3.5 ミドル3:人/蛮、楽園滞在初日

■閑話休題


前回セッションから、何日か空けて。


GM : 皆さん、今日も改めてよろしくお願いします。今日から本格的なエデンです!

PL一同:よろしくお願いします!

リアトリス:「本格的なエデン」を味わう前に、既になんか、もう胸いっぱい味わった気がしてるけどなー……。

GM:ふふふふ。はい、そんなわけで前回のあらすじ~!


---

・最初に死んだ人、強制的にユーギ(デュエリスト亡霊)の相棒任命だってさ。

・レアとかいう女性と古典的な出会い方したよ。

・人族蛮族、皆トモダチだね!!

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アミ:(あらすじを見て)そういえばそんなことあったわ。デュエリスト亡霊。

ガイゼリック:前回ラスト(エデン役所)が色々衝撃的過ぎて忘れてたが、居たな。

リアトリス:死にたくねえな……冥界であいつの相棒扱いされるの、約束されたギャグ空間じゃん……


元ネタ(遊〇王)の方はまあまあシリアスだと思うのですが、

セッション内に出てきたユーギくんは完全に人の話聞かない系カード狂人だったわけで。

改めて、「死亡後というデリケートなタイミングであのテンションで絡まれるのはちょっと……」という顔をするPL陣。


GM:いやあ、ほら。現世ではちゃんとシリアスが進みますよ。ちょっと死んでる側の冥界が、"相棒"との素敵空間になるだけで。

リアトリス:嫌だが???

アミ:いやー、これで今回誰か死んだら面白いですよね。

ガイゼリック:とか言っちゃって。お前(アミ)だろー??

アミ:えっ。いやいや、そうとは限らないじゃない?

リアトリス:認めたくないかもしれないが、今のパーティで一番死に近いデータ構成してるのお前だからな。二番目は私だが。


アミ(後衛に一人突っ込んでいって飛び蹴りをする紙装甲)とリアトリス(かばう系タンク)。


ガイゼリック:最近、あんまりにもアミが紙装甲過ぎるせいか、戦闘中のリアトリスPLの語尾が「これアミ殺せるな」になってるのが怖いんだよな。

リアトリス:そ、そんなことないぞ!?

”ヘーゼル”:そんなことなくないですが?

マリーナ:御自覚はないかもしれませんが、割とそうなんですよね~。

アミ:ひぃん。

リアトリス:いや……ん……いやね。まあ正直、戦術考えてるときに「ここで守らなければアミ死ぬんだよなぁ」とふと考えることはあるよ。でも思ってるだけで言ってないっていうかぁ。

ガイゼリック:残念ながら声に出てるんだよなぁ。

リアトリス:実際にはちゃんと守ってるから許して……?


そんなこんなで前回のことを思い出しつつ、本日からは本格的なエデン内部の探索です!



■エデン1日目:行動方針決め


GM : というわけで皆さんは、1日目の夕方に役所に行きましたね。

ガイゼリック:いろんなことがあったな……(遠い目)

GM:そんなわけで、これから貴方がたは街の探索に入ります。ギズ、アミ、ヘーゼルの三人は住民証明書を手に入れたところからスタートです。逆に言えば、リアトリスとマリーナは証明書持ってない。

リアトリス:はい。

マリーナ : どこいく~? さかば~? げすいどう~?

リアトリス:まあ、我々(蛮族組)はどこ行くにも「住民票は?」ってつつかれそうだし、まずは酒場かな……

ガイゼリック:儂ら(人族組)はまあ、ティダン神殿かね。もともとベルベット探しのためにこの街に来たわけだし、状況は確認せにゃならん。


ざっくり行動方針を話し合うPCたち。

そこにひょっこり人影が。


ルイス(SGM):ほうほう。ところで俺はどっちに行けばいい?

PL一同:……。

ルイス:ちっす。

アミ:ルイスパイセン!?


