四話 部員集め
「あの~、旅行部です! 良かったら見学しませんか?」
「旅行に興味ありますか? あぁ、虫が嫌い!? そうですか……ありがとうございます!」
「ありがとね、りんちゃん。手伝ってもらって」
「ま、友達のピンチだし。手伝うのは当たり前でしょ!」
私は今、りんちゃんと一緒に校門でチラシを配っています。
旅行部の部員を集めるために、放課後こうして配っています。
「りんちゃん……うぅ……ありがとう……」
「また泣かないで。大げさだよ、それに言ったでしょ? これは私が自分からしたいことだって」
「そ、それは……分かってるけど……」
「さ、立って! このチラシ100枚、今日中に配るんでしょ?」
「……うぅ……分かった、がんばる……」
りんちゃんは優しいのです。
「旅行部でーす。部員を募集しています!」
「桜先生が顧問の旅行部、見学しませんか~!」
誰も私たちに声を掛けてこなくなりました、どうしたらいいんだろう。
「そう言えばチラシ、校内に貼ってる?」
「う、うんっ貼ってるよ?」
りんちゃんはいつも真剣なのです。私もそれをマネ出来たら良いんですが、残念ながら私はできません。
「そう。分かった、教えてくれてありがとう」
首を縦に振ったかと思えば、りんちゃんは更に口を開きました。
「ある程度は生徒の耳や視界に入ると思う。それに、一人くらいは尋ねてくるんじゃない? でないと……ちはるの努力が報われないから」
その言葉に安心した私はそれに応えます。
「りんちゃん……ありがとね……」
「うんっ……」
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
少ししてから、私のチラシはいつの間にか数枚になっていました。
「りんちゃん、あと数枚だよ!」
「よく頑張ったね、あと少しだからがんばろ!」
私は言葉にせずに行動で示します、りんちゃんが手伝ってくれたので最後まで走り続けます。
「旅行部です、これ良かったらどうぞっ!」
「あのぅ、私ずっと見てました!!!」
「えっ、あ、はい!」
背後で声が聞こえて私は驚きのあまり肩がビクンと震え、チラシがアスファルトにひらひらと落ちる。
一体、何の用だろう……私、悪い事した? まさか、配っちゃいけない場所だったりして……ないよね?
「配っちゃいけない場所だったらすみませんっ! 殺さないでぇー!」
私はとっさに手で頭を覆って身を守ります。
「私の友達に何か用ですか? もしかして、配っちゃいけない場所でしたか?」
「ち、ちち、違いますっ!」
「ほぇ?」
「では何の用でしょうか?」
「私、配り始めた時から木の陰で見てて、わ、わた、わたしも……」
「私も?」
りんちゃんがそう女の子に問いかけるのを聞いて、私は反射的に顔を上げて女の子を見ます。
「私も、旅行部に入りたいんですっ!」
まだ見ぬ景色へ! 佐藤夜空 @michi78945
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