一話 お姉ちゃん先生?
「目が覚めたみたいで良かった~」
「ここ・・・・・・は?」
眼の前にはりんちゃんの姿が映っていて、柔らかくて白いベッドに周りは白のカーテンに包まれる居心地のいい空間に、私はその匂いを嗅いでいた。
「保健室よ。全く、叫んで立ち上がったと思えば気を失って倒れちゃたし、みんな心配してたよ?」
「あははははは」
「コラッ、笑っている場合じゃないの。全く、心臓が飛び出るくらい心配したんだからね!」
「あははは~ご、ごめん」
「まぁ、いいか。それで、なんであの時大きな声を出したの? 桜先生は世界一周した事でテレビに出たり雑誌に載ったりと、有名なのは知っているけど・・・・・・」
「だって・・・・・・」
理由はこれ以上見つからなかった、多分一目惚れとだったんだ。世界一周にわたしは、
「運命を感じたから・・・・・・かな」
想像以上の恥ずかしさに、私は白い掛け布団で顔を隠す。
「運命か・・・・・・」
「この時、これだ~! って思ったんだっ」
「そうか・・・・・・」
「りんちゃんは無いの? そういう経験・・・・・・」
「私は・・・・・・」
言葉の最後を、私の納得のいく回答をりんちゃんに求めたが、ソレは出てこなかった。私は、りんちゃんの顔を見る為に布団から顔を出して言葉を選びつつ言った。
「だったら、探そうよ。一緒に、ね?」
「・・・・・・」
いつまで経っても返事が返ってこない。表情も顔が下に向いて見えなくなっていた。私は思わず疑問を投げかけた、今思えばコレがあんなことになる原因だったのだと思う。もっとりんちゃんの、親友の気持ちを理解できていれば・・・・・・
「りんちゃん?」
「ごめん、もう授業あるから行かなくっちゃ」
「う、うん。分かった」
「それともう少しで三時間目始まるけど、昼間で安静にしててって、伝言。しっかり伝えたからね、忘れるなよ~?」
「あ、ありがと」
「そんじゃ」
「う、うん」
保健室のドアがガラガラと音を立てて閉まるのが聴こえ、りんちゃんの肩甲骨まである長い黒髪が去っていくのを確認した後で、本来は言いたかった言葉を続けた。
「りんちゃんも世界一周しない・・・・・・ってまだ無理だよね、私何考えてんだろ」
「暁千陽さん、居ますか?」
ガラガラと扉が開くと、そこに立っていたのは、ポニーテールと黒のスーツが似合う、いかにも大人のかっこいい女性の声音が辺りに響いてとっさに、
「は~い、わ、私ですっ!」
と、緊張してその場で固まる。
「ここに居ましたか、先程は大丈夫でしたか?」
「い、いいえ、いや、いえ、お陰様で大丈夫でした!」
世界一周した憧れの桜先生と一対一で、緊張して頭が上手く働かないよぉ。それに、近くから見れば凄い美人だし、香水もザ・大人な匂いだし・・・・・・・
「あ、暁さん大丈夫ですか? リラックスですよ、リラ~ックス」
「リラ~ックス、リラ~ックス・・・・・・」
「落ち着きましたか?」
「は、はい。少しは楽になりました」
「そうですか、それは良かったです」
「さ、先程はすみませんでした。急に倒れてしまったりなんかして・・・・・・」
私は、迷惑をかけてしまったことに謝罪をする為、深々とその場で頭を下げた。
きっと怒っているだろうな。わたし、いっつも謝ってばっかりだ――
「顔を上げてください、暁さん。命に関わることにならなくて本当に良かったです」
「せんせい・・・・・・」
なんて優しんだろう、見た目もだけど精神も大人で成熟しているお姉さんって感じで・・・・・・なんていうか、女神さま~って感じがする
「何でしょうか?」
「私のお姉ちゃんになってくださ・・・・・・ち、違います。こ、これは、その・・・・・・」
な、何言ってんのわたし~! つい欲望が口にって、どうすればいいの? 迷惑だし、世界一周した私の憧れの人の目の前で、どうしよう。
「分かりました、なりましょう! 先生、いや、お姉ちゃん頑張るから!」
あれ? 案外乗り気なのかな?
「よ、よろしくお願いします。お姉ちゃん・・・・・・」
「はい、よろしくお願いします。ところで、よく暁ちゃんはテレビは見たりするの?」
「ちゃちゃちゃ、ちゃん? 先生が、私をちゃん付で呼んでくれてる~」
「だ、ダメでした?」
「いいえ、とんでもない。むしろ、ご褒美です!」
「そ、そう」
桜先生は多少引き気味でそう答えた。
「時々は観ます」
「何を観るのかな?」
「お笑いです!」
「お、お笑い・・・・・・?」
「そうです、お笑いです。私が最近ハマっているのが、コウノトリっていう漫才師なんですけどそれの何が良いのかって聞かれれば・・・・・・」
「そ、そう。今度ゆっくり聞かせてもらおうかな」
桜先生は不思議と私の話に割って入り、次の話題にシフトチェンジした。私はもっと語りたかったけどな。
「それと、私は世界地理を担当することになったから暁ちゃん、一年間よろしくお願いしますね」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
世界地理か~、世界一周したから桜先生だけが似合う科目だな。世界地理はまだ習っていないから、あまり難しい問題はテストに出さないでほしいな。
「ところで、暁ちゃんは部活に所属しているの?」
「え? あ、はい。部活はまだ決めてません・・・・・・」
「そうなんだ、でしたら私といっしょ」
「ぶ、部活だ・・・・・・部活だよ、部活!」
この時私は病人であるのと学生という身分を忘れて、震えあがった。立ち上がり、その言葉を「部活」を噛み締めた。何だろう、心臓の鼓動が大きくて呼吸しずらい、何だろうこの感じたことのない高揚感は。何だろう、この青春の扉は。
わくわくとドキドキが鳴り止まずに、私はそのまま言葉を保健室上に響かせて、
「そうだ部活を創ればいいんだ!!!!!」
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