リベリオンの先輩ことルイス(リカント・男性)。

ヘラからPCたちの世話役として任命されていました彼ですが……


リアトリス:……パイセン、今、いらっしゃるの?

ルイス:実はいるんだわ。前回セッション、中の人(SGM)のリアル都合で参加できなかったけど。設定的にはルイスずーーっと君たちと一緒にいたんだわ。

アミ:我々が謎のデュエリストに絡まれてるときも?

ルイス:いました。

リアトリス:エデン到着早々、我々が謎の緑髪の女性に絡まれてる時も。

ルイス:いました。こう、目立たない位置に。

ガイゼリック:役所で受付嬢からトンデモ話聞いてるときも……?

ルイス:いました。ただまあ、俺は実はもう住民証明書もってるから、申請自体はしなかったかな。

ガイゼリック:む?

ルイス:前もチラッと言ったんだけどさ。俺、もともとエデン出身なんだわ。この中での生活が嫌んなっちゃって、逃げ出して、リベリオンに亡命したわけ。

リアトリス:そうだったっけ!?


実は、そうなのです。

リヒトとルイスがPC達の世話係に任命されたのは、「昔エデンに住んでいて、いろいろ事情を知っている」ため。

PCたちのエデン潜入のサポート役を期待されてたわけですね。


アミ:だったら! 事前に! いろいろ! 教えておいてよ!!(一同笑)

リアトリス:しなくていい怖い思いをした気がする……。

ルイス:いやあ、ごめんごめん。

GM:リアル事情(残業でセッション参加できなかった)がね……


設定的にいたことにはなったとはいえ、実際問題聞ける状態になかったのは事実なのでしかたない。

なにはともあれルイスも、PCたちと一緒にエデンの探索に加わることになりました。


“ヘーゼル” : あ、ルイスさん。一応亡命者、ってことはそのままの姿ではまずいこともありますかね…?

ルイス:んー。まあ、昔の知り合いとかに下手に声かけられるのは面倒かも?

“ヘーゼル” : それでは【ディスガイズセット】で変装させましょう。ボブさんの姿に。

アミ:なんでボブ??


ボブは第1話、PCたちが魔域に落ちる前にいた「トアル街」の宿にいた店主(褐色スキンヘッドの大男)。

今では随分懐かしい顔です。


“ヘーゼル” : ディスガイズセットは「見たことのある誰か」に変装させる魔法なのですが、私はあまり男性との交友がなく……パーティメンバー以外の人族だと、ボブさんくらいしか思いつかなくて……(ころころ)はい、ルイスさんは達成値20のボブになりました。

ルイス : というわけで見た目だけボブです、よろしくおねがいします。「こんだけできてりゃ上出来だろ、さんきゅーな」

“ヘーゼル” : 「お役に立てたなら幸いです」

ガイゼリック:一応人族だし、ルイスには儂らと一緒に行動してもらうかね?

