんなにを言ってるんです?」
混乱する少女は俺に尋ねた。
「俺がさ、この世界を全部壊すってことさ」
笑顔で伝える。
少女はそれでも、わからないままだったが別に構わない。
俺だけが唯一の神として世界の絶対的な基準となりまとめればいいだけなのだから。
それだけの力を俺は持っている。
全世界の人々を敵に回そうとも勝利できる力を。
それを支えてくれる信頼できる仲間も、俺にはいるのだ。
むしろ、彼らの願った平和を作るためにも、俺は戦わねばならない。
「全ての能力をもって、俺が世界をつくり直すってことさ」
そして、手にした赤色の神威を俺は、地平の先にある国へ向かって投げつけるのだった。
〈第一部完〉
絶縁・ハレムトリガー HiroSAMA @HiroEX
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