三話 部活結成②

「えぇぇぇ~!?」

 

 さくらお姉ちゃんは目を見開いていた、私の発言ってそんなに驚くことなのかな?


「もちろん、顧問はさくらお姉ちゃんにやってもらいますから!」


「ままままって下さいっ、旅行部の顧問ってそんな急に言われても……それに、まだ部活ができた訳でも無いのに、要するに話が進みすぎですぅ!」


 先生の言っていることは納得だった、コレはあくまでも一つの案に過ぎないのだ。


「それじゃあ、どうすれば……」


 桜先生がおもむろに懐から紙を出し私に向かって、


「部活として認められるには理事長の許可と最低でも四人の部員が在籍していないと活動は出来ません」


「この紙、借りても大丈夫ですか?」


「いいですよ、というか部活を創るために必要な紙なのであげます」


「ありがとう」

 桜先生から渡されて、やる気が出てきた私はふとこの紙に違和感を覚えた。


「先生……ちょっといいですか?」


「どうしました?」


「あの、ココの部活を創るために必要な条件に顧問の先生許可が必要だって書かれているんですけど……」

 私の課題が増えてしまった、桜先生にはアピールしたけれど強制では顧問はされたくはない、私は人に強要してまで自分のやりたいことを貫きたいわけではない。


「でも、本当は、」


「何言っているの? 顧問ならここに立っていますよ」


 眼の前に居たそこに立っていた、私が憧れた人、始まりの人。その輝かしい黒と白くて綺麗な手を伸ばして。


「せん、せい……。さくらせんせい、ブワァァァァァ!!!」

 私はこの時に泣いた、本当に青春が始まるんだって、その嬉しさが頬を伝う感覚が鮮明に、今も記憶に残っている。


「はい、今後ともよろしくお願いします」


 私はさくら先生の懐に歩み寄って抱きしめて泣いた。それを桜先生は咎めずに抱きしめ返してくれた。




    ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦



「部員の問題、どうしよ……」


 私は、顧問の先生が決まった後一番の問題である部員についてどうするか考えながら帰路についていた。


 ――悩ましいな~旅行部ってあまり見かけない部活だし勧誘するにしても四月の後半だから……どう宣伝しようかなぁ。


「考え事かなそこのお嬢ちゃん。私と帰りませぬか?」


「わっっっ、なんだ、りんちゃんか……脅かさないでよ~」


「ごめんごめん、ちはると一緒に帰りたくて少しからかった」


 両手を私の前で合わせて、舌をちょこっと出すりんちゃんの姿はまるで小悪魔みたいでとても可愛い。


「もう、そんな顔しても許してあげないんだからねぇ~?」


 私はそのまま帰路を駆けていく。春風が優しく私の肌をなでる、いつもの何気ない日常だ。


「待ってよ~、ちはるの事愛してるから~」


「どうしよっかなぁ~、まぁ、コンビニでアイス奢るなら考えてもいいけど?」


「えぇ~、どうしよっかな」


「冗談だよ」


 りんちゃんとの会話はいつも私の悩みを溶かしてくれます、アイスのように。そんなりんちゃんと部活をやれたらなら……


「ねぇ、りんちゃん……」


「ん~なに~?」


「……さ、さくら綺麗だね……」


「ホントだ、綺麗だね。写真撮ってなかったし、この際撮ろうかな?」


 ……まだまだ誘うには勇気が必要らしいです。


「何突っ立てんの、写真……一緒に撮ろ?」


「ご、ごめん」



 ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦  ♦


 

「で、私に何の用なのかな?」


 私はいま理事長室に来ています。というのも、部員創設の期間は五月の頭までと決まっており、その期間まで部員を最低人数である四人まで増やさなければならないのです。今は四月の二十日なのです。

 

 圧倒的に時間が足りなので、先生と相談した結果私が理事長に直接部活創立の期間を延長してもらおうという考えの元来ています。その際、まだ顧問ではない桜お姉ちゃんはお留守番です。


「あの……その……」

 男の人って怖い、目つきとかギラギラしててましてや相手はお偉いさんだから余計に緊張するよ~。


「この紙を持っているって事は、もしかして……部活創設期間の延長を私に要求したいのかな?」


「は、はいっ! 旅行部を創りたいと思いまして……でも、思いついたのが昨日だったので部員も集まりずらくて、その……」


「延長願いを届けたいと、そういう事で大丈夫かな?」


 す、すごい、心読まれてるって事はまさか……エスパー?


「合ってます!」


 理事長は私の発言から数分間下を向いて考えこんでまた私の瞳を見るなり、


「この学校の教訓は、生徒の考えを尊重することをモットーにしていてね……あなたの、いや暁クンの意見を聞き入れよう、期間は、五月の……そうだな十日でいいかな?」


「は、はい! これで充分です、ありがとうございます!」


「それと、この期間に生徒が来たときに部室が無ければ可哀そうだ。仮部室を西口一階校舎の教室、今は倉庫になっているが。そこを使っても構わない」


「本当に本当にありがとうございます!」

 なんて、今日は運がいいのだろうか。


「頑張りたまえ、期待している」


「はい、頑張ります」

 理事長ってこんなに優しい人だったんだ、理事長の子供に産まれたらどうなっていたんだろう私……。まぁ、今の私も充分満足しているしいいか。


「失礼しました」


「勉学にも一生懸命励むように……」


「遂に私達の夢を代わりに成し遂げてくれる子が現れたよ、今後が楽しみだ」












 





 

 




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