ルイス:うーっす。

リアトリス:私とマリーナだけ別行動、だな。そっちの引率頼むよ、ギズ。

ガイゼリック:お安い御用よ。



■ティダン神殿:ガイゼリック&“ヘーゼル”&アミ


そんなわけで二手に分かれたパーティ。

まずは人族組が、「ベルベットはティダン神官だった」と聞いた情報を頼りにティダン神殿へと向かいました。


---

町中央に鎮座するティダン神殿は塔の形状をしており、その外見に劣らない豪奢な内装をしていた。

殿内の神官たちの数が多く、エデン内最大規模の宗教であることが伺える。

神官たちは何やら皆忙しそうにしている様子だ。

---


アミ : 「天井、たっかいわねー……」神殿前で、めっちゃ見上げてる。

“ヘーゼル” : 「神殿というのも、あまり馴染みがございませんね……」

ガイゼリック: 「実は儂もだ。神だなんだのはここだけの話、興味が昔からなくてなぁ」

アミ : 「あたしも人並みくらい? よく分からないわよね、神様って」

GM : では、貴方がたがそんなふうに話していると、通りがかった司祭風の男が話しかけてきますね「皆さま礼拝とは、よい心がけですね」

ガイゼリック: やべっ、流石に神殿の真ん前で今の会話はまずった。

司祭風の男 : 聞こえてなかったのか、にこにこと受け流します。「このような殺伐としたご時世にこそ信仰は人々の心の支えになるもの」

“ヘーゼル” : 「あ、いえ……。申し訳御座いませんが、私には理解が及ばず……」

司祭風の男 : 「いえよいのですよ、ルーンフォークの少女。神の声聞こえずとも、神はいつだって子羊たちの声を聴いているのですから。……しかし、ルーンフォークの方が神殿に来るというのは確かに珍しいこと。もしや、何かお困りのことでも?」

ガイゼリック: 「我らは今人を探しておりまして、人の多く立ち寄るここならば手がかりはないか、と訪ねた次第です」

司祭風の男 : 「ふむ、人探しに参ったと言う訳なのですね。平常時ならばぜひとも協力したいところなのですが……。現在のティダン神殿は緊急事態により、関係者以外立ち入り禁止となっております故」

アミ:へ?

ルイス : 「緊急事態ってぇと?」


ここで司祭風の男は首をかしげる。


司祭風の男 : 「……市民の間にも噂になっていると思われるのですが」

“ヘーゼル” : 「はて?そうでしたでしょうか……?」

アミ:うう、我々、そういう「今ホットなみんなの常識」みたいなのには弱いのよ……。


おそるおそる、「緊急事態とはなんだ」と、少しでも手がかりを得られないかといろいろ尋ねてみたのですが……

話しているうちに司祭風の男が若干怪訝な顔をし始め、退散したほうがよさげな雰囲気に。


GM:すみません。ぶっちゃけると、今はフラグが足りないです。足りてれば、ここから聞き込み判定とか色々できるんですが……

“ヘーゼル” : くーん。

司祭風の男 : 「事態が収束した暁には、皆様の人探しに協力いたしましょう。それまではどうか、お待ちいただけないでしょうか?」

ルイス : 「そういうことなら、さっさとお暇した方がよさそうかね。手間かけても悪いし」

“ヘーゼル” : 「そうでございますね。お邪魔致しました」

司祭風の男 : 「神官一同で、皆様のまたのお越しをお待ちしております」

アミ:緊急事態ってなんなのかしら……。



■酒場:リアトリス&マリーナ


GM : 一方そのころ。蛮族組にカメラを映しましょう。

リアトリス・マリーナ:は~い。

GM:君たちは、レアからもらった地図を頼りに合流場所の酒場を目指す……


---

西側市街区の大通りから大きく外れた明らかに集客に優れない場所にそれはあった。

こじんまりした寂れた風の酒場の看板には、かすれた文字で"暁の冒険者亭"と書かれていた。

---


マリーナ : 「ごくり……」と言いつつ、ドアを開ける~。

ボブ? : 「へい、らっしゃい」そこには、スキンヘッドがよく似合う不愛想な褐色の大男、店主のボブ……によく似た大男がいた。

PL一同:ボブ!?


ちょうどディスガイズセットの下りで思い出したばかりの人物の顔が見えて、PL一同大ざわめき。


裏の“ヘーゼル” :しまった。ここにルイスさん(変装中)を連れてくると大変なことになります。ボブとボブがぶつかって対消滅してしまう。(一同笑)

