二話 部活結成①
チャイムが鳴った、これほどまでに待ち遠しいモノが他にあるだろうか? 私は思いつけばすぐに行動するタイプだ! とは言えないけど、今はそうだと胸を張って言えます。
今はちょうど六時間目の授業終了の時間です。先生は最近までテレビに出っぱなしだったので、皆から人気のようでサインまで求めてくる子も見える。二十人以上囲まれた状態であれば、昔の私は声を掛けることも無かった。
――でも今は違うんだ!
「先生、話があります!」
「何ですか? 暁さん」
みんなの視線が私に向いて、その圧力に私の唇は震えるが、
「この後、時間ありますか?」
「だ、大丈夫ですよ」
「すごく真剣な話をしたいので、西口校舎の一階にある使われていない教室に来てもらえますか?」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」
先生のやさしさに私は感謝の言葉を口にすると、火照った顔を隠しながらりんちゃんの元へ駆け込んだ。
「うぅ、りんちゃ~ん怖かったよ~」
「うんうん、ちはるはよくやったよ。すごいじゃん!」
「りんちゃん、ありがとう」
りんちゃんの優しい手の感覚が私の頭をそっと撫でる感覚に安心感を覚えた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「話ってなんでしょう?」
「あのーえーっと……」
大事な時に限ってなんでこんなに緊張するんだろう、一対一で話したばかりなのに……
いま私と先生が居るのはここ西口校舎一階の使われていない教室で、昔は人が多くて教室が無かったから増築してできたのが今いる場所だ。現在はそんなことは起こらずに今では倉庫として使われている場所。
「まさか……凌辱っっっ!?」
桜お姉ちゃんが自分の全身を触って私に「襲わないでアピール」をしてきました。
心の中でお姉ちゃん呼びしているのは本人には内緒です。
「ち、違いますぅ~、違いますから!」
「冗談です」
「先生……おかしいっ」
「あら、ちはるちゃんも随分おかしいですよ?」
「先生こそおかしいですよ?」
「倉庫みたいなところに呼び出すちはるちゃんこそおかしいですよっ」
「さくらお姉ちゃんこそ、私に負けてないよ~」
「緊張解けたみたいだね、いい顔になってる!」
「あ、ありがとう」
さくらお姉ちゃんはそう言って笑顔を私に魅せてくれる、安心できる。これが姉の力……!! 違う、違う、そうじゃなくて。
「ところで、さくらお姉ちゃんに相談したいのは部活の件で……」
なかなかこういうのは大人に、ましてや自分が目指すべき場所に居るその道のプロに言うのは緊張するし、気が引けてくる。
「決めたの? 教えて教えて!」
「その……」
ダメだ、これ以上言えない。
私はいつもこうだ。自分じゃ決められなくて、いつも他人の意見を推し進めては人と違う意見だからとか誰かが不快に思う意見だからっていう理由だけで私は、自分の意見を押し殺して今まで生きてきた。
だから部活も決められなくて、やりたいことも無くて……それで、やっと見つけたやりたいことも、
今回もダメなのかな……?
「あなたはどうしたいの?」
その時、手を差し伸べてくれたのは天使だった。黒のスーツに黒髪だけど、確かにそこには天使が居た、その天使は私を、何もない私に寄り添ってくれた。
「わたしは……部活、やりたい……部活……を創りたい、です……」
涙が止まらなかった、この時私は初めて自分の意見を言った。ずっと心に残っていた不安と孤独感、劣等感がスッと取り除かれた気がした。
青春の扉を開けたような気がした、青春マンガだと同性の友達だろうけど、私の青春は先生が開いてくれた。
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「で、どんな部活に入りたいの?」
私は静かにさくらお姉ちゃんに指を指した。
「わ、私……? 部活の顧問なんてやっていませんけど」
「部活を創ります、さくら先生と」
「創るって何をです?」
「もちろん、旅行部です!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます