本作では主人公と主人公の内臓が喋ります。
これだけでとてもキャッチーなファンタジー設定なのですが、物語の最後にはもう一捻りあるので最後までお楽しみを。
近い将来、ウェアラブルデバイスや、体内センサーの発達、はたまたナノマシンの一般利用などが行われるようになると、この物語のような会話劇が日常化するかもしれません。
食べすぎたら胃に怒られ、野菜が足りていないと小腸や大腸に怒られ、安いワインを呑んだら舌に怒られるのでしょうか。そういったことを考えて読んでみると、ファンタジーだけではなく、リアリティのあるSFにも見えてきますね。盛田先生らしい名作短編小説です。
自分の臓器と話せる主人公は、臓器たちの指示のもと、今日も生活する。舌が「刺身を食うな」と言ってくれたおかげで、生魚にあたらずに済んだことから、主人公は大きなプロジェクトに携わることに。主人公は来る日も来る日も仕事にいそしみ、臓器たちを労いながらプロジェクトを進めていく。
有能な舌、よく話す胃、寡黙な肝臓。臓器たちのキャラクターも豊かだ。主人公は、彼らと一致団結して、ようやくプロジェクトの企画書を作り上げる。
しかし、彼が明日の発表のために早めに眠ろうとした時、衝撃的な事実が待っていた。さらに、ある臓器のために、主人公は――。
最初は心温まる臓器とその持ち主の物語だが、ラストには恐ろしい現実が待っている。
是非、御一読下さい。