ボブ? : 「? なんだ入店早々固まって、俺の顔になんかついてるのか?」

マリーナ : 「ボブ~?」

ボブ? : 「ボブ? ずいぶん懐かしい名を言うのだな、俺はサブだ、この寂れた店の店長をやっている」

マリーナ : 「なつかしい~?」

サブ : 「ん、ああ。忘れてくれ。ずいぶん昔の話だ」


「……これ、突っ込む?」「ボブに激似のサブはネーミングが草」など雑談でいろいろ議論が交わされましたが、

まあ、なにはともあれまずはレアに会わないと話が進まないよね。という話になり。

いったんボブを置いて、レアの話を振ることになりました。


リアトリス : 「店主殿、我々はレアという女性を探しているのだが……」

サブ : 「ああ、話は聞いてる。お前らこの街に来たばかりの訳ありなんだろう? レア様なら、二階の一番奥の客室でくつろいでるはずだ」

リアトリス :「……レア「様」?」

サブ : 「……ああ」ふいっと肩をすくめる。「このすたれた酒場ではお客様は神様だからな、基本様付けするのさ」

リアトリス : ……んなわけねえだろ、誤魔化されたな。

マリーナ:レアの方もわけありっぽい~。

リアトリス : こっちもこっちの事情に突っ込まれるとまずいから、今は下手につつけないんだよな。とりあえずお礼を言って二階に上がり……あ、ちょっと待って。一瞬戻ってくる。

マリーナ:どした~?

リアトリス:一応、レアに手土産持ってこうと思ってさ。ちょうどいいし、ここで何か貰ってこう。「サブ殿、ここ酒場なんだろう? 酒はあるよね?」

サブ : 「酒だな、10年物のいいのが倉庫に眠ってる。代金払えば瓶ごともっていっていいぞ」

リアトリス : 「じゃ、できるだけ強いのを……」

マリーナ : リアトリスをちょいちょい。「おかね、もってる~?」

リアトリス : 「……あー」ちょっと考えて、懐からなんか重そうな袋を取り出して、逆さにして、めちゃくちゃ無造作にカウンターに金を落とします。「これで買えるやつで」

サブ:ん? 何ガメル?

リアトリス:えーっと、590ガメル。今財布(※キャラクターシートの所持金襴)に入ってる全財産です。(一同笑)

裏のアミ:全財産を! 酒代に使うな!!笑

サブ : 「……いやいやいやいや、酒瓶一つでこんな大金するわけねえだろ?」ぽかーん。

リアトリス:「そういうものか?」きょとん。だって、普段子犬が全部払ってくれるから物の相場とかわかんないし……

裏の“ヘーゼル” : きゅん。

マリーナ:「あは~」


真面目な話、この世界では1Gでエール(酒)一杯買える。590Gは多すぎるんだ。

なお、この後サブの提案で「この590Gに今後の宿代も含めるってのはどうだ」ということで、なし崩し的にパーティのエデン滞在中の宿の確保もできました。

(リアトリス「人を養う趣味はないんだが、まあいっか。ただ、アミって名前の奴だけは別料金で」アミ 「えっ?」)


サブ : 話を終えた後も、店主のサブは几帳面にも仏頂面で黙々と皿を洗っている。客足もほとんどないのに、ご苦労な事だ。

リアトリス: では改めて、強めのブランデーを片手に上に上がりましょう。

マリーナ : 一緒~。



■レアとの邂逅


---

二階は客室となっているが、合計四部屋しか部屋はないようだ。

一番奥の部屋にだけ灯りがともっている。

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リアトリス : とりあえず、こんこんとノック。「”リアン”(※レア相手に名乗った偽名)だ。入るよ」

レア : 「ええ、お待ちしておりました。どうぞお入りください」

マリーナ : 「おじゃまします~」

GM : 中には、先ほど会ったレアという女性と、その脇にルンフォがいますね。ルンフォの方は従者っぽいというか、レアに付き従っている雰囲気です。


こぢんまりとはしているが綺麗に整えられた部屋の中で、レアは君たちを迎える。

レアの横に立つ白髪のルーンフォークは、片目に眼帯のように、赤い薔薇の飾りを付けていた。


裏の“ヘーゼル” : かわいい……(絞り出すような声)

