まだ見ぬ景色へ!
佐藤夜空
プロローグ 運命は突然に・・・・・・!
「えぇ、次のニュースです。先月世界一周を成功させた白石川桜さんがここ、宮城県にゆかりがあるとして・・・・・・」
「こ、これだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
あまりの衝撃的な事実にわたし、暁千陽は右手の箸を落としてテレビをおもむろに掴んだ。
「お姉ちゃ~ん、テレビ壊れるぅ」
「どうしたの? ちはる、大声をあげて」
妹とお母さんの心配を背に私は時間も忘れてテレビの文字に、その言葉に、その人に、虜になっていた。
「お姉ちゃん、テレビ壊れるって!」
「ちはる、いい加減にしなさい。行儀が悪いですよ」
「これだ・・・・・・これだよ、これこそ私がやりたかった事なんだ・・・・・・」
それはきっと私の中にある何もない空間に取り残された自分が解放された瞬間だったと思う。
「私、世界一周したい!」
正面を見て母に自分の夢を言ったのは、これが初めての事だった。
「ちはる・・・・・・あなた」
♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦ ♦
「それ、本気なの!?」
「本気も、本気だよ! だったらこんな大事な話、りんちゃんに言えないし・・・・・・」
わたしは、りんちゃんこと出海凛ちゃんに世界一周の相談を持ち掛けていた。
りんちゃんとは小学校からの知り合いで、成績優秀、スポーツ万能の昔からの頼れる親友でもあるのだ。髪は黒髪ロングでほっそりとした体型に、制服の赤いネクタイが華やかに見える。
でも、そんなりんちゃんは何やら難しそうな顔をして言葉を口にした。
「ちはる、これは友達として言うけど、世界一周はやめたほうがいいと思う。それは、ちはるの為でもあるの」
「私は行きたいと思う」
「仮に世界一周するとして、お金は? 学校は? もし現地で命に関わることがあったら?」
さすがりんちゃん昔からの親友で頭がよくて友達想い。でもね、りんちゃん私は・・・・・・
「あの時変わるれると思ったんだ、こんな私でも世界の全てを見てみれば変われるんだって」
だからこそ、
「私は、生半可な覚悟では行かないから!」
「うん、分かった・・・・・・」
「それでね、相談なんだけど・・・・・・」
「もう席についてね~、今から出席をとりますから~」
ガラッと扉が開かれた。前から担任の先生の声が優しく聞こえて、私は言うタイミングを逃してしまう。りんちゃんは「また」という言葉を残して自分の席の戻ってしまった。
わたし、りんちゃんに言えなかったな「一緒に世界一周しようって」。
「それでは出席を取りますので、返事をしてくださいね~。暁千陽さん」
「は、はい」
・・・・・・
「出海凛さん」
「はい」
りんちゃんと私の席は前と後ろでご近所さんになっていて、りんちゃんが前から三番目でその後ろが私の席。りんちゃんの背中は美しくて猫背にならないところが凄いのです。
「私なんて、すぐ猫背になっちゃうし・・・・・・」
私は背中をさすりながらりんちゃんを見つめる。それと同時に先生の優しい声音が教室に響いた。
「全員出席が終わりましたので、次はお待ちかねの転入の先生紹介をします。先生、入ってきてください」
担任の先生の誘導に足を動かしたのは、黒髪ショートに黒のスーツ、青いボードに白いヒールを身に纏う、どこか見たことのある顔の美人なお姉さんだった。
「白石川桜と申します。世界一周から無事戻ってきたので、母校であるここ、白鳥高校に世界地理の教師として勤務することになりました。至らない点がございますが、どうかよろしくお願い致します」
「あああああぁぁぁぁ、せ、世界、一周の人だ~!!!!!」
私は叫ぶしかなかった、感動と恥ずかしさと、興味と、そのすべてが頭の中で一つに纏まって、私に一つの答えが導き出された。これは偶然なんかじゃないんだ、これは「運命」なんだと。
「ここから私の青春がはじまっ・・・・・・」
わたしはこの時視界が遠くに離れていくのが見え、その瞬間一気に身体から脱力した。
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