薔薇飾りのルンフォ : 「……マスター、この非常事態の中で人をお拾いになられるとは……今までは多めに見ていましたが、…………彼らに対して責任を持てるのですか?」

レア : 「いや、あの違うのよアガット。ちょっっっっっと、面白そうな人たちと出くわしたなあ、と思ってつい酒場を紹介しちゃったというか」そわそわ。

薔薇飾りのルンフォ→アガット : 「……まあよいです。マスターの拾いたがりは今の始まったことではないので」

レア : 「あ、あとこの人達、ベルベットちゃんのこと知ってた。ね? 私ちゃんと職務放棄してないよ?」


あきれたようにため息をつくルーンフォーク、アガット。

彼女に対して、あたふたと言い訳をするレアの様子を見て、マリーナとリアトリスはちらっと顔を見合わせる。


マリーナ : ん~。レア、なんか……大丈夫なひとかも。ティダン信仰してるから、完全に信用はしないけど~

リアトリス : そう、だな。もともと私の種族見抜いたうえで話を合わせてきた相手だから、かなり信頼はしていたけど……なんというか……

マリーナ:雰囲気がね?

リアトリス:そう。いわゆる、人を謀るタイプに見えない……謀るには何かの間が抜けすぎている……(一同笑)


閑話休題。

しばらくぷんぷんと呆れたように主を叱っていたアガットは、途中ではっと気が付いたように二人に頭を下げた。


アガット : 「初めまして冒険者達、私はこちらにいらっしゃるレア様に仕えているルンフォ、アガットと申します。どうかお見知りおきを」

リアトリス : 「リアンだ。よろしく」

マリーナ : 「はじめまして~、マリーナはマリーナ~」

レア : ちらっ。「……リアンさんがここに来るのは予想してましたが、何故妹さんもこちらに?」マリーナを見る。

マリーナ : 「エルフだけど、ちょっとね~。あの受付はきらい~」

レア : 「ふむ、種族的な問題ではないとしたら……」何かを察した。「私はティダン神官ですが、人の信仰までとやかく言うつもりはありません。人の心は自由ですから。ご安心くださいませ」

マリーナ : 「そう、わかった~」

レア : 「ふふふ、愛らしい妹さんですね。昼間はあまりおしゃべりできなかったけど、これからよろしくねマリーナちゃん」

マリーナ : 「よろしく~」

リアトリス:……よかった。実はちょっと身構えてたんだが、信仰過激派とかではなかったか。


ちょっとほのぼのとした雰囲気が流れる。マリーナはいっぱい撫でられた。(マリーナ「ティダン嫌いだからレアには撫でられないけど~」レア「がーん」)

なにが地雷になるかわからない中、ある程度安心して話せる相手ができたことは幸いです。


リアトリス:「いろいろと言いたいことも聞きたいこともあるが、その前にまずは、礼を」

アガット:「礼、ですか?」

リアトリス:「ああ。レアにね。……エデンに侵入して初めて会った相手が君であったことに深く感謝する。エデンは相当居心地が悪そうなとこだろうと覚悟はしていたが、さすがにここまで頭がおかしい集団だとは思っていなかったから」

マリーナ : 「ね~。助かった~」

レア : 「確かに初めて会ったのが私だったことは幸運だったと思います。もし仮に私に会わずに初手で役所に出向いていたならば、間違いなくばれていたでしょうね」

裏のガイゼリック:ほんとにな。

マリーナ:ディテクトフェイスこわい~。

レア:「そして、頭がおかしい集団というのも……、私は何も言い返すことが出来ませんね......」


レアは物憂げにため息をつく。

「このエデン内では人蛮統一を目指すとのたまいながら、実質蛮族の地位を落とすことで人蛮の腕力関係を等しくしているだけです……」

「いえ平等などではないですね、完全に蛮族を隷属して成り立っております」


リアトリス : 「……。そうだな、我々から見ても、その通りだ」

レア:「…………」

リアトリス:「単刀直入に用件を言おう。出会ったときにも告げた通り、我々は人探しをしている。そのために動き回りたいのだが、貴方も知っての通り我々はあの受付を通過できない」

レア : 「でしょうね」

リアトリス : 「手助けを要請できるだろうか」直球で頼みます。

レア : 「ええもちろん。……というより実は私達もあなた方が探しているというベルベットちゃんを探しておりまして。こちらから彼女の捜索協力をお願いしようと思っていた所でした」

マリーナ:「渡りに船~?」

リアトリス : ふむ。「失礼だが、貴方は件の『ベルベットちゃん』とはどういうご関係で?」

レア : 「単に15年前からの古い友人というだけですよ。同じティダン神を信仰するものとして共に切磋琢磨してきた仲です」


と冷静そうな顔でため息をついた直後。ぐいっと身を乗り出すレア。


レア:「ねえちょっと聞いてください、……あの子ったら、かわいらしい外見してるのに、全然自分の可愛さに気づいてないのですよ、ベルベットちゃん!!!」

「一人称も"俺"とか使っちゃってさ!!」

「ちゃん付けされるたびに、ちょっと恥ずかしそうな顔しちゃって、かわいいったらありゃしないわ!」

「あの可愛いベルベットちゃんが今どうしているかって、本当に心配で心配で!!」


ここまで早口。


PL一同:(微笑ましげな苦笑)

アガット : 「マスター、脱線が過ぎるかと」たしなめ。

レア : 「ああ、こほん、失礼しました」

リアトリス : 「……ふふ」少し表情を緩ませる。「いえ、仲が良さそうで何より。それに、『ベルベットに仲のいい友人がいる』ということは、我々の友人にも良き報告となるでしょう」

マリーナ : 「よかった~」あんまり興味なさげ。「それで、ベルベットちゃんがどうしたの~?」

レア : 「……実はある捜査任務にあたっていた所、二日前から音信不通となっておりまして。私も積極的に捜索したいのですが、諸事情で自ら動く訳にもいかず、途方に暮れていた所なのです」

リアトリス : 「捜査任務」表情を変えないままオウム返しする。

レア : 「ええ、捜査任務です。……そうですね。これ以上は私からよりも、現在最前線で動いている者から直接聞いたほうがいいでしょう。何か進展があったかもしれませんし」

マリーナ : 「どこいったらいいの~?」

レア : 「テイダン神殿です」

リアトリス・マリーナ:出た~。

裏のガイゼリック:おっと。

リアトリス : 「一番行きたくないところなんだが……」

レア : 「お二人は行きにくいでしょうから、お仲間さんたちに代わりに行ってもらえばよいかと」

リアトリス : 「……入れ違いだねえ」

マリーナ : 「さっき行くって言ってたね~」


※時間軸的にはちょうどこの裏で、人族組がティダン神殿で協力を突っぱねられているタイミング。


レア : 「あら、それは残念……今の神殿は緊迫状態ですから部外者にはおそらく何も話さないでしょう。もし行くのであれば、私が紹介状を認めておきましょう」

マリーナ : 「ありがと~」

リアトリス : 「それは助かる」

裏のガイゼリック:あれかね。これがさっきGMが言っていた「フラグ」ってやつかね。

GM:はい、その通りです。この紹介状を持っていけば、先ほどの司祭風の男から追加で情報が色々もらえます。

裏のガイゼリック:明日またアタックにしに行くかね……。


残念ながら、タイミングが悪いことはよくあること。

とはいえベルベットに関しては、ひとまず取るべき道筋が見えました。


リアトリス:……ふむ。ここでちょっと、別の話題だしても良いかな?

GM:どうぞどうぞ。

リアトリス:ヘラから頼まれたのはベルベットの捜索だけど、我々、ほかにも何人か探し人がいるからな。

裏のガイゼリック:そうだなぁ……


いろんな依頼やらお願いが重なって、このパーティ、常に3人ほど探している相手がいるのです。

一人は先ほど話題に出ていた、ヘラからの接触依頼が出ている『ベルベット(ヘラの娘)』。

二人目は、もともと全員が魔域に落ちる原因になったともいえる緑髪の『レティーナ・アルトゥール』。

三人目は、アイリーン宿泊時にリベリオンのラミア・ロゼリアから捜索をお願いされた妹『ルージュ』。

そんなわけで、ベルベットの捜索に関する協力を約束した後。

リアトリスとマリーナは、『レティーナ・アルトゥール』と『ルージュ』の名前を出し、心当たりがないかを尋ねます。


……二つの名前を聞くと、レアとアガットは突然黙り込みます。

PC達としても、別に見境なく尋ねているわけではありません。

あまりにもレティーナとの共通特徴に当てはまる女性・レアと、

ルージュの目印として示された「赤い薔薇の飾り」を目立つように身に着けているアガット相手だからこその質問、なのですが。


レア : 「……」

リアトリス:帰ってくる反応が「誰それ」とかじゃなくて、明らかに「無言」なんだもんなぁ……

裏のガイゼリック:関係がありそうなのは確かなんだが、さて、認めるか否か。

リアトリス : ちらっとアガットを見る。「……後者に関しては、半分諦めている。役所でラミアがどうなったかは聞いているからね」

アガット : 「……………………………」

リアトリス : 「だが、前者は」といって、レアを真っすぐに見る。「心当たりは、本当の本当にないだろうか?」


……長い沈黙のあと、レアはそっと口にする。

「……私から言う事は一つです」

「『レティーナ・アルトゥール』という人を私は知りません。本当に本当に私は知らないのです」

「……この返答でお許しいただけないでしょうか?」


リアトリス : 「――そうか」小さく目を伏せて。「ならば、こちらから言えることはない」

レア:「……」

リアトリス:「ただ、念のため、彼女の母君が言っていたことだけを伝えさせてもらう。母君……アーシャ殿は、レティーナ嬢を心から心配していた。切羽詰まって、我々なんかに依頼を出してくるくらいにはね」

レア : 「……そうでしたか……」一瞬何か物思うような表情をしましたが、首を振ります。「いえ、レティーナの事はいいのです、どうでも」

リアトリス:どうでも、ねえ。

レア:「それよりアガット、ルージュの事、聞かれてますよ?」

裏の“ヘーゼル” : おっと。

アガット : 「………………………私から言う事は何もありません」

リアトリス : 「そうか」ちらっと薔薇の飾りを見つつ、肩を竦める。

レア : 「だそうです。申し訳ございません、私たちは探し人"二人”ともわかりませんでした」

マリーナ : 「ベルベットのこと、いっぱい知ってたからいいよ~」

リアトリス : 「ああ、十分だ。じゃ、マリーナ。そろそろいったんお暇しようか。酒盛りに付き合ってくれないか?」これ以上突っ込んでもしょうがないだろ、退散しよう。

マリーナ : 「わかった~」ばいば~い。

レア : 「また明日の朝、お願いします」


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■そしてすっかり日も暮れて


GM : さて、色々あったエデン滞在一日目も夜になりましたが……ええと、皆さん結局サブがやってる宿に泊まりに来る、ってことでいいですかね?

リアトリス:まあ、結果的に宿代払っちゃったしな。特に他に泊まる理由もなし。……でいい?

他一同:異議な~し。

GM:了解しました。では……ちょうど皆さんが宿のホールで合流したころ、ですかね。サブがやってきます。

サブ :「今日から泊まるのはお前たちだな。よろしく頼む。……ただ、いかんせんボロ宿でな、六人分部屋用意できなくて悪い」

アミ:お?

GM:具体的に言うと、4部屋あるうちの1部屋をレアとアガットが埋めているので、皆さんの部屋は三部屋しかありません。

……というわけで、皆さん、今から二人ずつで部屋分けをしてください! そして夜の間はその二人で秘密の夜会話が可能です! やったね!

PL一同:夜会話!?

GM:ここまでの旅路で、色々お互いに思うところもあるでしょー? 誰にも邪魔されないところで、なにか話し合いたいこととか出てきたんじゃないですか?

アミ:ま、まあ。そうね……そうねぇ……(ヘーゼルを見ながら)

リアトリス:ん。確かに。私今、ギズと二人で話したいことがある。……大事な話。

アミ:えっ!?

リアトリス:なに驚いてんだよ。私だって、ずっと子犬とばかりいっしょに居たがるわけでもないさ。今日は昼間はマリーナと一緒にいたわけだし。

“ヘーゼル” : …………。

ガイゼリック:……ふむ。ちょうどいい、儂も一つ語るとするかね。


というわけで、ここからは夜会話……という名の個別会話パートです。

お互いの思惑を出し合いながら、冒険者たちは部屋割りを決め始め……


GM:……。


-

--

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今冒険者たちが姦しく決め合うのは、彼ら六人三部屋のこと。


しかし、店主が述べた通り、この冒険者亭は四部屋存在する。

……冒険者たちがいざ二人きりの秘密の会話をしようとするのと同様に、当然、この四部屋目でも、ここに秘密の会話が繰り広げられていた。


アガット : 「マスター、あの者たちは信用なりません」

レア : 「あら、まだ今日会ったばかりなのにどうしてそんなこと言うのかしら?」

アガット : 「エデンは現在門を閉め切っております。我々が掴んでいない秘密のルートで潜入したとすれば、明らかに入念な準備がされています。偶然ここに迷い込んだ冒険者のはずありません。加えて彼らはベルベットの事を最初から知っておられたのでしょう?そこから察するに……」

レア : 「彼らはリベリオンからの差し金で、課せられた任務はベルベット暗殺、といった所かしら?」

アガット : 「そこまでわかっていて何故?」

レア : 「大丈夫よ、彼らの実力軽く見てみた所、確かにそこそこ強いみたいだけど。ベルベットちゃんの方が強いわ、彼女なら問題なく迎撃できるでしょう」

アガット:「そう、ですか。いえ、レア様がおっしゃるなら間違いはないのでしょうが……」

レア :「それにどうやら彼らも任務を強制されているようでね、何かしらの呪い、おそらく【クエスト】がかけられているわね。彼ら自身の意志でやってることじゃないってこと」


先ほど『彼ら』が座っていた椅子を眺めながら、レアはアガットに対して力強くうなずく。


レア : 「これは逆にチャンスなのよ、彼らをエデン陣営に巻き込むことに成功すれば、今まで知れなかったリベリオン陣営の内情を知ることが出来る」

アガット : 「あまりにもリスクが高いのでは?」

レア : 「この程度のリスク背負えないで、どうするのよ。人蛮の真なる理想国家の為に、私はやり遂げて見せるわ……」


静かな瞳で、聖印を握りしめるレア。

レア様、と声をかけるアガットを眺めて、しかし、彼女はふっと表情を崩した。


レア:「ところで、ベルベットちゃんのことだけじゃなくてね。ルージュの事はどうするの?」

アガット : 「………………」

レア : 「……大切な”友達”だったのでしょう? 彼女の名前が出たってことは、おそらく……」


アガットは赤い薔薇飾りに触れ、ぎゅ、と目を瞑る。


アガット : 「もう少しだけ……考えさせてください……」


---

--

-


横で行われている、彼女たちの会話を知ることはなく。

人蛮入り混じった面々も、それぞれの思惑を胸に、これより語り合う夜を迎えます。

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